4話 最初の街
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『良し、行こう。』
俺は扉の前でバックを取り、そのまま扉を通った。扉の外からの光で外の様子が分からなかったが、進んで行くうちに徐々に光が収まり、俺の目の前には街が見えてきた。
『・・・・・』
俺は声も出ず、ただ感動して震えた。
空気が、目から見える街並みが、そこで生活しているであろう多種多様な種族が何とも言えない感動を俺に与えてくれる。
『す、すげぇ!!』
街並みは少し昔のヨーロッパのような見た目で、レンガのような家や、木の家が
キレイに並び、色々な種族の話声や出店の呼び込み等、とても活気が溢れている。
しばらく立ち尽くした後、俺は街の中を歩いていく。出店からの良い匂いがするので、覗いてみる。
「いらっしゃいませー」
出店の大将が声を掛けてきた。
大将はクマのように大きく、熊のような耳や顔、ベアーの様な毛が生えている。
そう、くまだ。間違いなく、くま族だろう。そして言葉が理解出来る事も同時に分かった。
『大将、それ何の肉?』
俺は焼かれている串の肉が何なのか尋ねてみた。
「これはホーンラビットの肉だよ、少し獣臭がするが、タレで味を整えているから、美味いよ。」
くま大将はそう言って、串焼きを俺の前に出してきた。
俺は腹が空いていると感じたが、同時にお金を持っていない事を思い出し、もらったバックの中を探したら、硬貨が何枚かあった為
『大将、1本もらうよ。いくら?これで足りる?』
と、大きさの異なる硬貨の真ん中の大きさの銀色硬貨を出した。
「1本10ダリーだよ、それで足りるけどお釣りが多くなるなー、そうだその中にそれよりも少し小さい丸い銅色の硬貨はない?」
そう言われてバックの中を調べるとそれらしい硬貨があったので、大将に見せると
「そう、それだよ。ちょうど10ダリーだねー、毎度ありー」
俺は串焼きをもらい、お金について大将に教えてもらった。
小さな丸い銅色硬貨 = 1ダリー
丸い銅色硬貨 = 10ダリー
小判型の銅色硬貨 = 100ダリー
丸い銀色硬貨 = 1,000ダリー
小判型の銀色硬貨 = 10,000ダリー
丸い金色硬貨 = 100,000ダリー
となっているらしい、金貨の上にも
あるらしいが、ほとんど出回らないので、大将も見たことがないらしい。
『ありがとう、大将。あと、街の外は危険なの?』
「この辺りは、弱い魔物しか出ないからあまり危険はないよ。まぁ、子供や集団の魔物に会えば大人でも危ないけどね、冒険者ギルドに入れるような人なら、まず危険はないかなー。」
おおう、きたよ!きたー!!
冒険者ギルドはやっばりあったんだ。
これは行くしかない!うん。行くしかない。
『大将ありがとう。色々教えて貰えて助かったよ。お礼にもう一本買うよ。』
俺は10ダリーを渡し、冒険者ギルドの場所を教えてもらい、大将と別れた。
冒険者ギルドに向かう途中でお金を数えると、残り19,980ダリーだった。
串焼きの値段から考えると、多くもなく、少なくもないって感じかなー。
そう考えながら、教えてもらった場所に着いた。
『ここだな、冒険者ギルドは。』
俺は看板に冒険者ギルドと書かれた建物の前で呟いた。文字も普通に読める事が分かった。
俺は扉を開けて、奥のカウンターへと向かう。
扉を開けてから、周りの冒険者であろう者たちから値踏みされるように見られながらもカウンターにたどり着き
『冒険者の登録をしたいんですが。』
カウンターの中の女性に声をかけた。
「冒険者登録ですね、それではこちらに記入してください。問題なければ試験を受けて貰います。試験料は500ダリーです。」
俺は紙を貰い、カウンターを離れ、指定された場所で記入した。
名前を記入し、場所にはすでにファーストンと書かれていた。多分この街の事だろう、特技と書かれた所は、剣技と調合と書いておいた。
記入を終え、カウンターの女性の元に戻り、紙を渡した。
「記入ミスや間違いは特になさそうですね、それではこちらの玉に手を置いてください。」
そう言って女性はカウンターの下からバスケットボール位の大きさの水晶玉のようなものを出てきた。
俺は言われた通りに手を乗せて
「こちらの内容に嘘はありませんか?」
と、紙を俺に見せながら言った。
『はい、嘘はありません。』
そう答えると女性は水晶玉を見て
次の質問をしてきた。
「それでは、この国で定められた犯罪行為をした事はありますか?」
んー、この国での犯罪行為が何なのかは分からないが、自分の中では犯罪行為を行った事はないので
『いいえ、ありません。』
と答えた。
女性は再度水晶玉を見て
「はい、書類審査は合格です。
続いては、実技試験に移ります。
今からでよろしいですか?」
特に予定もない為
『はい、構いません、よろしくお願いします。』
「それでは私の後に着いてきてください」
と、女性はカウンターを出て、階段で下に向かったので、俺も着いていく。
下まで降りると、そこはグラウンドのような広場があり、数名が剣や槍などで修練を行っていた。
「えーっと、あっ!ダニーさん、試験を受ける方がいるので、お願いします」
女性は剣を振るっている男性に声をかけた。男性は修練を止め、こちらに歩いてきた。そして俺の前まで来て
「ダニーだ、武器は何を使う?」
『アラシです。武器は剣を使います。』
そう言うと、ダニーは階段の横にある場所に向かい、2本の木剣を持ってきて1本を俺に渡してきた。
「少し慣れるまで、時間をやる。
準備出来たら声を掛けてくれ。」
そう言ってダニーさんは木剣を馴染ませていた。
俺も木剣を持って振ってみた。剣技のおかげか、全く剣など触った事もなかったが、勢いよく振れていた。
これなら何とかいけそうだ。
『ダニーさん、いつでもやれます』
俺は声を掛け、試験を受けるのだった。
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