記憶の断片
……昔、誰かと一緒にいた気がした。
《誰か一緒にいた》……?
そんな事はない。
僕は生まれたばかりで、誰かと話したのは、黒狐寺の和尚さまが初めてだ。
『……』
けれど、もっと前。
狐丸が……そう、生まれるもっと前、確かに僕は、誰かと一緒にいた。
その子は僕と同じ日に生まれた兄弟で、名前──
名前はなんて言っただろう?
よく、思い出せないけれど、とにかく僕とあの子は一緒に生まれた。
確か、他にも人がいた。
とても優しくて、怖い人──。
そう、あの陰陽師の澄真にとてもよく似ている。
月のように美しいあの人は、だけど僕たちとは、あまり遊んではくれなかった。
どこかの大きなお屋敷で、一緒に生まれたその子と僕。
よく、一緒に遊んだっけ。
周りにはたくさんの大人たちがいて、僕たちをいつも護っていてくれていた。
だけど──。
ある日あの人は言った。
──大切な…………を探しなさい。
《大切な……》? なんだっけ? なにを探すんだったっけ?
その日から僕たちは、お屋敷を追い出されて。
でも楽しくて。
僕は……僕は、どうしたのか覚えていない。
僕は、どうしてここにいるの?
あの子は?
あの子はどこへ行ったの?
僕と同じ────。
「──まる! ……ね丸! ねぇ!! 狐丸っ! しっかりして……っ!」
『!』
僕は目を開けた。
宗源火が薄暗く笑っている。
辺りは火の海で、その炎に囲まれながら、タマと人間の子どもが震えながら、抱き合っていた。
《え、ここ……どこ……?》
頭がクラクラする。
でも、不思議と気分はいい。
あ。そうか、僕、今宗源火と戦っていたんだった。
『……』
タマが泣きそうな顔をしている。
人間の子どもは……、ふふ、もう顔がぐちゃぐちゃだ。
分かってる。
忘れていない。ちゃんと覚えてる。
僕は《狐丸》。
目の前の宗源火を、やっつける──!
× × × つづく× × ×




