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酒の街

作者: 本田立直

「酒は飲んでも呑まれるな」この街を表す言葉でこんなにぴったりなのはほかに思いつかない。そう思いつつ夜のパトロールに出発する。相棒の乾を乗せて


 僕が所属する鮫島警察署が管轄しているエリアはオフィス街から一駅という立地のせいなのか飲み屋街とかしており夜になると、酔っぱらいの喧嘩、酔っていて気づいたら財布をすられたなど酒に関わるトラブルが6割を占めている。この日も酒に関するトラブルが舞い込んできた


「本部から鮫島、本部から鮫島。居酒屋からの通報酔った客が店員に対してビールジョッキを投げつけ、暴言を吐いているとの事。場所にあっては鮫島市高村町北2-3-4居酒屋エビス。以上本部」


「近いなぁ」乾がつぶやく。それに反応して僕は「行こうか」とだけ言った。


「鮫島6から本部」


「本部ですどうぞ」



「先程の居酒屋の件現場急行します」


「了解」


 

 ここから現場へは次の交差点を右に曲がって道なりに走れば着くはずだ。


「パトカー交差点内侵入します。止まってください」


「鮫島6現着です」


「了解」


 10分ほどパトカーを走らせて現場に到着した。現場には既に交番の警察官が来ていた。


 店内に入ると床に割れたビールジョッキとその破片が散らばっていた。


「お疲れ様です。状況とかは聞けてます?」先着していた警察官に聞くと警察官は「状況としては客の男性が頼んだ料理がなかなか来なくて店員に尋ねたらオーダーが通ってなくてそれにキレて投げつけたとのことらしくて」


「あー了解」


 とりあえず。ビールジョッキを投げたであろう男に話を聞くことにした。


「お父さん、ビールジャッキ割れてるけどこれお父さんがやったの?」


「そんなん知らんじゃん」


「じゃあが誰がやったとか見とらん?」


「見とらん」


「店員さんに確認してみるわ」


「勝手にせえやはよ帰らせてくれへん」


「すいません少し確認したいんですけど」そう店員に聞くと店員は「どうしました」と返す。


「ビールジョッキ割ったのは…」


「手前側の席に座ってる男性です」


「あと被害届は…」


「店の営業も妨害されてジョッキも割ったんだからもちろん出します」


「わかりました」


 店員の話を聞く限りビールジョッキを割ったのはあの男性で間違いないようだ。


「お父さん、今日は帰れんわ」


「は?どして?」


「店員さんに話を聞いたらあなたがジョッキを割ったってことだから今この時間あなたを器物損壊罪の容疑で現行犯逮捕するからね」そう言うと急に男は暴れだした。


「暴れんなって!」


「逮捕されねぇよ!」


「逮捕すんだよ!」


「応援呼んで応援」男は逮捕されるとなると急に暴れだしたのだ。


「至急至急鮫島6から本部」


「至急至急どうぞ」


「居酒屋の件、被疑者を確保しようとしたところ暴れあり。至急応援を要請する」


「本部了解」


「逮捕されるようなこと何もしてねぇよ!」


「店のジョッキ壊しただろ!」


 15分後やっと応援のパトカーが到着した。


「手錠かけて!手錠」


「21時13分器物損壊の容疑で現行犯逮捕!」


 逮捕されたあとも男は尚も抵抗を続けた。


「逮捕されてんだから大人しくしろ!」男は逮捕されたあとも抵抗し続けた。そして、ようやくパトカーに男を載せることに成功した。


「乗った?乗ったねパトカー出ていいよ」


 その後パトロールを再開し、とある場所へとパトカーを進めた。それは、駅前ロータリーだ。駅へと続く道には毎日のように酔っ払って寝てしまう輩やが大量発生しているのだ。


「あれ…今日は力尽きてる人いないっすね」駅にパトカーを向けている車内で乾がつぶやく。それを聞いた瞬間背筋が凍った


「バカなんてこと言うんだ。そんなこと言ったらもっと厄介なのが」


「まさか…ね」


 そんなことを言っている内にパトカーは駅のロータリーへと入っていく。ロータリー内は終バスも終わっているということもありタクシーが一台ポツンと止まっていた。そして、タクシーの近くに来ると1人の男性が近づいてきた。その瞬間僕はさっき言っていたまさかが起きたんだと確信した。


「すいません。そこのタクシーの運転手なんですけど」


「寝ちゃいました?」


「そうです」


「起こしてみますね」


 どうやそのまさかは的中していたようだ。タクシーの後部座席を見ると2~30代と思しき男性が顔を真っ赤にして寝ていた。


「お兄さん、起きて!お兄さん!」


「ん?はい?なんですか?」声をかけると男は目を覚ましたようだ。


「料金は?」タクシードライバーにそう聞くと「まだ支払ってもらえないです」そう帰ってきた。


「ちなみに料金はいくらですか?」


「2,100円です」


「お兄さん!お兄さん!起きて!」男性はまた夢の中へと逆戻りしたようだ。


「なんですか?」


「タクシー代払って貰っていい?運転手さんここから動けなくて困ってるし」


「いくらっすか?」


「2,100円」



「起きて!お兄さん!」男性はお金を払おうとしている最中にも夢の中へと行ってしまったのだ。


「お兄さん、結構酔っ払ってるみたいだけどどれぐらい飲んだの?」


「ビールをジャッキ3杯と焼酎の水割りを一杯あと酎ハイ2杯です」


「お兄さん、飲み過ぎ。今の状態だとタクシー代金払ったとしても帰っていいよなんて言えんわ。とりあえずタクシー代だけ払ってよ。運転手さんも迷惑してるし」


「わかりました」男性はやっとタクシー代を払うようだ。


 タクシー代を払おうとした男だが今度は別の問題が生じたようだ。


「あの…」タクシー運転手がこちらに近づいてくる。それに気づき僕は「どうしました」と聞く。なんと男はタクシー代金分のお金を持ってないとの事だ。いくら持ってるかとか言ってました?」


「ただ払えないとしか」


「わかりました」


「お兄さん、今いくら財布の中にあるか確認していい?」


「お巡りさん、お金貸してくださいよタクシー代払えないんすよ」


「それは出来ないけど今いくら持ってるかだけ確認させて貰っていい?」


「いいですよ」


「1,650円か…あと少し足りないな」


「お兄さん!起きて!起きて!」財布の中身を確認してるうちに男はまた夢の中へと行ってしまったのだ


「運転手さん財布の中身確認したんですけど今1,650円しかなくて…」


「こっちとしてはできるだけ早いうちに払ってもらえればいいんで、とりあえず今日のところはいいですよ」


「そうですか。会社の方には僕の方から電話して事情説明しておきますのでもう少しお待ちくださいあと会社の電話番号だけ教えて貰っていいですかね?」


「(自主規制)です」


「ありがとうございます」


 タクシー運転手に話を終えるとタクシー運転手から聞いた番号に電話をかける。


「はい、こちら(自主規制)交通です」


「私、鮫島警察署の乾と言いまして、そちらの運転手さんが載せたお客さんがタクシー代払えないそうなんですよ」


「でしたら1週間以内に払ってもらえれば大丈夫なので」


「そうですか…はい…はいどうも」


「お兄さん、タクシー代は1週間以内に払ってもらえればいいんだけど連絡のつく電話番号だけ教えてください」


「(自主規制)です」


「ありがとうございます」


「運転手さん、これがお客さんの電話番号です」そう言って電話番号の書いた紙を運転手に渡した。


「わかりました。これが請求書になります」そういって運転手は1枚の紙切れを渡した


「お手数かけてすいません。もう仕事に戻ってもらって結構ですので」


「あとはお願いします」


「お兄さん起きて!お兄さん!」


「んあ?はい?」


「お兄さん顔真っ赤だしすぐ寝ちゃうからこのまま家に帰っていいですよーなんて言えないから警察署で保護するけどいい?」


「俺逮捕されるようなことしました?」男性は逮捕されると勘違いしてるようだ


「違う違う、警察署で寝てもらって朝になったら帰れるから」


「そうなんですね」


「じゃあ今の時間23:15分保護ね。パトカー乗って、頭気をつけてくださいね」


 その後男性は警察署で一夜をすごした後自力で帰路に着いた。


 別の日今度は耳を疑うような無線が入ってきた。


「本部から鮫島、本部から鮫島。金村8からの応援要請。蛇行運転している車を発見したため停車させアルコール検査を実施しようとしたところ『逃走』現在パトカー3台で追跡中。車両ナンバーは(自主規制)165名古屋のな5844。白色乗用車。なお対象車両は国道24号線を『逆走』してるとのことですどうぞ」


「え?これやばくないか」別の署員がそう言うとそれに相槌を打つかのように「先輩行きましょう」と乾がかけ出す。


「鮫島6から本部、先程の逃走車両の件急行しますどうぞ」


「本部了解。受傷事故に十分配慮し一刻も早く確保せよ異状本部」


「パトカー交差点内直進します止まってください」


 先に車を追っていたパトカーから無線が流れてきたがそれは別の犯罪の疑いを感じさせるものだった。


「金村8から後援隊。運転手の男が空パけと思われるものを破棄するを現認、個数は不明だが回収してもらいたい。対象車両は北栄町入口交差点直進ですどうぞ」空パケとは覚醒剤を小分けにして入れておく袋のことである。


「覚醒剤もやってんのかよ、これは荒れるぞー」


「鮫島1から金村8、空パケえー個数としては8袋回収しましたどうぞ」


「了解」


「反対!反対!反対!」無線を受けてから二十五分。ついに車両を発見したのだ。よく見ると男の乗ってる車はどこかにぶつかった跡がありバンパーも取れかかっている。


「鮫島6から本部、対象車両発見。場所にあっては石丸交番前」


「本部了解」


「止まれー逃げきれんぞー」


「事故るぞー」


 車を追い続けて1時間がたった頃ついに状況が動いた。


「対象車両停車!繰り返す対象車両停車!なお男は徒歩にて逃走」


 男は車での逃走を諦め、徒歩での逃走に切りかえたのだ。


「鮫島6から各局、現在男は盗んだと思われる自転車に乗って逃走中場所にあっては県営団地前」徒歩の次は自転車と男は代わる代わる逃走手段を変えているがこれも最後のあがきかと思われたが「鮫島6から本部、男失尾しました」なんと男が忽然と姿を消したのだ。


「これより団地内の捜索開始します」


 僕は男が団地に逃げ込んだと思い捜索を開始する。すると階段の踊り場に男がいるのを発見した


「鮫島6から各局逃走中の男発見。場所にあっては県営団地C棟以上」


 無線を受けぞくぞくと警察官が集まってきた。


「男はどこに」


「今2階から3階の踊り場に佇んでます」


「挟み撃ちで確保しましょう」


「わかりました」


 作戦はこうだ。警察官を2階と3階に配置しその場で取り押さえると言ったものだ。


「2階班配置完了です」


「3階班OKです」


「確保開始!」その無線と共に2階と3階両フロアから警察官がなだれ込む。


「確保!確保!足にも手錠して」


「22:54道路交通法違反(当て逃げ)の容疑で逮捕じゃ」


 男は応援要請をする前に車にぶつかった上で逃走続けたためその容疑での逮捕となった。その後の調べで男の体内からはアルコールと覚醒剤の成分が検出されたためふたつの容疑で再逮捕となった。

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