42話 謁見
俺達は馬車で王城へ向かっている。
もう最近は馬車に乗りすぎて飽きた。車に快適にドライブしたい。
そんな事を考えながらルビィを見るとかなり緊張しているようだ。
『おい、ルビィ。今からそんなに緊張してどうする?』
「だって、王様だよ?この国で1番偉い人だよ??マナーもしっかり覚えてないし、失敗したら死刑になるかもって言われたし!!どうしよう、アラシー!!私まだ死にたくないよー!!」
ルビィー半泣きで俺にすがってくる。
え?ちょっと待て!?
死刑なの??俺、全く覚えてないけど??
はい、詰んだー!!
作戦考える前に覚えておくべきだったー
ロメロが笑っていやがる!!
テメー!!最近本性出てきやがったな!
ルビィは騙せても俺は騙せねぇ!!
『ルビィ、それはロメロの悪知恵だ。冗談だよ。あんまり緊張すんな。俺なんかマナーなんか何にも分からないんだから』
「え?アラシ。ちょ、おま、本気で言ってるのか?」
『ああ、ロメロ、本気だ!
マジと書いて本気と読むのがウチの家訓だ!!』
「や、やばいぞ。今からだと時間がない。
とりあえず、俺の真似をしておけば、大丈夫だ。お、おちゃついていこう!」
お前がな!
まぁ、今更慌ててもしょうがない。
何とかなるだろー!!
俺達はこれから辺境伯との決戦に向かう雰囲気ではなく、自然とリラックスして王城へ入った。王城の門を通り、馬車を降りる。目の前には壮大な城が存在感をこれでもかと出している。
『おおー、凄いな、コレは』
素直な感想がでてしまった。
俺達は王兵に案内され、どんどん城の中に進む。ある部屋に案内され、呼ばれるまで待機する。俺は部屋の調度品に眼をやり、意味も無く鑑定しまくってしまった。
少しして、騎士の男が呼びに来た。
そのまま、王の居る謁見の間の扉の前まで来る。武器などを預けてそのまま扉の前で待つ。入る順はロメロ、息子が先頭、その後に俺、ジョイナフが2列目、ルビィとリンが3列目で、俺は隣にいるジョイナフに声をかけ、例のアレが大丈夫か、確認すると、騎士に伝えてあるし、先程確認しましたと返事が返ってきた。
扉が開き、中に入る。
うおー、思っていた以上に広いし、人数も多い。正面の豪華な椅子で1番高い位置に座って居るのが王か、その横に王妃、王の横で2段ほど下で座っているのが、王子か。王の前て5段ほど下に立っているのが大臣かな?王の後ろと周りには近衛騎士だろう。10名ほど居るな。
通路の左右には騎士が等間隔で立っており、その後ろには貴族が多くの貴族が立っている。王に近いほど爵位の階級が高いのだろう。それとなく気になる人物に鑑定をかけていく。最後にかけた人物の先に鋭い視線を送る大柄な男を見つけた。多分あれが辺境伯だな。俺は続けて鑑定を
『王の御前である!!』
ロメロが消えた。俺は鑑定をかけようと前に進むが、何か嫌な感じがしたので、横を見ると俺より少し後で、ロメロがいや、全員が膝をつき、頭を下げている。
しまった!!やってもうた!!
完全に俺は出遅れた!!今更遅い。
ミッシェせんせーい、たすけてー!!
俺は直ぐに右腕を胸の前に、左腕を少しお尻のほうに、足は踵をつけ、右足の指先を王の方へ、ひだり足は右足にそろえすに少しあける。
すると王から少し感嘆の声が漏れた。
しかし大臣っぽい男が
「おい、貴様、王の御前であるぞ!跪け」
俺はその命令も無視し
大臣が
「おい!跪け!!くっ、なら騎士よ!その男を引っ捉えよ!」
騎士たちが俺に近づこうとして
「良い。お前達下がりなさい」
王は騎士に手で下がる合図を出す。
騎士は元の位置に戻っていく。
「さて、そこの者、発言する事を許そう。
何故跪かない?返答によっては、タダでは済まんぞ?」
そう言って王は俺を見る。
『まず王よ、俺は冒険者のアラシだ。よろしく頼む。』
「おい!貴様!!誰に向かってそんな口を聞いて・・・」
大臣が顔を真っ赤にして怒っている。
「良い、大臣。そこの者続けよ。」
王は大臣を止め、俺を見つめる
『俺が今行っているのは古来からこの国の王族のみに伝わる儀礼だ。王の即位の儀や他国の王に感謝する時に使うものだ。』
王の即位の儀はこの国の王が交代する時に王と王子のみがある場所で行う儀式らしい。
『そしてこの儀礼はこの国の王族に対して、最高の儀礼として扱われる。ちなみに俺はこの国の人間じゃないのでな。この方法をとらせてもらった。』
「ほほう、その儀礼を王族以外に知っている者が居るとはな。何処かの王族かの?ワシの知る限りは居らんが・・・ふむ。」
そう言って王は隣にいる王子に声を掛ける
「ミランよ、あの者がしている儀礼を良くみておけ、お前にもその内教えるつもりでいたのだがな。」
王子が俺に目をやる。
俺は本当に少しだけ神力を全身に巡らす。
『はい、父上。確かに素晴らしい儀礼です。気品に溢れています。』
「さて、ロメロよ、面を上げよ」
「はっ」
「面白い奴を連れてきたのぅ。」
「はっ、この者は私の友です。私の治めるセカンディアの救世主でございまして、今回は共に王都へ参りました。」
「そうか。皆の者よ、面を上げよ。そしてそこの者よ、確かに受け取った。ようこそ我が王国、キングセンチュリアに来てくれた。歓迎しよう。」
俺は儀礼を解き、ミッシェに感謝する
初めてミッシェに感謝した。
そしてそのまま王が大臣に声を掛け、本来の目的であるロメロの息子の任命の件に話が移る。
「それではロメロ卿、話されるが良い」
「はっ、王様、お忙しい中お時間を取って頂き誠にありがとうございます。今日はこちらの次男、デキスーギナの次期領主に任命した報告と長男を勘当した事の報告に参りました。」
「ロメロ卿、その件に関して異議を申したいとザイス卿から受けている。王の許可を得ている。それではザイス卿前へ。」
やはり仕掛けてきたか。辺境伯。
辺境伯は軍師のショカッコウと3人の男、1人の女性を連れて俺達の横に来る。
そして王に跪き、王の許しを得て立ち上がる。
「それではザイス卿、異議を申してみよ。」
大臣の言葉を聞いて辺境伯が口をひらく。
「今回のロメロ卿の次期領主任命とご子息の勘当について、我がザイス家の軍師ショカッコウより報告をさせて頂く」
「それでは僭越ながら、私ショカッコウよりご報告させて頂きます。まずは今回ロメロ卿のご子息、コセガーレ殿の勘当について。」
「コセガーレ殿は既に次期領主に任命されておりました。それをロメロ卿はアリもしない不正を突き付け、その母親にも相談をせずに一方的に勘当し、それに意見を言おうとした母親とこれまた一方的に離婚されました。」
そう言ってショカッコウは紙を取り出した。
するとそれは離婚届けだろう。
しかも、別紙にコセガーレは娘が引き取る書面も別にある。
これでコセガーレは辺境伯の直属になった訳だ。
俺は横にいるロメロに聞く。すると結婚する時にザイスに書かされたものだった。
なるほど。有効な手だ。
「次期領主に任命する前なら、ロメロ卿が理由もなく、勘当するのは特に問題はありません。しかし次期領主に任命した後はこの国の問題になります。理由もなく勘当していいものではありません。」
「我が元息子のコセガーレは多くの冒険者や店より無理矢理宝や商品等を奪っていました。罪もない人を勝手に捕らえたり、暴力をふるっていました。それが何度も繰り返し行われていた為に、私は次期領主に相応しくないと勘当しました。それの何処が悪いのでしょう?」
「確かに不正をしていれば、ですがね。」
『ええ、なら証拠はここにあります。』
そう言ってロメロは証拠となる紙を見せる。
それを近くの騎士に渡し、騎士から大臣へ。
大臣がそれを見て
「ふむ、確かに色々な者が奪われたと証言しているな。」
「大臣、それを見せてもらっても?」
そう言って大臣より騎士に渡り、ショカッコウの手に渡る。
それを見てショカッコウが
「私も書類を用意しました。こちらはここに書かれている者達が実は金銭をもらっていたと言う証拠です。」
それを騎士に渡し、大臣が見る
『確かに金が払われているな。ほとんど10ダリーだが。』
『金額は関係ありません。商品を受け取り金を払っている以上、取り引きとして成立しているのではないですか?』
「それは脅されて無理矢理金を渡されただけだろう!!」
「さて、大臣殿。ロメロ卿の出した証拠には金銭を受け取った記載はありませんでした。奪われたとお金を受け取っていたでは、全然内容が異なります。それは証拠としては不十分なのでは?」
「確かに内容が違うのであれば、これは証拠としては不十分ですな。」
「それと領民を勝手に捕らえたり、暴力を振るったでしたか?次期領主の権限に領民を捕らえる権利がありますし、尋問をしても良い事になっております。それの何処が不正なのでしょう?」
「ぐっ、そ、それは・・・」
ここで辺境伯が出てきて
「ロメロ卿の言う不正は無かった。では次期領主はコセガーレそのままになりますな。
しかも嘘の証拠を提出し、不正に国の大切な貴族を不当に扱った罪は許されないし、信用も出来ない。なので今回の件でロメロ卿にはその身を引いて頂き、コセガーレに跡を継いで貰うのがいいのではないか。」
「な、何だと・・・」
ロメロは肩を落とし、俺を見てくる。
ザイス達は勝ちを確信したのか、ニヤニヤと俺達を見ている。コセガーレを領主にして、自分達の勢力を増やすつもりなんだろう。
これで娘と孫の無念を晴らそうとしているんだな。
大臣が
「王様、如何なさいましょう?」
王が目を瞑り、口をひらく前に
『ちょっと待って貰えるか?』
俺は声をかけ、王が目を開く。
『俺も今回に関してのある証拠を持っているのて、提出したい。』
俺は懐から手紙を出し、近くの騎士に渡す。
それを大臣が受け取り、封を開き中を見る。
見ている顔がどんどん驚愕の顔に変わっていく。
『それはセカンディアの闇ギルドマスターの手紙だ。その中には今までにコセガーレが闇ギルドに依頼した数々の悪行が書かれている。しかも直近はセカンディアの武器屋から武器を奪うように指示を出し、邪魔する者は排除するように指示を出し、挙句に店に火を放つように指示を出している。』
それを聞いた辺境伯達は驚きの顔をしている。まだだ、まだこんなもんじゃ済まさないぞ。
『さて、その事件が起きたのはロメロ伯爵が息子を勘当した翌日だ。と言うことはザイス辺境伯の娘の息子が行なった事になり、辺境伯の人間が伯爵の領民に危害を加えた事になるが、どうするつもりだ?』
俺は辺境伯を見る。
「そんな証拠は捏造だーー!!そんな事が有り得るはずがないだろう!!」
俺の予想通りだったな。ロメロが勘当した時から辺境伯の間者やその関係者は全て辺境伯の元に戻った。そのせいで今回の事件を知らなかったんだろう。
「確かに事実確認が必要だな。時間がかかるが、調べない訳にはいかんだろう」
大臣はそう言って汗を拭いていた。
「それでは、今回の件は調査が済むまで、保留とする。」
『その必要はないぞ。王よ。証人を連れて来てるんだが、ここに呼んでいいか?』
「うむ、構わん。呼ぶと良い」
その言葉を聞いてジョイナフが騎士と一緒に後ろの扉を出ていった。
辺境伯よ、まだこれからだぞ!!




