57話 獣王子・ラリオン
翌朝、準備を整え王城へ向かった。
すると城門の兵士が並んでる者達に
「今、王は緊急の要件で謁見する事は出来ない。すまないがお引き取り願う。」
兵士はそう言って人々を帰している。
王子はどうなんだろうか?そうしばし考え、緊急の事なら王子も同じか。そう考え俺は戻ることにした。まだ王都も満喫してないし、これから観て回ろう。
「その腕輪は!?すみません!そこの冒険者の方々!!もしかして冒険者のアラシ様とルビィ様ではないでしょうか?」
兵士は慌てて俺達の後を追ってきた。
『確かに俺は冒険者のアラシだ。コッチがルビィだ。』
俺はそう答える。
「やはりそうでしたか。獣王子よりアラシ様は俺の友だから通すように言われております。ルビィ様は将来の妻になる女性だからと通す様に言われております。」
いやいや、ツッコミ要素が多いな。妻じゃねぇし。俺は友っちゃ、友か。それよりこっちじゃラリオンの事は獣王子と呼ぶんだな。
『それ以外にも冒険者チームのメンバーとペットがいるのだが、一緒に良いか?』
「ええ、当然構いません。それにしても可愛らしいペット達ですね・・・・
あのー?勘違いかも知れませんが、そちらにいるのは、聖獣様達ではないでしょうか?いえ、まさかそんな事は。勘違いですね・・・は、ははは。ちょっとバタバタしてたから、疲れてるのかな?」
『ああ、こっちがフェンリルで、こっちがスザクだ。』
俺は足元に歩いているフェンリルと俺の肩にいるスザクを紹介する。
すると兵士達は膝をつき、畏まる。
そう言えば、最初リンもこんな感じだったな。
俺は兵士に聞いてみた。聖獣とはどんな存在なのか。
獣人族の間では、この大陸の守り神として扱われているそうだ。言い伝えで
聖獣集まりし時、時代の常識が変わり、新しい世界が始まる。
だそうだ。良い意味でも、悪い意味でも解釈されているそうた。
なので俺の元に2匹いる事はまず有り得ないし、あるならば言い伝えが本当になり得るとビビっているらしい。
知らんがな。俺はペットとして飼っているだけで、そんな事言われても知らんがな。あれ?でもスザクはフェンリルに言われてペットにしたような・・・
まぁ、スザクは有能なのでペットにして良かったが。
そんな話をしながら、俺達は王の執務室に連れて来られた。この中にラリオンがいるらしい。中から声が漏れている。
何やら只事ではなさそうだ。
兵士がノックして先に入り、俺達の事を報告している。そして王が通すように伝えた。
俺達は中に入ると、王と王子のラリオン、大臣風と近衛騎士風がいた。
俺達が少し進むと
「よく来たな!俺は獣王のカイオン=マーだ。ラリオンの友だと聞いてる。不要な礼はいらん。しかし今少し立て込んでいてな。少しそこで座って待っててくれ。」
獣王はそう言ってソファーに目をやる。
俺達は座った。
獣王はラリオンを一回り大きくして、落ち着きを持たせたようなそんな人物だった。かなり強いのだろう。その身に宿る猛々しさは、見た目の落ち着いた雰囲気とは真逆である。獣人は見た目より若く見えるのか?それとも老いにくいのか?獣王は若く見える。そう言えばリンも年齢より若く見えたしな。
ラリオンは俺達に目で挨拶してきたが、熱くなっているようで、直接声に出して挨拶はしてこなかった。
「だから親父!!俺が行くと言っているだろう!!時間がないんだ!!」
「だから今、急いで兵を集めいるだろ!!お前は少し頭を冷やせ!!」
「兵を向かわせても、無駄死にさせるだけだ!!前回もそうだっただろう。何人犠牲にしたと思ってるんだ!!」
「それならお前が行って、何とかなるのか!!それこそ無駄死にだろうが!!」
「俺一人なら何とかなる!!とりあえずアイツだけでも助けに行きたい!!その後なら兵と冒険者に依頼して対処出来るかもしれん!!」
「ダメだ!!お前は俺の息子で王子だ!!1人でなんか行かせる訳ないだろが!!」
よう分からんが、ラリオンがどこかに行きたいらしく、王は1人はダメと言っている。なら答えは1つだろ。
『それなら俺がラリオンに付いていこう。』
俺がそう言うと王の親子は同士にこちらを見る。ラリオンが
「お、おい、アラシ。なんの事か分かってないんだろ?」
『おい、ラリオン。友であるお前が本気で困ってるんだろ?それなら当然助けるさ。それがどんなに困難な事でもな。』
「う、うう、うおおおおぉぉー!!
ありがとう、ありがとう、アラシよ!
恩にきるぞーーー!!」
ラリオンは泣きながら笑い、感謝してきた。
「確か人王の武闘大会でラリオンを破って優勝したと聞いているが。なお、アラシ殿よ。コイツは俺の息子だ。跡取りなんだ。コイツを死なせる訳にはいかん。約束してもらえるか?生きて返すと。」
『それは分からん。だがラリオンが死ぬ時は俺も死ぬ時だ。そん時は諦めてくれ。』
俺と獣王は互いに目を見る。
「だっはっはっはー!!ラリオンよ。お前はいい友をもっているな!アラシ殿スマンがよろしく頼む」
『それならまず説明してくれ。時間がないなら、歩きながらで構わん』
俺達はラリオンと王の執務室を出て、歩きながら説明を聞く。
上級ダンジョンに異変があり、モンスターパレードの兆候があるらしい。ギルドに依頼したが、受ける冒険者がいなかったらしい。
その事を聞きつけたラリオンの友である、Sランクの冒険者が調査に向かったそうだ。
しかし5日で戻ると言っていたその冒険者は7日経っても戻って来ないらしい。
ここから上級ダンジョンまでは歩いて5日、馬で2日だろう。しかし獣人の脚力なら1日だそうだ。
なるほど、友を助ける為に1人で行こうとしてたのか。ふっ、嫌いじゃないな、そんな奴は。それなら俺からそんな奴にはこれだ!
『ラリオン、両手を出せ』
俺は横を歩いているラリオンにそう告げる。
ラリオンは不思議に思いながら両手を出す。
『ラリオン、両手をくっつけて上に向けろ』
ラリオンはその通りにする。
俺は作っておいたミスリルの爪を指輪から、ラリオンの手のひらに乗せる。
「ぬおぉぉ?なんじゃこりゃ!?」
『俺の作った爪だ。お前用に作っておいたんだ。ラリオン、正直お前には剣と盾の才能はあまりない。しかし体術は光るものがある。だからお前に合う装備を作った。それを使え。』
ラリオンは自分の手にミスリルの爪を装備している。サイズはピッタリのようだ。そりゃラリオンの事をイメージして作ったからな。
「おお!!ピッタリだ。良いのか?相棒!
しかもこりゃぁ、ミスリルじゃねーか!?
本当に良いのか?相棒!!」
ちょっと待て。いつの間にか相棒になっちまってるじゃねーか!!だがそんな奴嫌いじゃない!!
『これからはそれを使って行けば、お前は今より1つ、いや、3つ以上、上を目指せるだろう!』
「よっしゃーあー!!相棒がそこまで言うなら俺はこれからコイツで上を目指す!」
ちなみに1つ上がどれくらいなのかは言わない。いや、言えない。
俺達はそのまま王城を出て、ギルドに向かう。上級ダンジョンの依頼だけ速攻で受けて、王都を出る。
王都に出てしばらく走った所で、先頭を走る、ラリオンを止める。
「相棒!すまねぇが急がなきゃなんねぇ!ここから走っても1日掛かるんだ。体力を残したいのは分かるが、ここは俺の言う事を聞いてくれ!」
『急いでいるんだろ?ならコイツの方が早い。』
スザクが俺の肩より飛び出し、そのまま大きさは変える。
「そんな小さな鳥で・・・って!?なんじゃこりゃーー!!??」
『おい、ラリオン。急いでいるんだろ?早く乗れ。』
俺達は全員スザクに乗り、驚いて時を止めているラリオンに声をかける。
時を戻そう!!
ラリオンが乗り込み、スザクが高度を上げる。この距離なら通常のペースなら半日だが、それは快適に進む場合だ。
俺はスザクに念話でいつもの4倍で頼む。
それを聞いていたチームの皆は体勢を低くして備える。
「な、なあ、これってひょっとして聖獣様なんじゃねーのか??」
『おい、しっかりと掴まっとけ。落ちても拾わんぞ。』
「おい、それどういうい・・・うがあぁぁぁーーー!!」
体を逆海老反りしながら、ラリオンは顔から色々な汁を出しながら、必死に掴まっている。
おい、俺達は場所しらねーんだ。お前が案内しなきゃたどり着かないだろ!!
ラリオンはあがっ、あがっと言いながら、あごで行先を示している、らしい。
それじゃあスザクが分からんだろ?
俺はスザクに行先を指示しながら進む。
ラリオンのあごが徐々に下を向いていく。
どうやら到着したらしい。
その間ラリオンは体勢を直すことなく
あがっ、あがっと言いながら、顔から汁をずっと流してた。ラリオンが1番後ろで良かったよ。急いでいるらしいのでスピードを落とさなかったが。まぁ、これも修行だ。
徐々に下に降りていくスザクの上から下を見る。そこには大地に大きく口を開けた穴が広がっていた。穴の直径は30メートルはあるだろうか。穴の下を確認するが地面を見る事が出来ない。穴の周り4ヶ所に砦の様な建物がある。王兵が1つの砦に50人程いるらしい。
流石は上級ダンジョンだ。
見た目からも恐ろしさが伝わってくる。
「アラシ、ここが上級ダンジョン
ホデビルール、だ。」
なんでも上級ダンジョン以上は
そのダンジョンに名前がついているそうだ。
中級ダンジョンにもつければ良いのにな。
俺達は砦の1つに向かい中に入る。
兵士達はラリオンに敬礼している。
ラリオンは兵達を激励し、そのままホデビルールに入る準備を兵達にさせている。
兵士達は鉱石で出来たハシゴを外で繋いで、長さ70メートルくらいだろうか。ハシゴを完成させた。
それを穴に降ろして準備完成だ。
『それでは、これより上級ダンジョン
ホデビルールに入る。まず最優先はSランク冒険者の救出だ。余裕があれば調査も行う予定だ。しかし俺が無理だと感じたら引き返す。それは絶対に従って貰う。』
俺は皆の顔をそれぞれ見ながら、最後の部分でラリオンの顔を見る。
ラリオンは真剣な表情で頷く。
『では、行くぞ!』
俺達は上級ダンジョンに足を踏み入れる。




