38話 セカンディア出発前日から当日
俺達はおっちゃん達の居た宿から出て、自分達も宿に戻ろうとした。
そこに
「アラシ殿!!」
領主が走って俺の元に向かってくる。
俺の前まできて
「あなたは何て事をしてくれたんだ」
そう言って俺の両手を両手で掴み
「ありがとう!本当にありがとう!!」
その横から俺達の手に両手を添えて次期領主も
「ありがとうございます。アラシ様」
そう言って親子2人は泣きながら感謝していた。
領主的には
・元バカ息子の悪事を止めてくれた事
・領民の武器屋の店主達の命を救った事
・犯人の暗殺者達を捕まえた事
・今まで発見出来なかった闇ギルドを発見した事
・闇ギルドの不正や罪の証拠を発見し、全員捕らえた事
・武器屋や被害者に対し慰謝料を回収した事
・闇ギルドの建物と土地の権利書を書き換え、渡してくれた事
おおう、そう言われると感謝されるのも分かるな。なかなかヤバいなコレ。
『いや、俺は自分が関わった事を解決しただけだ。しかもまだ終わってないだろう。明日からが本番だぞ。』
そう言って俺は領主親子の手を離し
『明日も朝早いんだ。今日はもう休んで明日に備えよう。俺達はまだ晩飯食ってないんだ。早く宿に帰って飯食って、風呂入って寝たい』
そう言って俺達は領主達に別れを告げて宿に戻った。かなり遅い時間に戻ったのだが、女将は嫌な顔ひとつせず、そのまま部屋に食事を持ってきてくれた。いつものように風呂のお湯も入れてくれる。
ありかたい。
「今日もベッドをくっ付けておきました!あまり夜更かししてはダメですよ。」
耳元で女将が言ってくる。
これが無ければ最高なのか?
これがあるから最高なのか?
この女将はそう思わせる魅力的な人だ。
俺達は食事を済ませ、順に風呂に入った。俺が最後に風呂を出ると皆がリビングにいた。
ルビィが
「今日も大変だったけど、良い事したね。武器屋の所からアラシのしてる事の意味が分からなかったけど、武器屋のおっちゃん達の宿でアラシの話を聞いた時になるほど!!って思ったもん。凄いなー、アラシは。またまた好きになっちゃったよー。」
俺は風呂上がりに飲んでいた酒を思いっきり吐いた
リンも
「本当にさすがはご主人様って思いました。途中私もこれは何故するのだろうと思いましたが、終わった後に考えると全てに意味があり、全てが最良の結果でした。私はもう完全に愛してます。」
あれ?俺いつの間に寝たんだろう。つねると痛い。夢じゃない。ハッ!?ドッキリか?ドッキリなのか??俺は周りを確認してカメラが無いか確認する。無いようだ。
「どうしたのー?アラシー??」
「どうしましたか?ご主人様??」
『いや、何でもない』
「でも本当に暗殺者の両足の太もも短剣で刺した時とか、口の中に短剣突っ込んだ時とか、どうしちゃのー?って正直思ったもん」
「はい、私もそう思いました」
「アラシと出会ってからドキドキとワクワクとハラハラの連続で、アラシと出会わなかったら絶対出来ない事が体験出来て、1日だけでも凄い事なのにそれが毎日起こって。もう私、アラシ無しじゃ生きられないよ。」
「はい、私もです」
え?あれ?俺明日死ぬの??
フラグなの?フラグ立っちゃたの??
そんな事より何か言わないと、何か言わないとー!!
『ああ、俺もお前達が大好きだ。
これからもずっと一緒だ。』
はい、やってもーた。
むしろ、やってやりましたわ!!
これがドッキリだったら死ぬパターン!
頼む、現実であってくれ。
俺は目を閉じ両手を組んで祈った。そして目をゆっくりと開け2人を見る。
ルビィは顔を真っ赤にしながら笑顔で上を向き、手でパタパタと顔に風を送っている。
リンは全身を真っ赤にしながら顔を下に向け、笑いながら目に溜まった涙を手で拭っていた。
勝った!!
俺は遂に人生の勝利者になったんだ。
ん?爆発しろ?
ハッハッハー!!
黙らっしゃい!!
ああー、俺の人生今から始まるんだー!
ボッチ諸先輩方、お先失礼しゃーす!!
『さて、明日も早いし、もう寝るぞ
また明日な、おやすみ』
おいぃぃー!!何へたってんだ!
ここはバラ色トーク膨らませる所だろーが!
ああ、やっぱり俺じゃダメだな。
あ、ボッチ諸先輩方!!今後ともよろしくお願いしゃーーーす!!
俺は心でローリングしていた。
そんなこんなで寝に行ったアラシだが、
そんな態度のアラシに胸をキュンキュンさせている2人がいる事をアラシは知らない。
翌朝、俺達は朝食を食べ、女将にお礼とこの街を出る挨拶をして、宿を出た。
当初は薬草を探して王都まで歩いて向かおうとしたが、領主の件があった為、領主と一緒に馬車で向かう事になった。
まぁ、薬草採取はいつでも出来るし、今回の領主の件の方が優先度は高い。俺達は街を歩いて貴族街に向かう途中、朝市が開いていた為、そこで野菜や果物、串焼き等適当に買って貴族街の前まで到着。兵士に領主のメダルを見せ、馬車で領主館に向かう。
領主館に到着すると既に数台の馬車と兵士30人程が準備をしていた。
俺達は馬車を降りると、兵士達が手を止めて敬礼してくる。昨日の1件で更に俺達への信用が厚くなった様だ。俺達は手を挙げおはようと挨拶していると、いつもよりもっと正装しているザ・貴族!っていった装いの領主が手を出しながら
「アラシ殿、おはよう。良くれた。感謝する。昨日の件も改めて感謝するよ。」
何かフランクな喋りになったな。俺に合わせてくれたのか。ありがたい。
『ああ、おはよう、領主。今日からしばらくの間、よろしく頼む』
そう言って俺は領主の手を握り挨拶をかわした。
その後息子のデキスーギナとも挨拶を交わした。
領主に聞くとすぐ準備が整うので、馬車の中で待っていて欲しいと言われたので、馬車に乗り込む。すると馬車の中は見た目より5倍は広く、中には既に執事とメイドが2名待機していた。執事とメイドに挨拶を交わし、ソファーに座って待っている間、一緒に入った次期領主デキスーギナと話をした。
デキスーギナはロメロ家の次男で
元バカ息子の腹違いの弟らしい。
母親はこの街の近くに領地をもつ子爵の娘だそうだ。
少し話してやはり納得したのは、この子は聡明で素直な子だ。しかも貴族社会のマナーや領地経営等しっかりとした判断が出来ると感じた。歳は今の俺より少し上か同じ位だろう。この子が次期領主ならここも安泰だなと再度認識する。
馬車に領主が乗り込んできて、
「これより出発する。しばらくは戻って来れないが、忘れ物ややり残した事は無いな?
それではまず冒険者ギルドに向かい、依頼した冒険者と合流する。」
そう言うと一緒に馬車に乗ってきた装備が格段に良い騎士が領主の言葉を聞いた後に颯爽と馬車を出て、大声で冒険者ギルドに向け出発と言った。
オウ!!と多分兵士全員が答えた後、ゆっくりと馬車が動いた。領主は俺の向かいのソファーの息子の隣に座り、騎士風の男はソファーの横で待機する。メイドが紅茶を領主に入れた所で領主が口を開く。
「アラシ殿、お待たせした。所で1つお願いがあるのだが・・・」
「なんだ?領主。」
「そう、それだ。私達は友人になったはずだ!それなのにだ。アラシ殿は私の事を領主と呼ぶ。キマージメもしくはロメロと呼んで貰えないか?私もこれからはラフに話したい。」
『ああ、そうだな。それではロメロと呼ぶ事にしよう。』
「おおー!ありがとう、アラシ。これで俺も気を使わず話す事が出来る。ただ、公の場ではロメロ伯爵と呼んでくれ。公と言っても王や公爵等、俺と同じ爵位以上がいる場合だけで構わない。」
『なるほど。分かった。それでそちらの騎士は?』
「ああ、初めてだったかな。コイツは俺の信用する部下でジョイナフと言う。俺の騎士で軍団長だ。ジョイナフ挨拶を。」
「アラシ様、お会いできて光栄です。お噂を良く耳にしておりました。私はロメロ伯爵の騎士ジョイナフと申します。軍団長と務めております。どうぞよろしくお願いします」
騎士は敬礼しながら自己紹介してくれた。
俺は立ち上がり
『俺は冒険者をしているアラシだ。こちらこそよろしく頼む。』
そう言って握手を交わす。その際に鑑定
ほう、強さ的にはこの街のギルドマスターのロンドと同じ位か。なかなか強いな。
『ちなみに噂はどんなものなんだ?』
どうせ四冠達成したとかの話だろうと思っていると
「中級ダンジョン最短攻略記録の大幅な更新。ギルドランクのB・A・Sの昇格最短記録。それに昨晩の見事な手腕。兵士からも賞賛の嵐でしたよ。そんな方と今回王都まで一緒に向かえるのは、貴重で光栄な事です。」
うわー、またエラい事になっとるなー。!
攻略最短とか、昇格最短とか知らんかった。まぁ、攻略最短はルビィの為だし、良いんだけどね。
俺は秘技・苦笑いを繰り出しながら、馬車は冒険者ギルドに到着した。




