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◤書籍化&コミカライズ配信中!(検索!) ◢極悪令嬢の勘違い救国記 ~奴隷買ったら『氷の王子様』だった……~  作者: 馬路まんじ@サイン受付中~~~~
第四部:学園の聖女扁

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136:『兄さん』



「ハロルド先輩はもちろんだけど、ジャックくんもやっぱ悪ね。エリィ泣かせた犯人二号よ」


「うぐぎっ!? そ、それは!?」



 アホみたいに戸惑う弟子と、ぷいっとそっぽ向きながら「……泣いてないですし」と呟くメイドのエリィ。

 やれやれね。わたしの下僕たちはまだまだ未熟だから困るわ。



「このレイテ様に仕える悪の幹部なんだから、いつでもビシっとしなさいな」


「誰が悪の幹部ですかー! あ、あと、エリィさんが泣いてたのって、僕やハロルド先輩に色々言われたからじゃなく、レイテ様が……」



 あーん?



「わたしがなによ?」


「……はぁー。自覚ないならいいですよ。やっぱりレイテ様、なんだかんだで聖女ですよね」


「っていきなりなんでよ!? わたしは悪女じゃいっ!」



 と、そんな具合にいつしかふざけていた時だ。

 ハロルド先輩――『地獄狼』残党の青年が、肩をすくめながら「これは、敵いませんねぇ」と言ってきた。

 なによなによ。



「やれやれ。我らが王、ザクス・ロア総帥が負けたわけだ。なぜレイテ様が勝てたかわかります?」


「わたしのほうが極悪だから!」


「全然違います」



 ってなんじゃーい! あんたまでわたしを聖女扱いする気!?

 あとで変態アシュレイに頼んで、ツバかけてもらお。



「あなたは周囲を、心から惹き付ける力がある。そして異能(ギフト)は『心』で使うものだ。あなたの配下たちは、きっと最大の力で異能を振るえたんでしょうね」



 あーなるほどね。



「理解したわ。みんな、『極悪令嬢レイテに従わないと怒られる!』って恐怖心で、最大パワーを発揮したって話ね」


「ふふふ。ほっぺつねっていいですか?」



 ってなんでよ!



「やるかぁこの残党野郎!? 極悪令嬢パンチが、火を噴くわよ! しゅしゅしゅ」


「あはは……やめておきましょう。レイテ様に手を出すと、配下の方々が本当に怖そうですからねぇ」



 彼は「降参です」と手を上げ、ジャックくんとエリィに苦笑を向けた。

 って二人ともやる気いっぱいじゃん。そんなにわたしが怖かった?



「まぁレイテ様の珍妙ぶりは置いておいて」


「置いとくな! 誰が珍妙だ!」


「ここで争いごとは避けたいところ。学園の聖地であり、待っている方もおりますゆえ」



 聖地? 待っている人?

 って、ここは。



「……『統合生徒会』本部の、大聖堂じゃない」



 目の前に鎮座していたのは、校舎と同じくらい巨大で、校舎よりも古めかしくて立派な、『ヒュプノスの大聖堂』だった。

 太古の勇者が眠るとされる場所だ。くっちゃべりながらついてきてたら、まさかここに辿り着いてたとは。



「……そーいえば、最初にわたしをここに案内したのも、ハロルド先輩だったわね」


「ふふ、面白い偶然ですよね。そして偶然とは続くものだ」


「は? ……まさか!」



 前回、わたしは案内された先で、ある王子に出会った。

 そのときのハロルド先輩は、彼の遣いで……!



「……質問いいかしら?」


「どうぞ、レイテ様」


「今回の待ち人は、あんたが悪党だって知ってるの? 知っていて、あんたを遣いにしたの?」


「フッ――ええ。とても懐の大きな、()()()()()()()()()


「!!!」



 王族が、あの人が『地獄狼』残党と通じている!?

 だとしたら、このままじゃあの人の国の未来は――!



「では、ご案内いたしましょう」



 ハロルドは慇懃に礼を執り、執事然とした振る舞いで、こう続けた。



()()()()()()()()()()()()。ルクレール聖国が第十四王子にして、この学園の支配者――『統合生徒会長』セラフィム・フォン・ルクレール様が、お待ちです」


「っ……!」



 ――それが、この日明かされた、もう一つの真実。



「……なんていじわるなゲームなのかしら」



 わかるわけないわよ。

 学園に潜む人狼は二人いて、とっくに学び舎を支配していただなんて。



 ◆ ◇ ◆




「単刀直入に言うわ。このレイテ様に迷惑かけるまえに、自首しなさい」


「――フッ。ずいぶんなご挨拶だな、聖女殿」


「そのもったいぶった喋り方やめろ」



 大聖堂が最奥。生徒会メンバーが使う円卓会議場の玉座に、やはりそいつは座していた。



「セラフィム生徒会長。あんたも悪人だったのねぇ」



 金髪の美丈夫、セラフィム・フォン・ルクレール。

 深い紫の瞳を揺らめかせたこの男こそ、わたしたちを呼び出した張本人だった。



「まさか会長や庶務が『地獄狼』だったとは。……ブチ切れ姫男子の副会長・カザネに、腹黒ショタの広報・コルベール。あいつらや狂言殺人やらかした会計・セルケトを含めたら、『統合生徒会』は見事に真っ黒ね」


「――そなたがいるだろう、聖女レイテ殿? 会計補佐たるそなたが、唯一の光だ」


「ざけんじゃないわよ。わたしこそが一番の悪だっつの!」



 円卓の逆位置、セラフィムの真ん前にどっかり座ってやる。

 背後を固めるジャックくんとエリィ。二人とも完全に臨戦態勢だ。


 ……や、エリィのほうはなんか苦い顔してんだけど。こいつ会長を前にするとヘンよね。



「で。どういう理由でわたしを呼び出したわけ? そもそもなんで、『地獄狼』残党であることを明かしてきたのよ」



 そこがまったくわからない。

 わたしはヴァイスくんの密命で残党を探しに来た、いわばハンターだ。

 なのに、



「愚行すぎない? 邪魔なわたしを暗殺するとか、あるいは息をひそめるとか、もっと手はあったでしょうに」



 なんでわざわざ正体明かして呼びつけたのか。

 激突前にそこだけ聞いておきたいわたしに、セラフィムは――、



「――聖女殿を誘いたかったのだ。共に、『正義の裁き』をなさないか、と」



 …………は?



「はぁああああああああぁあああ~~~~!? 『地獄狼』残党と明かしておいて、正義!? 裁き!?」



 こいつ何言ってんの!?

 どこかすっとぼけた天然野郎ではあったけど、流石に天然通り越して意味不明よ!?



「ちょっとジャックくんにエリィ!? こいつおかしなこと言ってるんだけどーーー!?」



 わたしが助けを求めると、ジャックくんはやはり「あわわわわっ、僕に聞かれてもー!?」と混乱していた。

 いいわよねぇこいつ。殺人鬼の才はマックスなくせに、頭の回転とメンタルはマジで常人で。なんか落ち着く。

 で、エリィのほうもあんま頭よくないから、きっと戸惑ってるはずで――、



「……エリィ?」


「ま――まさか……! セラ、フィム……おまえ、まさか……!?」



 死体のメイドは、白い顔をさらに真っ白にして、震えていた。

 なによ、その反応。エリィ何か知ってるの? セラフィム生徒会長がなんだってのよ?



「――なぁ、レイテ殿。俺が何番目の王子か知っているか?」


「えっ? それはたしか、十四番目でしょ?」


「――ああ、そうだ。俺の父たる王は、それだけ多くの女性を侍らせていたんだよ。女神降臨の地とされる、『ルクレール聖国(・・)』の支配者の身でな」



 ルクレール、聖国。

 生徒会長の名にもある通り、彼の生まれ故郷の国だ。

 曰く、〝この世の創造神・アリスフィアが舞い降りた地〟に王都を構え、敬虔な信者たちが集う場所だと言われていて……。



「はっきり言うぞ。あの国は、(ゴミ)だ」



 ――ふざけた口調をかなぐり捨てて。

 セラフィムは、まっすぐにわたしを見つめながら断言した。



「聞いたことくらいはあるだろう。今のルクレール聖国は、腐敗の極致にある。貴族のそなたに理由がわかるか?」


「……わかるわよ。貴族より、『宗教関係者』が力を持つ地だからでしょ」


「正解だ」



 ことり、と。

 吐き捨てる生徒会長の前に、ハロルドにより紅茶が差し出された。



「レイテ様たちもいりますか?」


「まぁ、もらっておくわ」



 律儀な奴だ。全てが明かしたあとでも庶務の仕事はする気らしい。

 けど、セラフィムは紅茶を一瞥しただけで飲まず、先を続けた。

 


「……レイテ殿の言うとおりだ。聖国は、見える藍血よりも見えない信仰が試される地。貴族より、『敬虔な女神信徒』のほうが評価されるのだ。平等な場所だろう?」


「まぁ、庶民からすればね」


「そう。だからこそ――権力闘争が永遠に続くんだよ。下剋上を狙う下々と、既得権益を必死に護らんとする上層部で、暗殺合戦が起き続けているんだ。俺はもう三十六回殺されかけたよ」


「!?」



 三十六……!?

 とても王位からは遠そうな、第十四王子でも!?



「そんな国だ。父たる王は『どうせいつか殺されるならッ』と自暴自棄になり、数多の女性に手を出した」


「……んなことしたら」


「ああ、愚か極まる男だよ。結果、数多くの王子が生まれた。おかげで彼らや、彼らを推す数多の面々によって、今や権力闘争は最盛期だ……!」



 それは……壮絶極まる話ね。

 流石の極悪令嬢もドン引きよ。もう悪とかそういうレベルじゃなくて、ただただ醜いだけだもの。

 それと、



「なんとなくわかってきたわ。要はあなた、『地獄狼』の力を借りて、権力闘争する阿呆連中をぶっ殺したかったのね? 狂った祖国を正すために」


「……」



 それならば話はわかる。なるほど、意外とまっとうな理由だ。

 わたしにも迷惑はかからないし、好きにやったらいいと思う。



「国を想って、悪の力で戦う王子様か。かっこいいんじゃないの?」



 ――まぁ、傍から見たらセラフィム王子も、醜い権力闘争をやってる面々の一部になっちゃうわけだけどね。



「わたしの予想、的外れかしら?」


「……いいや。気に入らん阿呆共の皆殺し、か。そうさな……最終的な目標はそんなところだ。合っているとも」


「あっそ。なら勝手に」


「だがな」



 おもむろに立ち上がるセラフィム。

 怒気に溢れていた彼の瞳から、そこで――。



「えっ?」



 ぽつり、と。


 一粒の、涙がこぼれた。



「俺はな……国なんてどうでもいいんだよッ! ただ大切な一人のために、暴れ散らしてやりたいんだよ!」


「っ!?」



 掴みどころのなかった美貌の生徒会長。

 だけど今、彼は激情から、涙までこぼしながら吼え叫んでいた。

 男としての地金を晒していた。



「特に王族とその取り巻き共は、誰一人として許せない……! あいつらは寄ってたかってっ、あの人を……!」


「あなた……」



 ああ、その涙の色は。少し前に、どこかで見たもので…………!



「そうだ、思い出したわ……! 〝ルクレール聖国の第一王子は、ある日狂って残虐なふるまいをするようになり、罪人として処刑された〟と」



 でも。



「それが、権力闘争による濡れ衣だとしたら……!」


「そうだよ、レイテ殿。()()()()()は、バケモノ扱いされて殺されたんだ。そうして――兄さんを、本物のバケモノに変えてしまったんだ……!」



 理不尽への怒り。そして、誰かへの愛と哀。

 激しい想いを紫の瞳に込め、セラフィムは前を見つめた。


 相手は、わたしではなく――、



「前に淹れてくれた紅茶……おいしかったよ、()()()()()()


「――フィム……!」



 紫の髪をした、わたしの従者。

 動く死体(エルザフラン)へと、彼は泣きながら微笑みかけるのだった。

極悪令嬢新刊、明日発売。




電子版にはセラフィムとエリィが結婚する話

『決行ッ、「メイドと結婚なんて無理無理!(無理じゃなかった!?)」作戦!(協力者:セラフィム生徒会長パイセン!)』の特別付録つきです!


https://www.cmoa.jp/title/1101427028/vol/4/




エリィ「弟とは無理だろッッッ!!!!!!」

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― 新着の感想 ―
エリィ手懐けてるレイテ様やべぇ
え?えええええええええっ!!!?? エリィちゃんは会長のお兄様だったの!?
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