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童貞30歳は魔法使いではなく魔法幼女になる  作者: 風早海月
一章 幼女は何をしたいのか
2/8

2 初期ジョブ

ゴブリンリーダーを倒した俺は、放心していた女の子を見やる。


うーむ、言葉遣いは女の子っぽい方がいいのか?ボロ出すのは嫌だしな…まぁ一人称はボクにしといた方が…いや、この姿には似合わないな。ロリロリしいこの身体と格好に合わせて私にしておこう。


「大丈夫だった?」

「え、ええ…」

「ゴブリンリーダーの不意打ちの時、ありがとう。あなたが庇ってくれなければ死んでた」

「それを言えば私はゴブリンに囲まれた時点で死んでたわよ…」


慎ましやかだけど、柔らかい胸の感触が背中に蘇る気がする。

マジ男のままだったら襲ってたぞ、お前!もう少し節度を持った行動をだね!


「とりあえず街に戻るんでしょ?ついて行く」

「そうね…ありがとう。まさか年下の女の子がこんなに強いとは思わなかったわ。私はメーナ。あなたは?」

「ぉ…私はリア。しがない魔法使いだよ」


メーナは見習い冒険者で、この森に薬草を取りに来ていたらしい。


「このゴブリンはどうするん?」

「ゴブリンは食べられないから、魔石だけ剥ぎ取って燃やすのよ。リーダーは剣持ってたからそれはそこそこの値段で売れるわよ」


俺…じゃなくて私ならゴブリンの持ってた武器とか絶対使いたくないけど。


「やり方分からないんだけど…やってくれる?」

「私も見たことしかないから上手くできるか分からないけどねぇ…水魔法使える?出来たら洗いながら作業したいから」

「…多分」

「あ、もしかして苦手?」

「あー、いや、強すぎたらごめん」


水道の水を思い浮かべながら神精樹の杖ではなく左手から魔力を通す。

イメージを絞れた様で、ちゃんと水が出る。


「よし、あとは燃やすけど…火属性魔法はどう?」

「森の中だからちょっとね…森林火災になっても困るし」

「じゃあゴブリン魔石二個くれる?火の魔石で焼いちゃうから、一個は必要経費で、もうひとつは処理の手間賃ってことで」

「分かった」


メーナは軽く掘った穴(俺の土魔法)にゴブリンの死体を投げ入れて、ゴブリンの魔石と同じ形の魔石を一つ投げ入れた。

燃える死体。


「ゴブリンの魔石に火属性の効果を足した物だよ。今入れたのは」

「へぇ…」

「ゴブリンの魔石は安くて大量に手に入るから、角うさぎの魔石と並んで街の生活を支えてるんだよ」


不思議そうな顔をしていたのか、メーナは解説してくれる。

魔石は多くの場合使い捨て…だったはず。ゲームではそうだった。確かに、ゲームの時に雑魚モンスターの魔石を売って二束三文になったのは覚えてるけど、なんに使われていたのかは知らなかった。


「よし、じゃあ街に戻ろっか。リアはどこの街から来たの?」

「私は街道の外れにある小屋に住んでる」

「え!あの小屋ってリアのだったの!?」

「譲ってもらったんだよ」

「あぁ…結界が張られてて、少し不気味だからみんな寄り付かないから謎だったんだよね…」


メーナは苦笑いしながら頬をかく。


「あ、そろそろ街道に出るね」


街道に沿って街に向かう。

しばらく歩くと、街が見えてきた。

最初の街は中世的な高い城塞に守られている…というのがゲーム内の仕様だったはずだけど、この世界の最初の街は大きな星型城塞となっていた。

大砲の発達によって出来た星型城塞は、この世界では多分魔法の対策のためだろう。根拠としては、大砲と違って俯角に制限が少ない魔法だから斜堤がないのだろう。まぁ私の推測だけど。


跳ね橋奥にある詰所の前には、昔の改札のように検問所が置いてあった。


「住人カードをこの改札機に通してくれ」


もう改札って言っちゃったよ、門番の人まで。


青い水晶板のようなものが改札に据え付けられている。メーナがカードをそこにタッチしているのを見て、見よう見まねでやってみる……ってかこれ交通系ICカードと同じじゃないか?

私は子供扱いなのか、メーナとは違ってかわいらしい音が鳴る。完全に自動改札機やん。



街に入ったところで、メーナと分かれる。

街が変わってしまっているので記憶のマップが使えない以上、とりあえず案内くらいして欲しいところだったけど、この街初めてという感じを出すのは不信感抱かれそうだから自重した。


このゲームの一番の特徴に、ジョブの多様性にある。

この場合のジョブとは、職業という意味である。

ファンタジーでよくある冒険者から、ものを売り買いする商人、料理をする調理人、金属製品を作る鍛治職人、建築を司る大工、家具や細かなものを作る木工職人、作物や家畜を育てる農家、魚等の水産物を扱う漁師、果てには王族や貴族や領主といった支配階級まで、ありとあらゆる職業がプレイ出来るというのが売りのゲームだった。

とりあえずチュートリアル的には、最初のジョブは戦闘系・生産系の2種類だけだ。冒険者ギルド・商業ギルドのどちらかに向かうことでジョブ選択が始まる。

もちろん魔法使いだから冒険者ギルドに…と思ったそこのあなた!ぶっぶー。

俺のメインのジョブは行商人なんだなぁ。


商業ギルドに入ると、出入口のところにいた若い女性が声をかけてきた。


「あら?ここは商業ギルドよ。子供の来るところじゃないわよ」

「…商売するにはここに来なきゃいけないと思うけど?」

「あら、商人になりたい子かしら?でも商売をするには元手が必要よ。お家に帰りなさい」


元手。実は住人カードは銀行口座のカードでもある。ゲーム内で稼いだお金がそっくり入っていたのには先程改札のために取り出した時気付いた。


「元手もある。いいから商業ギルド登録をお願い」


チュートリアルでは、最初に話しかけてくる人は必ずギルドの関係者だ。話しかけてくる人はリアルラックに依存しており、ギルマスのような偉い人が声をかけてくることもあれば、面倒な絡みをしてくるおっさんもいたはず。

俺がゲームの時に声をかけられたのは確か…見習いの受付だったはず。


「あらあら、それはごめんなさいね。じゃあこっちに来て」


まずはギルドの登録だ。

個室に移動して、テーブルの上にある水晶板の上に住人カードを載せる。

やっぱり交通系ICカードみたいだ。


「まずはジョブを教えてちょうだいな」


ここでのジョブは商業ギルドでどのような業態の商業をするかで決まる。

俺がゲームの時に行商人をやっていたのは、主にジョブの変更をする必要がなかったから。

店舗を持つと大きくするのに引越しが必要だし、一定以上の資産を持つようになったら強制的に商会を立ち上げる必要が出てくる。そんなのゴメンである。面倒ごとは遠ざけるのが吉だ。


「行商を行いたい」

「うーん…街の外は魔獣が出るから危険よ?せめて街に店を出したら?」

「大丈夫。自衛位は出来る」

「でも盗賊とか出たら…女の子なんだから、そういう危険もあるのよ?」


R十八指定のゲームじゃなかったからそんな描写はなかったけど…そっか…ここはゲームじゃなかったな。

まぁ魔法があればなんとかなるべ。


「いいから登録お願い」

「そうね…ギルドの規則的にも断れないものね。わかったわ。商業ランクの説明は必要かしら?」

「あー、お願い」


ゲームとの差異はこの街が中世的な高い城壁に囲まれた城塞都市ではなく、低い土塁のような星型城塞都市となっていたことから明らかにある。

細かいところもきっちり確認しないと…


「商業ギルドランクはF~AランクにSランクを足した七段階。上にいけばいくほど商業ギルドでの待遇に差が出る他、貴族を初めとして大口のお客様からの覚えが良くなるわ。特にSランクは王族御用達にしか贈られないランクだから、国内でも三十もないわね」

「昇級条件は?」

「そうね…取引量や納税額、領主や王族が派遣する調査員による商業業態調査とか…様々な規定で昇級するけど、A級以上に昇るのはとても難しいわね」


冒険者ギルドなら依頼と達成という簡単な事だけど、商業ギルドはあくまで商いだからなぁ…ミシュランの格付けみたいなもんかな。


「ちなみに、ギルド登録後二年以内にFランクからEランクに上がらないと、特別な事情がない限り登録抹消になるから気をつけてね」


返された住人カード。


名前:リア

年齢:一〇

性別:女

種族:ドワーフ

冒険者ランク:未登録

商人ランク:F(行商)

住民登録地:なし


登録抹消の話はゲーム内ではなかったな。気をつけよう。

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