103:エピローグ
朝、自室にて。
「――うええええええええーーーーーーーーん! 目が痛いよぉおおおおお~~~~~~ッッッ!」
「レイテ嬢死ぬなっっっ!」
「死なないけど痛いよォー!」
ハンガリア領最大の大戦、『地獄狼』大襲撃を乗り越えて一日。
目が最強になったわたしは「オーーーーーーッホッホッホ入眠ッ!」と笑いながら寝たら、翌朝眼球がイタイイタイ令嬢になっていた……!
「びえええええッ! わたしの最強アイが――!」
目は、一応視える。
けどめっっっちゃくちゃ酷い眼精疲労を患ってるって感じだ。
涙がダバダバ出てくるし、三秒以上瞼を開けることができないし、何より、能力が使えない。
使おうとすると本能的に『死ンジャウヨ!』って脳みそちゃんがストップをかけるのよ! え~~~ん!
「うぅぅぅうう。何でも壊せる最強アイパワーでなんか硬い物砕いて、民衆をビビらせようと思ってたのに……それで悦に浸ろうと思ってたのに……」
「そうか。ちなみに何を砕く気だったんだ?」
「えっ……うーん、道路は砕いたらダメだから……使ってない漬物石とか?」
「レイテ嬢は可愛いな」
「可愛くないわッ! 最強よボケーッ!」
しょぼしょぼ目でヴァイスくんを叩くけど、自分の手が痛いだけでした。チクショウ。
「はぁ……まぁいいわ。しばらくはのんびりしましょう」
極悪令嬢の極悪ベッドにごろんと寝転がる。今日は極悪に二度寝しちゃいましょう。
「だって全部終わったからね。領地防衛の仕事も、『地獄狼』との対決も」
そう。今やヴァイスくんたちや弟子キッズが修行で大暴れしてるおかげか、『魔の森』はほとんど普通の森林と化していることが判明した。
定期的な狩りさえ忘れなければ、もう魔物が領地まで踏み込んでくる心配はないだろう。
そして『地獄狼』総帥ザクス・ロアも討ち取ったわけで。
これで――、
「王都に帰れるわね、ヴァイス王子?」
「……ああ」
これで、ヴァイスくんは王族に戻れるわけね。
まぁ今玉座についている第二王子を退かさないといけないわけだけど、それもなんとかなるでしょう。
兵士は最初からみんなヴァイスくんの味方で。そしてシュバールが頼った『地獄狼』も壊滅。もはやアイツに寄る辺はないわ。
「なんだかんだで再革命成しちゃったわねぇ」
「そうだな。レイテ嬢がずっと応援してくれていたからだ。領地のみんなも、最初から賛同してくれていたからな」
「ファッッッ!?」
えっ、そーーーだったの!?
再革命なんて危ない真似に、みんな賛同してたの!?
こっっわ! やっぱハンガリア領民こわっ! 修羅の一族じゃない!
「? 知ってたんじゃないのか、レイテ嬢?」
「うぇっ!? そっ、そうわよ! 全てはわたしの掌の上よ!」
「そうか、流石だな」
うぅぅぅう、全然掌の上じゃないわよぉ……!
目が進化して色々できるようになったけど、いまだに民衆の制御ができてないわよぉ……!
窓を開けば、戦勝記念とか言って『領主邸前に、千メートルレイテ様石像作るぞぉー!』とか謎の活動してるしね。
倒れてきたらわたし潰れて死ぬし、てかそんなに石材使ったら領地滅ぶわ! あいつら嫌がらせが高度すぎるでしょ!
「はぁ……まぁいいわ。それでヴァイスくん、王都に戻る日程は決めたの?」
「ああ。国民を早く安心させたいからな。できる限り早くにだ」
そうねぇ。ここから王都まで早馬で半月。『地獄狼』壊滅の情報は民衆に伝わってないでしょうし、いまだに恐怖で縛られてそうよね。
ザクス・ロアは怖い男だったから。――ま、わたしのほうが怖いんですけど!
「だからレイテ嬢」
「ん?」
なによ。
「早く元気になるといいな。そうすれば出発できるのだから」
「えっっっ!?」
ど、どゆこと!? わたしが元気になることに、何の関係が!?
「え、え、ヴァイスくん……?」
「――辺境伯、レイテ・ハンガリア」
「っ!」
硬く、威厳を含んだヴァイスくんの声に。
それに思わず背筋がピシャッとしてしまう。彼は今、王族としてわたしに呼びかけたのだ。
「はっ、はいぃ……!?」
ついつい声が裏返ってしまう。だって小心者だもん。大きく出れるのは本来、自分のとこの領民なだけな小市民的極悪令嬢なんだもん!
だから一体何を言う気かと緊張したけど――ふ、と。
王族としての顔も一瞬のこと。ヴァイスくんは柔らかく微笑んだ。
「なぁレイテ……俺が王都に戻れるのは、キミのおかげだ」
「そ、そんなこと」
最強ヴァイスくんが最強だったからだと思うけど――そう言おうとしたけど、「そんなこと、ある」と言い切られてしまった。
「三か月前、俺はキミに救われた。そしてキミに、様々な善きものを見せてもらった。俺が最後に勝てたのは、この地でキミと出会えたからだ」
――独りでは負けていただろうと、ヴァイスくんは少し俯いて呟いた。
「だから、レイテ」
そっと、わたしに手を差し伸べられる。
「キミを置いて帰るなどありえない。王都には、どうか俺と共に凱旋してほしい。これからも――俺と共にいてほしいんだ!」
「っ」
そ、それって……!
「応えてくれるなら、どうかこの手を取ってくれ」
緊張と恥じらいと勇気の混ざった表情で、ヴァイスくんはわたしを見つめてきた。
ああ……なるほどね。
「わかったわ」
「!」
わたしは、彼の手を取った。
「レイテ……俺の想いに、応えてくれるのか……!?」
「ええ」
まったく困った王子様。
アナタに『一緒に来てくれ』だなんて言われたら、答えは決まっているでしょう?
そう――、
「――ヴァイスくんが、わたしを王の補佐役に選んでくれるなんてねぇッ!」
「えっ」
「答えは当然オッケーよぉ! 田舎貴族から、王都のトップ令嬢に大出世よォオオオオオオーーーーーーーーッッッ!」
そう叫んだ瞬間、窓やドアやついでになんか床や天井に穴が開き、未亡人メイドたちが『おめでとうございますレイテ様ァーーーッ!』と顔を出してきた!
ふっふ~んっ、なんで潜んでたのか知らなすぎて怖すぎるけど、まぁ今は上機嫌だから許してあげるわーーー!
ってこら使用人たち、わたしを称えずに何ヴァイスくんに集まってんの? なに耳打ちしてんの?
「フフ、残念でしたねヴァイス様。レイテお嬢様はまだまだ私たちのモノですわ……!」
「ドンマイですよ、次期国王様。お嬢様を迎えたかったらまずは国を回復させなさい」
「治安の安定しない内は、お嬢様は渡しませんからね……!」
耳打ちするメイドたちと、「うぅぅぅぅう……」と呻って小さくなっちゃうヴァイスくん。
やれやれ。よくわからないけど――、
「ハッピーエンドって、やつなのかしらね!」
くぅ~~~~~疲れましたwwww
ご愛読ありがとうございました! これにて完結です!!!
みたいな空気出てますが、第四章「学園編」入ります。




