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35話 セカンディア出発前日①

俺はある依頼書に目が止まった。


・王都までの護衛任務

ランク : Bランク

達成内容 : 要人の王都の目的地到着

報酬 : Cランク 5,000ダリー

(ランクが1つ上がる毎に追加で2.000ダリー、ランクが1つ下がる毎に減少2,000ダリー。Cランクチーム以上でその中の個人毎に支払い・Eランク以下参加不可)


期間 : 明日朝出発。王都目的地到着まで

最低3日以上


備考 : 馬車にて移動

宿代、食事代は依頼者支払い

(野営の場合は食事のみ依頼者提供)

食事は朝・昼・夜 依頼者より提供


定員 : 10名前後




護衛依頼か。

「ええー、何この破格の好条件!?」


『そうなのか?』


「そうだよ!普通は食事なんて出ないし、宿も自費の場合だってあるんだよ。しかも報酬もかなり良いし。前のチームなら確実のうけてるよー!」


そうなのか、なるほど。覚えておこう。


「なあ、その依頼貰っていいかい?アームブレーカーさんよ」


声の報告を見ると冒険者のチームだろうか、そのリーダー風の男が声を掛けてきた。確か宴会の時に見た事あるような?


『ああ、別に構わないぞ』

多分俺が見てるから、気を使ったのだろう。普段であれば早い者勝ち。依頼書を取った者勝ちなのだ。


「おおー、すまねえ!感謝するぜ、アームブレーカーさん!」

そう言ってリーダー風の男は依頼書を取り、俺にお礼を言って受付に向かう。

チームの奴らも俺にお礼を言ってリーダー風の男に続いた。


俺は少し気になり、ギルドの受付で護衛の依頼について聞いた。依頼者が誰なのか?それについては答えられない。依頼を受けた者も当日までは分からないそうだ。当然ギルドは知っているのだが。


俺は受付でこの街の登録解除を行った。もう今日は依頼も受けないし、明日にはこの街を出るので、いいたろう。


俺は何故かは分からないのだが、あの依頼の事がどうしても気になっていた。この世界に来てから第六感というのか、とても感じるようになっていた。もしかしたらまだ分からないスキルによるものなのかも知れない。


俺はある推測により、貴族街へ訪れた。兵士に領主の伯爵から貰ったメダルを見せる。

するとすぐに敬礼して、領主館に行くなら馬車で送っていくと言われたが、約束がある訳でもないので、その申し出を断り歩いていく。


領主館の前門の前で兵士にメダルを見せ、門を通る。その際1人の兵士が走って館に向かって行った。俺達が館の前に着く頃には、執事が扉の前で待っていてくれた。


「これはアラシ様、ようこそお越しくださいました。それではどうぞこちらにお進みください。」


執事はそう言って俺達を先導してくれた。

約束も無いし、要件も言ってないのにこの対応。メダルの効果が凄いのか?それとも領主の伯爵が凄いのか。多分両方だろう。俺は執事の振る舞いに伯爵の凄さを知った。

知ったが、それなら更にあのバカ息子が出来上がってしまったのか。そこに疑問を感じた。


俺達は応接室に通され、メイドが紅茶と茶菓子を運んでくれる。


「アラシ様、それではご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


『ああ、少し気になる事があって、領主に話を聞きに来たんだが、会う事は出来るだろうか?』


「かしこまりました。領主は今こちらに向かっております。少しの間お待ちください」


そう言って執事は部屋を出て行った。

その後しばらくして領主ともう1人が部屋に入ってきた。もう1人の男は若く、とても聡明そうに見える。服もしっかりと着こなし、姿勢も良いし、何よりその笑顔とその雰囲気がとても柔らかい。


「ようこそ、来てくれました。ちょうど私もアラシ殿にお会いしたかったので」


そう言って領主は隣にいる青年を見て

「私の息子のデキスーギナです。」


「初めましてアラシ様、この度次期領主に任命されました、デキスーギナ=ロメロです。」


そう言ってデキスーギナは俺に手を出してきた。俺はその手を握りながら

『ああ、初めまして。俺はアラシ。冒険者をしている。』


お互いに挨拶し、その後ルビィとリンも挨拶を交わした。


「それでアラシ殿、今回はどのような要件で来られたのですかな?」


『ああ、実はギルドで要人の王都への護衛依頼を見つけたんだ。それに領主が関わっている気がしてな。直接確認しに来たんだ。』


俺がそう言うと領主と息子はお互いに顔を見合わせ少し驚いた様子を見せた。

「ええ、アラシ殿には伝えないでおこうと思っていたんですが、その依頼を出したのは私です。」


『やはり、な。』


「ええ、あのバカ息子・・・いえ、元バカ息子を勘当した事と、このデキスーギナを次期領主に任命した事を王に報告する為に王都に明日向かいます。」


『なるほどな、しかし何故あそこまで良い条件の依頼を出したんだ?』


「アラシ殿、あなたは一体・・・いえ、すみません。ただ王都に行くだけならば我が兵の連れて行くだけで問題ないでしょう。

しかし・・・」


領主は少し時間をおいて再び話し出す

「あの元バカ息子の母親が実は辺境伯の娘で元息子を勘当した日に私を思いっきり罵った後に出ていきました。その去り際に父に言って潰してやると言い残しました」


『ほう、そんな事が可能なのか?』


「いえ、普通に考えれば有り得ません。

しかし有り得るかも知れないという心当たりがあります。」


『何となく分かる気がするが・・・』


「ええ、実は辺境伯は娘を溺愛してまして

更にその孫、しかも初孫が元バカ息子でして、もうその溺愛は目を見張るものがありました。そしてもう1つは辺境伯は代々、武によってその地位を守ってきました。今の領主も武に長けており、辺境伯とその兵はこの大陸一の猛者で武闘派です。そして以前貴族、男爵位でしたが辺境伯の別の娘に手を出した時に、その男爵領に乗り込み、男爵とその父親を捕え首を切り落としました。」



『おいおい、そんな事をしたら戦争じゃないか。王が黙っていないだろ?』


「辺境伯の恐ろしい所はそこなんです。実は辺境伯には恐ろしく頭の切れる軍師が居まして、その者が先に王に話を通し、もしそれが許されるなら、辺境伯全ては今の領地を放棄すると言ったんです。辺境伯の領地は隣の大陸、魔物族との国境があり、そこでずっとこの国を守ってきました。あの領地を守れるのは辺境伯以外にはあり得ません。王はとても困りましたが、そこで軍師は更にその男爵とその父が長年王都に支払う税の不正した証拠を提出しました。王は激怒し、辺境伯に男爵とその父の討伐を命じました」


『ま、マジか・・・』


「結果、辺境伯は王命を持って討伐する事になったのです。軍師はまず王を困らせ、それから怒らせ、正常な判断出来ない状態で決断を迫り、見事要求を飲ませたのです。王は以前その事を、とても悔やんでいました。間違った判断をした。普通に考えれば財産没収の爵位取り消し、殺す事はなかったと。それから辺境伯は貴族の間で知と武を兼ね備えた恐ろしい存在と認識されています。」


『そうか、それであのバカ息子があそこまで手に負えない状態になったのか』


「ええ、全ては私の責任なんですが、その事もあり、強く言えずに時間だけが過ぎていき、調子に乗った元息子はエスカレートしていきました。このまま領主にしては、この街が終わってしまうと感じ、何とかしようと考えていた時にアラシ殿が現れました。そこで私も踏ん切りがつき、勘当しました。家を出る際に大金と財宝を盗んで行きましたが」


『なるほどな、そういう事だったのか』


「ええ、なので今回は急いで王に勘当の件と任命の件を報告し、辺境伯を抑えてもらえるようにお願いする予定です、ただ万が一にもこの街に辺境伯が来る可能性があるので、少しでも兵力をこの街の為に残しておきたいと。そこで依頼をギルドに出しました。ギルドには万が一にも辺境伯が攻めて来た場合の緊急依頼として、この街の防衛も依頼してますが・・・。基本余程の理由が無い限り自国の貴族同士の戦争に手を貸す事がは無いので、ギルドマスターに最終判断を委ねていますが」


なるほどな、こんなに厄介事になっているとはな。


『そう言えば会った時に領主も俺に用があるような事を言っていたが何だ?あと何故王都に行く事を伝えなかったんだ?』


「用件は大した事ではありません。しばらく私がこの街に居ない事を伝えておこうと思いまして。行く事を伝えなかった理由はバカ元息子の件に関わらせてしまった上に、この件を知ってアラシ殿に無用な責任を感じて欲しくなかったからです。全ては私の責任ですから」


やはり俺の第六感は間違って無かった。

あのバカ息子から絡んで来たとはいえ、俺もしっかりと関わっている。これでこの街が戦争に巻き込まれたら、俺は間違いなく責任を感じるだろう。


何故なら俺はこの街が好きだからだ。

俺に適わないと思わせたギルドマスターや気の良いこの街の冒険者達、高級宿の女将、この領主と執事やメイド。しっかりと知り合ってしまった。ならやる事は1つだ。


『なぁ、領主。俺も王都について行こう。護衛は多い方が良いだろう。報酬はこの前貰ったメダルで良い。ちょうど俺達も明日この街を出る予定だったんだ。まぁ、その事を伝える予定でもあったんだが。俺もこの街が好きだ。その街を守り、支えてきた領主に居なくなられては困るからな』


「ふぅ、やはりあなたという人は・・・

分かりました、お言葉に甘えます。しかし護衛では無く、私の友人として一緒に馬車に乗って行きましょう。」


そう言って領主は手を出した。

俺はしっかりと領主の手を握って


『分かった。友人としてしっかり護衛してやるよ』


俺達は笑いあったのだった。




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