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童貞30歳は魔法使いではなく魔法幼女になる  作者: 風早海月
一章 幼女は何をしたいのか
5/8

5 パーティーと商会


パーティー。

狭義の場合、それは冒険者の自主的組織を指す。

規模は特に決まりはない。

冒険者ギルドに登録され、冒険者ギルドを後ろ盾とした法人化が可能なのだ。

簡単に言えば、パーティー名義でギルド口座が開設出来たり、パーティー名義で拠点として家を買ったり借りたり…様々な恩恵がある。


そして何より、パーティーのメインメンバーは深く結ばれる。

たとえ時間が経って引退をしても、メインメンバーとなった者同士は仲間として結ばれるのだ。


……と、冒険者ギルドのお兄さんに講義をしてもらった。


「メインメンバーは基本的には身内だけで作るんだ。商会風に言うなら、メインメンバーは組合員で、サブメンバーが従業員みたいなものかな。まぁ商会の組合員よりも仲間意識は強いけどね」


ちなみに組合員は商会の所有者で経営者。

従業員は言わずもがな。

つまり、組合員に相当するメインメンバーは血縁的な身内位の信用が必要ということ。


「だから二人が狭義のパーティーを作るのは難しいかな」


メインメンバーは二人以上である必要がある。


「リア…パーティーじゃなくても、一緒に旅できるよ。気にしないで」


俺が落ち込んでいると、メーナが背中をさすって慰めてくれる。


「よし、じゃあメーナ、一緒にパーティー作ろう!」

「君話聞いてたかな!?」

「でも…」

「メーナなら…なんかいいと思う」


その胸の感触にビビっときたわけじゃないぞ!

膨らみかけの蕾っていいよね…とかそんな邪な気持ちではないぞ!


邪な気持ちでは無いけど、下心はとても大きい。

精霊使いの能力値底上げは、俺が有効に使わせてもらう。


将来的に能力が伸ばせれば魔力供給も可能な精霊使いを逃すはずもない。


「リア…分かった。末永くよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしく」


仕方ないか…という顔で書類と紫色の水晶板を持ってくる冒険者ギルドのお兄さん。


「この水晶板は各パーティーに配る、約定水晶だ。そのパーティーのリーダーと副リーダー以外には使うことが出来ない。パーティーのメンバー管理やギルド口座管理などに使われる他、指名依頼もこの水晶板に送ることになる。大事なものなので、慎重に扱うこと」


紫色の水晶板を、ギルドのテーブルの上にある大きい水晶板に載せると淡く光る。


「まずはメインメンバーとなる者…二人の住人カードを約定水晶に載せて」


ギルドの大きい水晶板の上に乗る紫色の約定水晶。そこに住人カードを載せる。


「パーティーの設立に当たって、保証人はいるかい?」

「メーナはいる?私はいない」

「私もいないなぁ」

「それだと…二人の冒険者ランクからパーティーランクを算出して…保証金は三千マルだが…払えるか?」

「三千マル…私は千マルくらいなら出せるけど…」

「大丈夫。私が出すよ」


俺は大銀貨三枚を卓上に置いた。


「確かに領収したよ。パーティーリーダーはどっちだい?」

「もちろんリアだよね!」

「うーん…分かった。その代わり、将来的に信頼のおける人がいたらリーダーは譲るってことで」


正直面倒事ではあるが、致し方あるまい。

優先すべきは商売だ。


「ではこれで終了だよ。約定水晶はリーダーのリアさんに渡しておくよ」

「確かに受け取った」

「なるべく早くパーティー名を確定してね」


俺は渡された約定水晶をポシェットにしまう。


「じゃあ次は商業ギルドね」

「え?」



冒険者ギルドを後にして、俺はメーナを連れて商業ギルドへ向かう。


「私の本業は行商人だから」

「へぇ〜」


馬車や大きな背嚢なども見せたことがないし、そもそもこんな小柄な幼女が行商人だとは思うまい。


「あ、ドワーフだったっけ…?もしかして結構年上だったり?」

「一応十歳だから、私の方が年下かな」


一緒に旅をするなら確実に商会員として囲いたいところだ。

昨日の夜、宿屋でどんな仕事をしてるか聞くと、主にお金の計算や書記業務と聞いた。字の綺麗な者は重用するべきだ。ついでに帳簿もお願いしたい。


商業ギルドに到着する。

少女二人…正確には幼女一人と少女一人か?なんにせよ、視線を集める。


「あらあら、リアちゃん…だったかしら?何か御用?」


商業ギルド登録をした時に受付をしてくれた若い女性だった。


「商会立ち上げをお願いします」

「商会ね…じゃああっちの個室に行きましょうか」


商業ギルドの奥にある個室に移動する。


「この部屋には防音の魔法陣が刻まれてるから、余程大きい声を出さない限り外の心配は要らないわ」

「へぇ…」

「さて、商会立ち上げね。資本金はどれだけあるのかしら?」

「基準的にはどれくらいは必要?」

「そうね…三十万マル位かしら」

「三十万マル!?」


メーナは桁の大きさに目を白黒させている。


「そういえばこっちの子は?」

「商会立ち上げしたら、商会員になる子かな」

「まぁ。ならこれくらいの桁で驚いちゃダメよ。商人なんて、儲けてなんぼよ」


ごもっともです。


「そうなると…私のギルド口座から移動してもらっても?」

「ええ。三十万マルでいいかしら?」

「はい」


商業ギルドのお姉さんは紫色の水晶板…約定水晶を取り出した。


「約定水晶は持ってます」


ポシェットから先程、冒険者ギルドで受け取った約定水晶を見せる。


「あら、パーティーを組んだの?」

「はい」

「なら、その約定水晶に商会の方も加えましょう」


テーブルの上に置いてあった大きい水晶板の上に、約定水晶を載せて、その上に俺たちの住人カードを載せる。


「リアさんが商会長でいいかしら?」

「はい」

「えぇと…メーナさんも商業ギルド登録するわね。種別は行商でいいかしら?」

「えっと…?」

「大丈夫です」


メーナの代わりに俺が答える。


「はい、立ち上げ完了。後は商会の名前を入れておしまい。さぁ、商会の名前を教えて?」


俺はネーミングセンスが無い。

壊滅的だ。

どうする?


「メーナ、いい案ない?」

「うーん…漆黒を纏いし暁の商会…とかどう?」


メーナは展開の早さに頭が回ってないようだ。

そんなオーソドックスな厨二病の名前を名乗るわけない。

厨二病はもう卒業したし。


でも、そうだな…パーティー名は魔法使い中心のパーティーだからそっち系の名前を付けるから…


ふとメーナの横顔を見上げた。

うん、かわいい。


「チャーム商会ってどう?」

「チャーム商会…商業ギルドに登録している商会とは被ってない。問題ないわ」

「じゃあそれで」


かわいいうちの看板娘にするメーナのかわいらしさは、どちらかと言うとキュートやプリティーと言うよりチャーミング。

よってうちの商会はチャーム商会だ!


……そこ!ネーミングセンス無いとか言うな!俺が一番よくわかってる!



「あぁ、そう言えば注文していた馬車。完成したそうよ。早めに受け取りに行ってちょうだい」

「早いですね」

「貨客車って客車に手を加えるだけだもの。既製品の客車を流用してるのよ」

「なるほど」


確かに、注文時にオプションをいくつか追加したが…そういうのも車大工は慣れているのだろう。


俺たちは商業ギルドを出て、昨日の小料理屋のような酒場に向かう。


「どこ行くの?」

「昨日の酒場。商会とパーティーの立ち上げを祝して、呑みに行こう」

「でも私…お金全部出してもらっちゃってるし…」

「メーナ、これは商会の立ち上げ記念の祝賀会なんだから、商会から…ひいては私の懐から出すよ。それに、これからメーナにはどんどん働いてもらうから問題ない」

「あはは…お手柔らかに」


俺たちは酒場に入ったところで、おばさんに焼き鳥のタレ10本塩10本とロゼのマグナムボトルの物を頼んで奥の個室に入った。


「ロゼと焼き鳥はよく合う」

「へぇ…」


しばらく待って届いた料理とロゼ。

おばさんが俺とメーナのグラスに注いでくれる。


「じゃあ乾杯…と言いたいところだけど、ちょっとグラス貸して」


メーナからワインの入ったグラスを受け取り、自分のグラスと横並びに置く。

そして、俺は右手に魔力を微かに集める。


「エスト チル」


微かな魔力で使った魔法は、冷却魔法。

グラスとワインを冷やす。


「はい。今度こそ…チャーム商会の発展を祈って、乾杯!」

「乾杯!」


冷やしたロゼと、焼き鳥の組み合わせは最高だった。


連続投稿はここまで。

以降はハーメルンと同時投稿で進行します。

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