2話 ジン
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『転移させてくれ』
「良し、分かった。これより転移する」
ミカが頷きつつ、両手で印を組んだ。
その瞬間俺の立っている場所が光輝き、見たことも無い文字が円形の中をグルグルと回転していた。
『うおっ!? おおー!』
何か綺麗で思わず感嘆した。
「アラシ」
俺を呼ぶ声に顔を向けるとジンが
「試練も大事だが、新しいお前の人生だ、楽しんでこい。」
『おう!分かった!ジン、またな!』
「おう!アラシ、またな。」
その瞬間、俺の視界が歪んだ。
「ふっ、またな。とはな。ふふっ」
ジンは思い出し、笑った。
その時ドサッと音が聞こえたので、ジンはその方向を見ると、ミカが片膝をついて震えていた。そして
「申し訳ございません、不覚にも膝をついてしまいました。」
「ミカ、さすがのお前でもこの環境は少し厳しいようだな。」
「ジン様、この重量状態では立っているのもかなり厳しいものがあります。しかしあの者は平然としておりました。何故でしょうか?」
ミカは少し息が荒くなりながらも、しっかりとした口調で不思議に思った事を口にした。
「ミカよ、それがアラシがこの場所に、そしてこの俺の前に現れた理由であり、答えなんだよ。それとミカ、そろそろ行かなくてはならんのではないか?ここの時間が限りなくゼロに近いとはいえ、アラシが最後の1人だろ?」
そう言ったジンは、ミカに背を向け、腕を組み、ゆっくりと目を閉じた。
「ハッ、それではジン様、私はこれで失礼いたします」
その瞬間、ミカは印を結んで転移陣が現れ、そして消えていった。
「・・・アラシよ、死ぬなよ。」
静かにジンが呟いた。
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