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◤書籍化&コミカライズ配信中!(検索!) ◢極悪令嬢の勘違い救国記 ~奴隷買ったら『氷の王子様』だった……~  作者: 馬路まんじ@サイン受付中~~~~
第四部:学園の聖女扁

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106/133

106:決戦後の出来事

コミックの感想、Twitterでしてくださいますと喜んで飛んでいきます!


 領主たるこのレイテ様が、学園に来た理由。



「いいじゃない、話してあげるわジャックくん」


「ど、どうも」


「それは『地獄狼』討伐より半月後のこと――。わたしは馬車にてヴァイスくんと共に、王都へと向かっていたわ」


「ふむふむ……」


「眩しい初夏の陽光がキャビンへと差し込んでくる。窓を開ければ吹き込む風は心地よく、漂ってくる故郷にはない花の香りが、王都への期待感と同時に、ほんのわずかに郷愁の想いを駆り立てるようで――」


「あ、情景描写はいらないかと……」



 極悪令嬢サービスよ! 黙って聞きなさい!




 ◆ ◇ ◆




「――レイテ嬢、見えたぞ。あれが王都だ」


「どれどれ~~!」



 ヴァイスくんの言葉に顔を出してみる。

 すると視界の先には、陽光を反射する白亜の外壁と、中心部に焼け落ちた王城を据える街の姿が。



「わぁお。流石はストレイン王国の王都。ハンガリアの街より大きいわねぇ。お城はちょっと残念なことになってるけど」


「ああ。俺の師匠であるベルグシュライン殿が、ザクスと決闘したという余波だな」


「あ、そう……」



 王子様にとってお城は生家。その時にヴァイスくんは、お師匠さんと一緒に家もなくしちゃったわけね。

 わたしならしばらくへこむかも。集めた漫画も焼けちゃったらと思うと。

 


「ヴァイスくんつらい? わたしの極悪パワーわけてあげよっか? 闇堕ちして元気になるわよ!」


「レイテ嬢にそんなパワーはないと思うが――」


「え?」


「いやなんでもない。……俺は大丈夫だ。元々弟王子(シュバール)の反乱で半壊した時点で、城にはガタがきていただろうからな。ヤツは王の威光を出すために、建築系異能(ギフト)持ちまで呼び寄せて急遽補修したそうだが」



 弟を語るヴァイスくん。彼の表情はもはや怒りよりも、呆れと哀れみが滲んでいた。



「シュバール王子かぁ。付近の街の役人さん曰く、シュバール王子、どっかに逃げちゃったんですってね」


「ああ……どうにもきな臭いことにな」



 王都に向かう道中、『地獄狼』撃滅と王子生還の報告がてら、いくつかの街に泊まっていた。

 役人さんや領主たちが大喜びで周囲地域に拡散の早馬を出してくれたため、もう王都にもヴァイスくんが生きていることは知られているらしい。


 けど王都直近の街で、わたしたちは予想外の報告を聞いた。



「ヴァイスくんが生きてると知って、王都の人たちは暴動を決意。『地獄狼』もいなくなったこともあって、シュバールを捕らえようとしたそうだけど――」


「追い込んだところで、忽然と消えたらしいな。曰く、〝まるで闇に溶けるように〟」



 闇。その単語を聞いた時には、わたしたちはウゲ~ッとした顔になった。

 ああ、間違いない。



「ザクスの手下、『虚無なるファビオライト』ってやつの仕業よねぇ……?」


「十中八九そうだろうな。決戦後、ヤツだけは姿をくらませていた」



 そう。わたしを闇に溺れさせて殺そうとした『仮面の男』だ。

 もしかしたらヴァイスくんとザクスの最後の激突に巻き込まれて――とも思ったけど、闇を自在に操れる能力者がそんなヘマはしないはず。

 あいつだけはちゃっかり生き延びて、何らかのために弟王子(シュバール)を攫ったに違いない。何に使えるかは知らないけどさ。



「気に食わない仮面男だったわねぇ。クールに見えて天然野郎で、わたしが窒息死しそうなときにのほほんとザクスとの仲良しエピソード語ったり。あんな男見たことないわ」


「む、俺もクールに見えて天然だとよく言われるが……?」


「なんで張り合うのよ」



 そういえば背格好もヴァイスくんに近かったような――なんてことを考えていた、その時。



『あぁっ、あの馬車は――!』

『間違いないッ!』

『おーーーーーーーーい!』



 わたしたちの耳に、何やら喧騒が届き始めた。



「あら、なにかしら?」



 馬車の窓から顔を出してみる。すると先ほどよりぐっと近づいた王都の壁門付近に、多くの民衆たちが集まっているのが見えた。

 どうやらわたしたちの馬車が視界に入り、反応を示しているらしい。みんな手を振ってなにか叫んでいる。



「あはは、流石は『次期国王様』の乗る馬車ねぇ~。ヴァイスくん大人気じゃない」


「光栄なことだ。だが俺よりも、レイテ嬢のほうが話題になっていると思うぞ?」


「むんっ!?」



 た――たしかにそうよねッ!

 だってわたしってば、最悪の傭兵結社『地獄狼』を打ち破った強キャラだもの!

 手下ども使って『五大狼』全滅させたり、ザクスの顔面にパンチ入れて半殺しにしてやったしぃ~!



「う~~っふっふっ。そうよねぇ、このレイテ様は極悪対決を勝ち抜いた真・極悪クイーンだものねぇ! きっと王都の連中、『どんな悪女が来るんだ!?』って戦々恐々しているはずね!」



 道中の領主や役人たちは、わたしの脅威にビビってか『ヴァイス様をお助けしていたとは、アナタこそ救国の柱!』『まさに貴族の鑑!』だとか媚びてきたけど、民衆たちはバカだもの。

 きっとわたしへの恐怖心を隠せず、近づいた瞬間に『ぎゃああああああ悪女だああああ! こわいーーー!』とか喚いて逃げ出すに違いないわぁ~! うひひひひ!



「よ~し、顔出して民衆どもをビビらせてやる。ヴァイスくん、わたしが落ちないように腰掴んでっ!」


「あ、ああ!」



 そうして民衆どもに近づいたところで、馬車から身を乗り出してみると……!



『きゃああああああ聖女様だああああ! かわいーーー!』


「ッてなんでよ!?」



 なぜか黄色い声援を送られまくりました。どうなってるの王都民!?



「聖女じゃなくて、わたしは極悪令嬢よーーー!」





レイテ「すると視界の先には、陽光を反射する白亜の外壁と――」


ジャックくん(本当に情景描写まで語り始めたよこの人……)

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一人称小説における「情景描写をどうするか」という「地の文」問題にメタフィクション的な回答を(以下聞き取り不可能な早口になって曇った眼鏡をクイクイしながら)
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