47話 ルビィの挑戦 ②
朝、騎士が俺達は迎えにきた。
俺達は準備を終え、騎士と挨拶を交わす。
「それではこれよりルビィ様の予選大会会場まで案内します。どうぞこちらに」
そう言って俺達は馬車の乗り込み、会場に向かう。
馬車の中で騎士に武闘大会について聞く。なんでも毎年行われる王国主催の大会なんだそうだ。本大会は予選を勝ち抜いた13名と前回大会の優勝者、準優勝者がシードで王の推薦が1名の16名で行われる。
予選大会は王都の各地で開かれているそうだ。今から向かう会場ではバトルロワイヤルでまず人数を4名に絞り、その後トーナメントで優勝した者が本大会に出場となる。
会場に到着し、ルビィは選手控え室に、俺達は観客席に移動する。
『ルビィ、本気を出すなよ。ある程度手加減しておけ。』
そう言って俺はルビィに声をかけた。
ルビィは頷いて移動する。
俺達は騎士に案内され、観客席に着いた。そこはVIP席で闘技場が良く見える。
メイドも2名居て、飲み物やら色々用意しくれてる。俺は言われた席に座り始まるのを待つ。
すると司会の様な男が闘技場に現れた。
「レディースアンドジェントルマン!
ようこそ、王国主催の武闘大会の予選大会にお越しくださいました。これよりは簡単に説明致します。」
そう言って男は説明しだした。
・闘技場は魔道具と魔術師によるハリアーを張ってあるが、観客に被害が出ても自己責任。
・参加者には特別な魔道具を使用しているので、死亡する攻撃を受けても何とか一命を取り留めるらしい。ただ死ぬ事もあるので、参加者には契約書を書いてもらうらしい。観客もある程度覚悟をして見て欲しい。
・この会場から本大会に出れるのは1名のみ。今からバトルロワイヤルを4戦行い、
その後にトーナメント戦となる。
トーナメント戦からは賭けも始まるので、ぜひ参加して欲しい。
大体こんな感じだ。
賭けも王国主催だろう。
ちなみに参加者は500ダリー支払って、予選大会優勝者には賞金が出るらしい。本大会でも1戦勝つ事に賞金が出る。
しばらくするとバトルロワイヤル第1戦が始まろうとしていた。ルビィは出ていない。50名程の人数が闘技場の上で武器を構えて待っている。流石に50人も乗ると狭く感じるな。魔法使いには不利になるだろう。
試合が始まり、闘技場の外に落ちる者。これも失格。闘技場で倒れる者。しかしバトルロワイヤルでは判定が出来ないので、場外に出す必要があり、人数が少なくなってくると参加者が協力して落としている。結果1名の武闘家が勝ち残る。
2戦目、3戦目と続き、大柄の獣人と小柄の女性獣人が勝ち抜けた。
4戦目にルビィが出てくる。実は俺はこっそり抜け出してルビィに念話である作戦を伝えてある。
そうして始まった4戦目。始まって1分程で半分に、さらに1分後に10名に、またさらに1分後に闘技場の上には2名の男が見える。
2名の男が、争いそして決着。勝った方が負けた男を掴み、闘技場の外に投げ捨てる。
その瞬間に勝った男の後ろからルビィが現れ、男を場外に落とす。シーンとした会場だったが、次第にざわめき出す。
「どっから現れたんだ?」
「あれって良いのかよ?」
「魔道具使ったんじゃねーか?それなら問題ねーよ。作戦勝ちだ。だがトーナメントじゃ勝ち抜けないだろうがな。」
結局、観客は魔道具を使ったと言う事でまとまったみたいだ。大会運営陣もそう結論を出し、ルビィの通過を認めた。
この中にルビィが行った事を分かった者が何人いるか。ルビィに伝えた作戦はこう。素早く動いて観客に見えないようにし、最後の者を後ろから押して場外に出すと言う作戦。
ルビィは有名になる事を目標にしているので、実際嫌だったかも知れないが、俺の言う事を聞いてくれた。まぁ、予選大会を勝ち進めば名声も上がるだろう。
これから1時間程の休憩を挟んだ後、トーナメント戦が始まる。俺達はまずルビィと合流してVIP室にて食事する。その後ルビィは控え室へ。俺は賭場に向かい、賭けをする。
トーナメント戦の優勝者を当てる賭けだ。
オッズは
・獣人剣士 ガオンダー 1.5倍
・獣人拳闘士 シャオンユー 1.8倍
・人族拳闘士 ジャグロー 2.9倍
・人族剣士 ルビィ 4.8倍
俺の狙い通りだ。
俺を無理矢理武闘大会に出させた借りを返して貰おう。俺は賭け上限を聞くと無制限だと言われた。なのでルビィに100万ダリー賭けた。周りより驚かれたが、賭けたのがルビィだったので、大穴狙いで墓穴を掘ると噂している。まぁ、見てろよ。
俺はVIP室に戻り、まもなく賭けも締め切られる。最終的にルビィの賭け率は4.0倍となった。俺が大金をかけたからだな。
そして試合が始まる
「それでは、これより予選大会、トーナメント戦を行います。勝ち抜けた者が本戦出場となります。まず第1試合、獣人族より獣牙剣流の師範・ガオンダー!!今回の本命です。対するは人族剣士ルビィ!腰に剣を2本差しているが、どのように本命と戦うのか!それでは間もなく試合開始です。」
「それでは、試合始め!!」
まず、ガオンダーが大剣を構え前進する。
ルビィは両手に剣を持ち、待ち構える。
今回ルビィには目立つように、観客に分かりやすく試合をするように伝えた。
その方が盛り上がるし、ルビィも有名になれるだろう。
ガオンダーの大剣をルビィが片手の剣で受ける。ガオンダーは押し込もうとするが、ルビィは全く微動だにしない。ガオンダーは無理だと悟って、距離を取る。そして大剣による疾風斬を打ち込んだ。ルビィは双烈風斬を打ち込んだ。1本は相手の烈風斬と当たり、烈風斬を打ち消し、そのままガオンダーに向かう。ガオンダーは大剣で2本の烈風斬を受けようとしている。それは悪手だ。
烈風斬は大剣を砕き、ガオンダーの体を切り裂き、ガオンダーはそのまま吹っ飛び場外へ。
「勝者、ルビィ!」
大きな歓声が上がる。ルビィはその歓声に手を振って笑顔で応える。
ガオンダーは瀕死ではあるが、命を取り留めていた。魔道具のおかげかな?慌てて救護班が魔法や体力回復薬でガオンダーを治療している。
「おおーーっと!!いきなり本命が負けたー!!剣士ルビィ!!いったい何者なんだー!?」
次の試合は獣人拳闘士が勝ち進む。
「さてお待ちかねの予選大会決勝戦、これに勝てば本大会に出場だ。まず選手の入場だ。謎の二刀流剣士・ルビィ!!今大会本命のガオンダーを倒して勝ち抜いた猛者だーー!!続いて獣人族の拳闘士・シャオンユーだ。
我流の拳でここまで勝ち上がってきたー!!それでは間もなく試合開始だーー!!」
「これでは予選大会決勝戦、始め!」
その瞬間、シャオンユーは素晴らしいスピードでルビィに迫る。ルビィはまだ抜刀していない。シャオンユーはそのままルビィに突っ込み、後ろを向いて回転しながら蹴りを放つ。ルビィはそれをしゃがんで回避。
さらにシャオンユーは着地と同時に蹴りを放ち、その後拳で連打する。
ルビィは蹴りをかわし、拳も体を揺すりかわす。シャオンユーがスキルを使ったんだろう。拳の連打が先程の倍早くなり拳の数も倍となる。しかしルビィはそれも全てかわす。
全ての拳を出した後、シャオンユーは少し離れ、両手を折り、腰を下げる。何か溜めているのだろう。少しした所でシャオンユーは両手の拳を前に突き出した。
その瞬間、闘気の塊がルビィに向かっていく。何とそれをルビィは目にも止まらない速さで右手の拳を出し、風圧だけで消してしまった。観客には当たると思った闘気がルビィの目の前で消えて、ルビィが拳を前に出しているように見えただろう。その後ルビィが拳で消したんだろうと予想するしか無かった。
なぜなら早くて見えてないのだから。
シャオンユーは驚愕の顔をルビィに見せる。
しかし、シャオンユーは引かなかった。前に出て拳を連打しルビィに襲い掛かる。しかしシャオンユーの攻撃はルビィに当たらず、ついにルビィが攻撃に移る。その瞬間、シャオンユーの体が吹っ飛んだ。その後にパンと音が聞こえ、ルビィが拳を出しているのが見えた。シャオンユーはそのまま観客のいる壁まで吹っ飛び、気絶した。多分何本か骨が折れているだろう。命に別状はないが。
「勝者、ルビィ!!」
「おおーっと!大番狂わせだー!!
優勝者はルビィ!!謎の剣士ルビィだー!!今回は何と剣を使わず、拳闘士を拳で倒すという、とんでもない方法で相手を沈めたー!!ん?何?うん、うん。え!?今聞いた所によるとルビィ選手は試合開始位置から1歩も動いてないとの事だーー!!ありえない。有り得ないぞー!!これは本大会でも台風の目になる事間違いなしだーー!!」
物凄い歓声が闘技場を包む!!
その後表彰が行われて、ルビィは本大会出場権と賞金5万ダリーを手にした。
俺は賭場に向かい、換金しようとする。
すると
「す、すみません。金額が金額なので、今ここでお渡し出来ません。お手数ですが、王城まで足を運んでくれませんか?」
まぁ、金額が金額だからな。
俺は人がごった返す中、騎士の案内で馬車に乗り込み、王城へ。
王城に進み、馬車を降りて城に入る。待合室に入れられ、その後近衛騎士が迎えに来たので、そのまま着いていく。
案内された先は王の執務室だ。
俺は中に入ると王と大臣がいた。
「アラシ、良く来たのう。まぁ、そこに座ってくれ。」
俺はソファーに座る。
『良くも勝手に武闘大会に出してくれたな』
「ふむ、ワシはお願いしただけじゃがのう。」
『ふっ、タヌキが。まぁいい。そのお陰で金が稼げたからな』
俺はそう言って賭場のチケットを出す。
「全く、酷いやり方をしおるのう。金は用意しておいた。あの闘技場で稼いだ金がこれで全部パァじゃ。困ったのう、大臣。」
「ははっ、そうですね。ルビィさんが参加する時にしっかりと伝えておかなかった、こちらの落ち度です。勉強代として我慢するしかないでしょうな。」
「それにしてもルビィがこれ程強いとはのう」
俺は出された袋を確認し、バックにしまう。
400万ダリーだ。大金だな。
『そりゃ俺の冒険者チームの一員だぞ。そこら辺の奴が勝てる訳ないだろう?』
「それもそうかのう。さてアラシよ。明日の武闘大会はぜひ優勝してくれよ、期待しておるのでのう。」
「そうですね、王の代理人であるアラシ様が優勝してくれれば、王国の名誉も回復出来ますし、冒険者のアラシ様ならではの犯罪減少も見込めますし。いい事だらけになりますな。」
なるほど。そんな企みがあったんだな。
確かに俺が色んな所に行く機会が多い以上、権力と拳力、両方持っている俺が近くに来ると思うだけで犯罪は減るだろう。
『明日の武闘大会はアーセルも見に来るんだろ?』
「もちろんじゃ、明日の大会はこの王城にある闘技場で行われるんじゃからの。特等席で見るんじゃ!」
『そうか、なら楽しみにしとけ』
俺はそう言って席を立ち、伯爵別邸にて翌日を迎えるのだった。




