チートなマウンティニアは軽々とハットトリックを達成する
ハットトリック…その言葉を聞いて思い浮かぶのはサッカーだが、この言葉は他のスポーツにも使われる。
【登山で8000メートル以上の山に年間三つ登ること。】
…これもハットトリック。
キキーーッ!ドンッ!!
高校生のマサトの体が宙を舞う。
ドサッ……
……
「あ〜死んだな…あっけないな。死ぬって。」
フワフワした雲っぽいのに座ったまま力なく言った。
「ちょいちょい!君、まだ死んでないよ?諦めんの早くない?」
頭の上に光る輪っかを浮かべて白い服を着た白髭のオッサンに声をかけられた。
"the神様"と言った風貌だ。
「え?オッサン誰?だって俺死んだよね?」
この状況なら投げやりにもなるってもんだ。
「オッサン…て失礼な奴だな。俺は神様!まだ死んでないっての。どうする?今ならまだ戻れるけど。」
苦笑いしてオッサンは言う。
「えっ!戻れんの!?戻りたい!まだやりたい事いっぱいあんだよ!」
「そうかぁ。そうだよな〜。ただ、何もなく帰す訳にはいかないんだよな。」
「…条件があるって事?」
「そう。君、飲み込み早いね。」
オッサンが言うには、この世界に危機が迫っていて何とかしないと人類が滅亡するらしい。
俺に必要な能力を全て授けるから世界を救えという事だった。
……
運ばれた病院のベッドで目が覚める。
…何だか体が軽い。
「あれ?俺、死にかけたはずなのになんでこんなに体が軽いんだ?」
手を握って足を動かしてみてどこも痛くない事に気づく。
…というかむしろこんなに力あったっけ?と思った。
その時、最後にオッサンから言われた言葉を思い出した。
「お前が登らなければ今後訪れる危機によって、この世界は消えてしまうだろう。これは使命だ!命をかけて世界を救え!」
その神様とやらが何を言っているのか到底理解できなかったが、とりあえず無言で頷いて返事をした。
まさか、それがこれからの自分の人生を決定づける事になるとは微塵も感じていなかった。
…あの日から5年。
マサトは登山家〈マウンティニア〉となり、世界でもトップクラスに入る実力者になっていた。
「あれから山に登り続けてるけどいつになったら世界の危機とやらは来るんだ〜?」
本格的な登山を始めてすぐにマサトはハットトリックを達成し、毎年記録を更新し続けている。
ある山に登っている最中。
ドンッと下から突き上げるような地震が起きた。
「あ。来た?これなのか〜?よっしゃ!ドンとこーいっ!!…つーか、どうやって戦うんだ?神様ー!」