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03. ゆきて物語

ぱかぱかごとごとと旅路を行く。


都近くはまだ舗装されているから歩きやすくていいな、道脇のちらちら残る雑草も風にゆらゆら揺れている。


先頭を騎士、次に私、ロク、それと門の外に準備されていた馬車と御者が昼下がりの道を旅していた。

馬車の中には斧だの鋸だのが入っているが、そんなものあっても小屋など立てられんぞ。積んであるテントでいいんじゃない?

もしくは小山に横穴でも掘った方がましな住居になると思う。

なにせ私は水と地の魔法を使えるからな、こういう時魔法が使えることを喜ばしく思う。

そして一時間歩いてすでにロクが疲れ始めている、これだから学者は。

今日は15km程行きたいのだ。まだ5kmもたっていないぞ。


「ロク、疲れたか?」


「いえ、まだいけます」


ぜえぜえなっとるやんけ、だめだな。


さっさと彼を馬車に積んだ。正直想定内だが彼は悔しそうだった。体力ならその内つくさ、あと二月くらい歩くのだからな。

ちなみに騎士も御者も何も言わない。なぜなら私の方が大分偉いことを知っているからだ。ただの騎士や兵士と王直属の騎士では身分が違うのだ、ふふっ。

ちなみに私が一番後ろにまわっている。何のためかって?罪人の逃亡防止だ。


「ごめんね」


後ろが開いている馬車からロクが謝ってきた。


「何がだ、さっきも言ったがお前が歩き続けられるなんて思っていなかったぞ」


「それもだけど、門のところでの」


「それか、別に構わん。どうせもう会うこともない」


さすがの私も女の子には優しくしたいのだ、どこで話がおかしくなるかわからないからな。普通なら将来のお嫁さんに悪評が届くような真似はしないがしばらくは出会うこともないしな。


「そっか、強いね」


どうもこいつは悪い奴でないのだが、とことん主張しないというか、流されやすいのだと思う。

顔が言い分女に捕まって色々流されてきたのだろうな。しかしその結果姫様まで届くのであればなんという幸運の持ち主。

いや流罪だし不運か?しかし姫様に御言葉をいただけるならやっぱり幸運なのか?

じろじろと奴の顔を眺めながら歩いているとばつの悪そうな顔をするのだった。




そんなことをしている間に月日は流れる。


色々なことがあった。

川で体を清めている最中に転んでちんちん丸出しのロクが流されたり、

なんかある村でロクがまた女の子をひっかけたり、

御者のラブストーリーが勝手に始まって町において来たり、

騎士の生き別れの母親が見つかったり、

ロクが女の子ひっかけたりした。

私?特になかったよ。


そして一月と二十日をもって旅の終着点。王都から約1500キロ先の目的地、通称キールの森までやってきた。

キールとは有名な冒険家であり、そんな彼もこの森を超えることができずに帰還したことからこの名前がついている。この森の向こうに何があるのか、それを知るものはいない。

てか一番近い村でも10日はかかるから本当に遠い。遠かった。天気も悪けりゃ飯もない!困った!


「ここが」


御者をしているロクが呆然と呟く。それはそうだ、目の前にはまだ日が高いにも関わらず鬱蒼とした闇深い森で、始まるのはその手前の申し分なくある草原からだ。

何もない、道すらない、いったい何ができるというのか、不安になってもしょうがないだろう。

ちなみに私としては龍はどこにいるのかの方が気になる。めっちゃ不安。森の中にいたら絶対見つからない。


「ここで私はお別れだな、ペル、ロク、任務とはいえ楽しい旅だったぞ」


「はい。タントミルさんは今からお母様のところですか」


「ああ。王都にともに帰る。孫にも合わせてやりたいからな」


「ノイマン君も元気にやっているといいですね」


「なに、あの子の尻に敷かれる限り元気だけはあるだろう」


けらけらと笑いあっている。

おや?意外と元気だな。騎士と笑って話ができているではないか。前向きじゃないか、がんばれ、私は元気なし夫だ。


それでは、と騎士が紙を取り出しロクに罰としてここに集落を造る旨の命令を王代理として読み上げた。

これでロクはこの場所の長となった。何の価値もない役職だ。何もないしな。

しかし大きな声で「はい」と答えた彼の顔には悲壮感がなかった。晴れ晴れとしていた。気力に満ちていた。彼のことを多少わかってきたと思っていたがこれは想定外だ。

ぐぬぬ、さすがに足を引っ張るのもあれだし、彼が頑張るなら私も多少は手伝ってやろうか。

面白いことになればそれでよし!こんなとこまできたのだ、一生懸命やらなければ無駄な時間をただ過ごすだけだ。


よし、と気合を入れた。どうも周囲が明るく見えた。

どうやら雲を抜けて太陽が見えてきたようだ。日の光を浴びながら受けとった命令書を見つめているロクの顔がよく見えた。

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