04. 家は生えてくる
なんか手伝うとか言ってた騎士を帰らせた。お前はやることあるだろ。
数少ない食料をすべて渡したロクにお前何しとんねんと言いそうになったが、どうも考えがあるようなのでそのままにした。
水だけは魔法のおかげで大量にある。水筒をいっぱいにしてやり素っ気なく100円を渡した。こんなに受け取れませんとか言っていたが姫様からの袋の中身を考えたらこれでも一部なので問題ない。
無理やり握らせたらたいそう感謝された。私の金ではないのでロクにでも言っとけ。
そして手を振り彼と別れた。おそらく彼とも二度と会うことはないのだろうなと少しだけ感傷に浸った。
「さよならだけが人生だ、だね」
なんだそれは。
「昔聞いた詩だよ、誰のかは知らないけど」
知らんなー。
「いいや、それよりも何からする?」
食べ物にきまってんだろうが!
「あああ、ごめん。すぐ用意するから。ぼくの魔法で」
魔法で食料だ?なんかふふふとかいってめっちゃやる気だし。
「ただすぐには用意できないから夜までまってね。あと馬車借りるね」
わかった。本当に任せたからな、と念を押した。馬は騎士が連れて行ったのでいない。引く馬のいない馬車はあいつの作業場になったようだ。
奴がテントにこもったのでその間土魔法で眠る場所を造る。地面から岩が出てきて人が立てる程度の高さと奥行きは5メートルほどで奥に行くほど低くなり終わりの5メートルは地面に埋まる。
空気穴が縦と横に3つほど。下は土のままだ。
以上!前も言ったが家のような構造にするとすぐ崩れ落ちるのでこんな感じの不格好なものにしかならない。雨風防げるだけましだろ?
下にひくものくらいは欲しいがとりあえず葉っぱでも集めるか。どれくらい集めればいいのだ。春になったが夜はまだ寒いのだろうな。
夕方になった。焚火の揺らめきが心地いい。葉っぱ集めながら枝を集めていたのだ。ついでに何本か木をささっと倒したので明日以降加工しよう。
「うわ、なにこれ。これがおうち?」
そうだ、好きな場所を言え。そこに同じものを立ててやる。葉っぱはそこにあるから自分で運べ。
「もっと文化的なのがいいんだけど」
崩れて潰れるだけだな。
「わかったよ、あそこかな」
家(自虐)を建てたら次は食事の準備だ。まかせた。
「任してよ、ばっちり用意したよ。鍋を焚火の上におくね」
そういって焚火の上に鍋置きをセットし小屋からいろいろな食材を運び出してきた。
鳥肉、人参、ブロッコリー、ジャガイモ、玉ねぎ、しめじ、白菜である。
「まて、これが魔法の成果か!?」
「そうだよ、先に根菜とか玉ねぎ焼いて、水入れてルー入れて煮込めばシチューの完成」
白いブロック状のものを見せてくる。
それはいいんだが、この魔法は正直想定外だった。
無限に食品を出せるということか?なんだその魔法、聞いたことがないぞ。
「うん、あんまり口外してはいけないってずっと言われてきたから」
「食料を呼び出す力か?」
「違うよ、説明できないんだけど引き寄せるって感じかな。あと食べ物だけじゃないし、色々制限とかあるから」
なんともすさまじい能力だな。火水風地の4大属性のほかマイナーな属性は数あるが、こいつのは何か根本的に違う気がする。
「さ、作っちゃうからまってて。あ、水だけは水差しにいれてて」
とりあえずその場でざぶっと水を入れておいた。