141:勃発、レイテを感動させろ合戦!
『まさかまさか……! 地獄狼を倒せし、ハンガリアの勇者たちまで駆け付けるとは……! これはヴァイス様の差し金で?』
「当たり前だ。レイテ嬢の行くビーチに異能具があるかもしれんと知れた時点で、彼らには連絡を取った。レイテ嬢を確実に護るためにな」
驚くハロルド(※クジラ)に、何食わぬ顔で言い放つヴァイスくん。
そ、そんなことしてくれてたんだ。わー。
「流石わたしの奴隷で友達なヴァイスくん! 友情ね!」
「……成人したら無理やりにでも〝わからせる〟、か……」
「えっ、なんのはなし!?」
ともかくヴァイスくん、そして変態眼鏡執事・アシュレイに幼馴染領主・ケーネリッヒ、それから天才博士のドクター・ラインハートが並び立つなか、わたしは先輩に言ってやる!
「この極悪令嬢レイテ様に挑んだこと、後悔させてあげるわぁあああ~~~!」
『フッ――面白いホエッ!!!』
……あんたの語尾のほうが面白いわよ?
◆ ◇ ◆
というわけで。ブリランテ海運国のリゾートビーチを舞台に始まった、『海賊団の宝と異能具を探そう』合戦。
クジラになった先輩はホエホエと周辺海域に探しに行ったんだけど……、
「レイテお嬢様ぁああああ! このアシュレイが美味しそうに焼きもろこしを食べる様子を見てくださいッ! じゅぼぼぼぼ」
「……あんたたちは何してるのよ?」
なーんか助っ人連中の様子がおかしい。
わたしの周りをちょろちょろしては、ドクターに何か伺いに行ったり。
「ドクターッ、いまのレイテお嬢様の反応は!? 心は動きましたか!? じゅぼぼ!?」
「だいぶ動いたネ~。『岩をめくったら虫がめっちゃいた』って感じだ」
「それマイナス方向じゃないですかぁーー!?」
特にアシュレイ(※ちなみに水着はえぐいブーメランパンツ)がうざい。
ココナッツ探しに行ったケーネ(※普通に学生水着。なおこのビーチにヤシはない)といい、なにやってんだろ。
もう直接ドクターに聞いてみよ。
「ねぇドクター、みんななにやってんのよ? 助けに来てくれたのは嬉しいけどさ」
「やぁレイテくん。実はぶっちゃけちゃうとネ、レイテくんの〝魂の才を見切る〟第二の魔眼を参考にして、『人の心の動き具合』がわかるメーターを作ったんだ!」
「なんですって?」
相変わらずの白髪ボサ髪で語るドクター(※水着もだるんだるん)。その手には、アンテナの生えた謎の機械が。
「レイテくんの第二の魔眼。アレは〝人の欠点を見切る〟第一の魔眼を極めた結果、『欠点が見切れすぎたことで、それ以外の長所が浮き彫りになった』というプロセスを得て生まれたのだと推察する。これを以前に開発した『疑似レイテくんの視界になる眼鏡』で再現できないかと思ってねぇ。そこに至るためにまず、機械限界を埋めるための補助装置として、人の発汗具合や呼吸量の変化・表情の機微から一次感情の振れ幅が分かるこの『心メーター』を開発するに至り――!」
「長い長い長い長い!」
まったくもう。このオッサンは何も変わってないんだから。好きに向かったら一直線よね。
「んで。さっそくみんな、レイテくんで試しているのだヨ。名付けて『誰が一番レイテくんの心を動かせるか』合戦だ。こっちもこっちで勝負してるんだヨー! 勝った人には協力費一封と、甘い夏の思い出が……!?」
「あっそーいうこと。だからみんな、わたしを喜ばせようとしてるのね」
びっくりした。
アシュレイは変態のモノ好きだからともかく、ほかのみんなは協力費と、甘い夏の思い出?(アイスでもくれんの?)のために頑張ってるのね。
てっきりわたしのことが大好きかと思った。
「レ、レイテ、レイテよ! ココナッツジュースを取ってきたぞ! いやぁーヤシを見つけるのに苦労したぞぉ……!」
とかなんとか話してたら、赤髪のチビ幼馴染・ケーネがジュースもって帰ってきた。
ごくろうさま。
「ありがとうケーネ。元気みたいでよかったわ」
「うっ、うむ! レイテに任されたハンガリアの領主業、しっかり努めているからな。あっ、これは俺の修行のためで、別におまえのためじゃないから勘違いするなよ!?」
あ、そうなんだ。
手紙ですごく頑張ってるアピールをしてきてたから、てっきりわたしに好意でもあんのかと少しだけ思い違いしてたわ。
わたし極悪だしね。ありえないわね。
「ジュース、いただくわ。そこの海の家で買ったものでしょうけど、ありがとー」
「ななななななっ!?」
「ケーネリッヒくゥーーーン、レイテくんのキミに対する心の動きが、『凪』になってるヨー?」
「凪ッッッ!?」
なんかオワーーーッとか叫んでるケーネが面白い。夏だからか子供は元気ね。
――『素直にならないからだヨ~!』と笑ってるドクターや、『ナマコ拾いましたよナマコ!』とほっぺに押し付けてくるアシュレイら大人組も元気だけど、それはともかく。
「そ、れ、で。海賊団の異能具探し、どーしてやらないのよ!? そもそもクジラ先輩みたいに海底を探せなきゃ、いくら助っ人が増えても無駄なんじゃないの!?」
「そうでもないヨー」
「!?」
正論を言ったつもりのわたしに、ドクターは平然と返してきた。
「まず異能具も動力は『アリスフィア放射光』。暴発が起きた場合、放射光由来の現象が起きるとすれば」
「――この私。アシュレイめの〝異能無効化能力〟で、レイテ様をお守りしましょう」
恭しく片膝をつくアシュレイ。
な、なるほど。それでまず、こいつはわたしにベッタリなわけで。
「飛来物などの二次被害については」
「――〝風圧発生能力〟を持つ俺の出番だ。レ、レイテになにかあったら、厄介なハンガリア領を任されちゃうからな!」
ケーネがそっぽを向きながら答える。
この幼馴染はそういうわけか。二人とも、まずはわたしの安全を考えてくれてたのね。
……ふーん。
「オッ、レイテくんの『心メーター』が動いたヨ!?」
「「ど、どれくらいだ!?」」
「『初めて春雨を食べた時の食感への感動』くらいだ!」
「「初めて春雨を食べた時の食感への感動!? どうなんだそれ!?」」
アホどもがまた騒がしい。
やれやれ。わたしの近くをちょろついてる理由はわかったから、騒ぐのはもういいんだけど。
「で。肝心要の異能具と宝探しは? わたし、ハロルドに負けたら宝を全額寄付されて、大聖女にされちゃうんだけど……!」
「それでいいと思ってるヨー」
ファッッッ!?
「ぶっちゃけレイテくんが無事なら、危険な異能具探索はあの万能クンに任せておけば……」
「嫌よ!? わたし、世界一の悪女になりたいのよ!?」
これ以上の聖女評価は致命的なのよぉーーーー!?
「ハッハッハ。冗談だヨ、冗談半分」
半分は本気なの!?
「例の異能具とやらだけどネ。別に海底に沈んでいるとは限らないんじゃないかい?」
「……なんですって?」
「単純な話サ。当時の資料を集めたが、まず異能海賊団『奈落鮫』は少数精鋭で、使用していた船は最小のスループ船。高速性と機敏性に優れ、どんな浅瀬でも進める喫水性能を持つことから、軍艦船団から逃げるには最適解とされた船だ。ただ小さいぶん欠点もあって、つまり」
つまり……。
「一度に詰め込める量が、少ない。例の異能具も、海底に沈むほど重いモノじゃないだろうってこと……!?」
「そう正解ッッッ!!!!!!」
ってうるっさ!?!?
「アルキメデスの原理の根幹として、小さくて軽いものは水没しづらいからネ。海底にあるよりはビーチに流れ着いて埋もれている可能性が高い。また少なくとも、使用されていたスロープ船のサイズ・28フィート(9m)以下は確定してるんだ。当時の船員だったハロルドくんが見ていないという話から、集団生活でも隠し通せる大きさ。せいぜい2メートルそこらだろう。そんなものを暗い海底で探すとなれば」
「……クジラに変身しても、至難の業……! 臨海学校の二日以内に見つけることは、難しい!」
「そゆコト。最悪は無効試合になるってことさ。だから焦る必要はないんだヨーーン」
なるほど。やっぱりすごいわねぇドクター・ラインハート……。
流石は全ての学問を進めた天才。優秀過ぎて、王国の学会から嫌われ無双した男。
なんかダンボールに詰まって落ちてたところを拾ってよかったわ。
「ありがとう、ドクター。あなたのおかげで安心したわ」
「おおっ、心メーターがだいぶ反応したネェ!? 『はじめてハンバーグを食べて肉汁が噴き出す体験を得た時の感動具合』だ! これはワタシが優勝かなぁ~~!?」
「「ぐぬぬぬぬぬぬぬ!?」」
本当にドクターにはお世話になってるわ。
ああ、お世話になってると言えば。
「わたしの学園での担任、ドクターのお父さんなのよ。ラインハート先生」
「えっ」
「先生ってば、生活能力のないあなたのことを心配してたわ」
だからね。
「『わたしがたまにお風呂入れてあげてたから大丈夫』って答えておいたわ」
「うぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!?????????????????????????????!?!!?!?」
あっ、心メーターがすごいビクンビクンしてる。
Q,見た目女児の16歳に、息子(三十路)がお世話してもらってると答えられた父親の心境と、次に会った時に息子をどうするかを答えよ。




