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童貞30歳は魔法使いではなく魔法幼女になる  作者: 風早海月
一章 幼女は何をしたいのか
4/8

4 パーティーメンバー

俺は衝撃の事実に、現実逃避のため無心でゴブリンを狩る。


せめてTSしたんだから、ばいんばいんの胸を触りたかった…

あれ…?もしかして、それなら女ドワーフって月のアレが来ることも無いのか?それは俺的には助かる。経験値ないし。DT三十歳だし。


「エスト ショット!」


まぁとりあえずその話は放っておこう。


さて、この世界の魔法は魔力を杖や手などに集中しながら起動語を発音することで、魔法の発動準備に入る。

起動語はほとんどの場合ラテン語で在るという意味の「エスト」が使われる。

ゲーム会社としてもユーザー側としても、魔法言語をわざわざ作ったり覚えたりというのはどちらにとっても負担。

とはいえ、日常会話と魔法の呪文が似ていると、現代のコンピュータ技術ではそれが魔法なのか会話なのか判断が難しくなる。

間をとって作られたのが、このエストという起動語だ。


基本的に、エストの後に使う魔法の名前を、魔力の指向によって方向の指示を行って魔法が成立する。

細かくは他にもいろいろあるが、基本的にはそういうものだ。


「エスト ラピッドショット!」


マルチショットやラピッドショットは無属性基礎魔法のショットのバリエーション魔法。

マルチショットが散弾のようにショットをばら撒く魔法だ。

それに対して、ラピッドショットはマシンガンのようにショットを放ち続ける魔法で、攻撃魔法としてはとても珍しく、魔力を込め続ける限り持続する持続型魔法となっている。


「弾幕は…弾数だぜ」


ヒャッハー!最高だぜ!


神精樹の杖から放たれ続けるショットでゴブリンの群れを一掃する。


「エスト ラージショット!」


ズドーン!と、背後に爆煙を上げながら歩き去る俺。

なんかアニメでありそうなシーン再現してみた。

こいつ馬鹿だと思ったやつ!男のロマンを理解してないな?



そんなこんなで、午後を街道近くの森でゴブリン狩りをした後、街に戻る。既に日が斜陽となっている。


「うーん…宿を聞くのを忘れていた…」


商業ギルドに行ってもいいが、まずは夜飯。

匂いにつられて酒場に。

お金も多少下ろしてきているので、問題ない。


「あらあら、かわいらしいお客さ…っと、ドワーフかい?女ドワーフは歳が分からないからねぇ」


恰幅の良いおばさんが俺の姿に配慮してか、奥のテーブル席に案内してくれる。


「ドワーフなら酒は必須だね。エールかい?それともワインかい?」

「ロゼはある?」

「あぁ。少し高いけどいいかい?」

「料理もお酒に合わせて頼む」

「あいよ。ちょっと待ってな」


ロゼは俺が初めて好きになった酒。この世界にもあってよかった。

赤だと渋すぎるけど、白は素直すぎる。

まぁ白も好きだけど。赤は嫌い。


というか、そもそもドワーフってやっぱり酒好きなのか。飲むことが当たり前とは…


運ばれてきた料理は…なんと焼き鳥。

しかもタレ。ここは日本か?


「でも…美味い。スッキリするタイプのロゼと、あまじょっぱい焼き鳥が絶妙だ。これはいい」


さらに追加で料理が運ばれて来る。

今度は凍み豆腐の煮物、味噌田楽、大根のたまり漬が運ばれてきた。

うん、美味いよ?美味いけど…なんでこんなファンタジー世界で和食!?


「口に合うといいんだけどね。アタシと旦那は東の島国出身でね。食材を取り寄せてはこうやって酒場を営んでるのさ」


…東の島国って日本ちゃう?

極東ってやつだよ。

まぁゲームの世界だし…なんでもありなのか?


味噌田楽の甘味噌がロゼワインとの相性がこれ程いいとは…


「おばさん、エールとおでんね」


入り口から入ってきたそんな声に、俺は顔を上げる。


「あれ?えーと、リア…だったよね?偶然ね」

「…?」

「ほら、昼間助けてもらった!」

「…あぁ、メーナ!格好が違ったから全然分からなかった」


メーナの格好は、昼間の服とは趣の違う服を着ていた。


「この服は夜戦用…とかカッコつけたかったけど、ただの普段着よ。ダボダボしたゆるーい服が本当は好きなんだけど、流石に城壁の外に出る時はこの服じゃね…」

「あぁ…木とかに引っ掛けてもあれだもんね」


灰色のワンピースに、黒いダボダボしたカーディガンを羽織っている。

足元は楽そうなサンダル。


「そもそも私は戦闘職じゃないからねぇ〜。ゴブリン三匹が限度かなぁ」


戦闘力はほぼ冒険者としては最低値…ね。


「なんのジョブなの?」

「私は精霊使い。珍しい職だけど、大した力はなくて…」


精霊使いか…

確か冒険者系の珍しい職で、パーティーメンバーの能力底上げと、ヒーラー程ではないけど回復が使えたはず。


「えーと、確か精霊使いって、パーティーメンバーは必須じゃなかった?支援職だよね?なんでソロで森にいたん?」

「私の回復術って、ヒーラーみたいに一気に回復させることは出来なくてね。今まで何個かパーティーに入れてもらったけど、ほとんどが他のヒーラーに居場所を奪われちゃって…」


そっか。

精霊使いの能力値底上げは、確か固定値ではなくパーティーメンバーの元の能力値の倍率計算だった。

ほかの能力値を底上げする職としては祈祷師がいるけど、そちらはレベルやスキルランクに応じた固定値だったはず。

つまり、ランクの低いパーティーではメーナの能力が活かせず、実績のない彼女は能力を活かせる高ランクパーティーにも入れず、詰んだ…と。


「メーナはこの街に定住してるの?」

「ううん。前のパーティーにここで捨てられちゃってね。路銀もないし、近くの宿屋に住み込みで働きながら、最低限冒険者ランク維持のための依頼を受けてる感じかな」

「お、宿屋?後で連れてってくれる?泊まるとこなくて。この時間から小屋には戻りたくないし」

「任せて!」

「ついでに、私とパーティー組んでくれない?」

「えっ…」


俺流交渉術。

要求したいことは矢継ぎ早に、相手が考える暇を作る前に言質を取るのだ。


「…いいの?私お荷物だし…」

「私は商人として行商やるから、お荷物でもOKだよ」


笑いながらそう答えると、メーナは泣き出す。

ちょっと!泣いてる女の子の相手とか無理なんですけど!?

DT三十歳舐めるな!?

はっ!まさか酒が入ると泣き上戸になるタイプか!?

笑い上戸の俺とは正反対だな!?


こうして俺は、この世界で初めてのパーティーメンバーを迎えることになった。


ハーメルンとの重複投稿において足並みを揃えるため、連続で投稿です。

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