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童貞30歳は魔法使いではなく魔法幼女になる  作者: 風早海月
一章 幼女は何をしたいのか
1/8

1 魔法幼女爆誕!

「俺、明日で童貞で三十歳になるから、魔法使いになってくるわ」


高校以来の親友との酒の場でそう宣言した俺。

酒が回ったのか、頭がぐわんぐわんする。だけど、もうすぐ午前〇時だからゲームのログボ貰わないと…誕生日には特別なアイテムが貰えるから、必ず忘れずに貰わないといけない。


午前〇時きっかりに、俺はヘルメットのようなフルダイブ型VR装置を被り起動。ゲームの世界に旅立った―――







はずだった。


「なんじゃこりゃあー!?」


叫んだ声はゲーム内補正のおかげで出来たイケボ…ではなく、まるで幼い子供…というか幼女?の声だった。意味が分からない。

とりあえず落ち着いて周囲を見回す。おそらく小屋のようだ。物置のような感じがする。壁に姿見があったので、覗いてみる。


「美少女じゃなくて美幼女やんけ!」


思わずエセ関西弁でツッコミを入れるほどには、俺は気が動転しているらしい。

姿見には、十歳くらいの女の子がいた。

それも、アニメに出てくるような色の髪や瞳を持っていた。ラベンダー色とでも言うべきボブカットの髪に、濃い黄色の瞳だ。

頬に触れればぷにぷにした柔らかい肌の感触がある。

春秋ものっぽい厚さの生地の長袖ワンピースを着ていて、少しスカートを持ち上げるとニーソを履いていることが分かる。ウエストの辺りにリボンが結んであるのは動きやすくするためか?

足元にはショートブーツを履いている。ある程度の踏破力はありそうだ。


「でもなんか見覚えのある小屋なんだよな…なんだったかな」


家具の配置が見覚えのある小屋だ。なんだったか…


「あ、もしかして…ゲームの初期位置の小屋か?なるほど、アップデートでバグでも起こったのか?とりあえずログアウトだな」


右手で特定の動きをするとメニューが開けるはず。そこの左下にログアウトボタンがある。


「あれ?メニュー出てこないな…」


なるべく考えないようにしていたけど、今現代のVR装置ではなし得ないディティールの部屋。まさかと思うけど、ゲーム内じゃないのか?


「でもゲーム的にはこの小屋の周りは結界が張ってあるはず。近くの街までなら行けるか?」


とりあえず情報収集だな。とりあえず武器は何か必要だな…初期武器は確かこの箱を調べると選べたはず。ここにあれば、ここがゲーム内の可能性はまだある。

俺は小さな手で箱を開ける。そこには初期武器の弱っちい武器は無かった。でも、一つだけ武器があった。


「これって…」


三周年のあのゲームで、三回目の誕生日ログボを受け取った者だけが誕生日プレゼントとして選べる強武器…神精樹の杖が安置されていた。俺が選ぶはずだった誕生日ログボだ。

そこには手紙も付いていた。



親愛なるリア殿。突然の招待を謝罪する。私はまぁとある世界の神と名乗っておこう。

まず、この世界は君の世界とは違うファンタジーの世界だ。童貞で30歳を迎えた者の中から抽選で選ばれた者として君を招待して魔法少女…もとい魔法幼女にしたよ。喜んでくれれば嬉しいが、帰らせてくれと言われてもそれは無理な話だ。

その杖は私からのプレゼントだ。この世界を自由に遊んでくれたまえ。


とある世界の神より


追伸

君の基本情報(ステータス)はこの世界の住人カードに記されている。箱の隅に置いてあるポシェットに入っている。ポシェットは無限容量のアイテム袋だから、活用してくれたまえ。アイテム袋は取り出したいものを思い浮かべればすぐに出てくるぞ。


さらに追伸

この小屋の結界内は君の所有する土地だ。結界はその小屋の地下に起点があるぞ。



俺はポシェットに手を入れる。すると、カード状の物が手にあたる。取り出してみる。


名前:リア

年齢:一〇

性別:女

種族:ドワーフ

冒険者ランク:未登録

商人ランク:未登録

住民登録地:なし


「なるほど…ドワーフだから年齢30でもロリなのか…って十歳に若返ってるんですけど!?」


ため息を吐きながら、神精樹の杖を抱える。神精樹の杖はまるで羽のように軽い。大きさは少し大きいけど、使えなくはない。


「ってかカタカナで書かれたら結構女の子っぽい名前だな…響きだけでも昔いじられてたのに…」


俺の名前は、漢字で書くと利阿と書く。利根川と阿武隈川から取ったらしい。確か父親が昔やってたゲームの好きなキャラがどうとか…

でもカタカナで書かれると完全に女の子っぽい。いや、身体が女の子だからいいのか?まぁポッと呼ばれて反応できないよりはいいか。


まずは近くの街へ行く…前に、魔法を試したい。

小屋を出て、近くの草原に出る。

ゲームの通りなら…たしか……低級魔法をとりあえず使ってみる。的は少し大きめの岩だ。


「まずは基本の無属性魔法…」


VRゲームでやってた時のように、魔力を杖に流しつつ発射する。


「エスト ショット!」


ボーン!


えーと、岩が粉々…とまではいかないけど、細かく割れながら吹っ飛んだ。

……これ、魔法は制御出来るまで封印か?最も基本で、純粋に魔力を放射するだけの初級魔法なんだけどなぁ…


まぁいいや。とりあえずお腹空いたし、街に行こ。

ゲームのマップを思い浮かべながら、街道に出る。


「うーん、速く移動する方法何かないか…?歩くのだるいぞ」


ドワーフの身体が頑丈なのか、歩いても疲れはしてない。でもめんどくさいのは確かだ。


街道は森に入る。

ゲームと違って周辺マップや敵味方レーダー的な物はないから、耳を澄ませながら歩く。すると、風に乗って悲鳴が聞こえてきた。

行くしかないか。これで森から死体が出て俺のせいにされても困る。


街道を外れて悲鳴が聞こえてきた方向へ走る。ドワーフの強靭な身体能力に驚きながら、ふと開けた場所に出たことに気づく。


「た、助けて…って女の子!?逃げて!」


その開けた場所の端に、十五、六歳くらいの女の子が俺に助けを求めたり逃げろと言ったりしていた。

その子の前にはゴブリンが七、八匹ほどが棍棒を持ちながら距離を詰めていた。


「エスト ショ…ッ!射線が取れない!」


少し距離があることと、ゴブリンの向こうには女の子がいることの二点が重なって魔法が打てない。なればやることは一つ。


「うぉー!ヤー!」


神精樹の杖で、ゴブリンを後ろから二匹撲殺する。あと…六匹か!

女の子とゴブリンの間に割って入る。


「だめ!私に構わず逃げて!」

「ゴブリンくらいで泣かない泣かない。エスト マルチショット!」


六匹まとめて無属性魔法で吹き飛ばす。

これで戦闘終りょ…


「危ない!」


後ろにいた女の子が俺を抱えて地面に倒れ込む。

その背中の上を水平に剣が通る。


「ゴブリンリーダーよ!」


そういえば、ゲームでもゴブリンの群れ五匹以上を討伐した時に低確率でボス戦に入る事があった。


「あなたのあの走り方なら逃げられるでしょう?逃げて!」

「あえて言わせてもらおう、私は魔導の天才であると!」


ちなみにゲーム内での称号です。はい。ちょっと興奮してイキってますね。

仕方ないじゃん!十五、六歳の女の子とは言え、胸がせ、背中にね!

三十歳童貞の俺にそんな刺激の多いものはダメだぞ!


「エスト シュート!」


無属性魔法ショットの上位魔法で、魔力の弾丸だったショットから成長した魔力のビームがゴブリンリーダーに直撃する。

ゴブリンよりも悲惨で、体にある魔石以外全てが消し飛んだ。


「あなた…どこの魔法使いよ……」


女の子はあんぐりと口を開けて、放心してしまうのだった。

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