18話 セカンディアのギルドマスター
俺達はギルドの2階にある応接室に通された。ギルドマスターのロンドは受付の女性を連れて来るように部下に指示を出していた。
「さて、皆さん、厄介事に巻き込んでしまい申し訳ありませんでした。改めてここのギルドマスターをしておりますロンドです。」
『俺はアラシだ、冒険者をしていたが今回除名になった。このギルドカードはもう要らないな』
俺はギルドカードをテーブルの上に置き、カードを手でマスターの方へ送った。
「やはり上級冒険者でしたか、カードの返却を必要ありません。その件も含めて今から話をさせてください。」
その時扉をノックする音が聞こえてマスターは中に入るように言った。
「失礼します」
そう言って入ってきたのは俺に絡んで来た受付の女性だ。
俺の顔を見て
「マスター!!何をしているんですか!?早くその犯罪者を捕まえてください!!」
おいおい、いきなり犯罪者呼ばわりか、コノヤロウ!!野郎では無いが、この際どうでもいい。1発ぶん殴ってやる!
「黙りなさい。あなたは自分が何をしたか分かっているんですか?」
受付の女性はビクッとした後に口を開き
「私は犯罪を止めようとしたんです。なのにこの男はやめなかった。なので冒険者の皆さんに止めてもらおうとお願いしました。その後にマスターに報告しました。私は完璧な仕事をしました。褒められる事はあっても、怒られる意味が分かりません!!」
「本当に分からないのですか?」
マスターは再度確認していた。
受付の女性はかなり腹が立っているのか俺の方を見て睨んでいる。
「ふう、仕方ありませんね。
まず第1に何故キッコリさんが絡んでいたのを見逃したんですか?武器で攻撃する時も何故見逃したんですか?」
「そ、それは新人が来ると色々と面倒ですし、業務が増えるんですよ、なのでキッコリさんはいつも新人に絡んでいるので今回も良いかなーって。武器で攻撃しても怪我で済むだろう、たとえ死んだとしても新人なら良いかなーって。」
え?何こいつ?マジで言ってんの??
隣にいるルビィが殴りかかろうとしているのをマスターが制していた。全て済むまで耐えて欲しいと。俺もマスターにとりあえず従う。
「それでは第2に何故こちらの冒険者の方だけを止めようとしたのでしょう。」
「それはキッコリさんはもうすぐ中級冒険者になる人ですよ?そんな優秀な方がこんな訳の分からない新人に殺されたらギルドの損失です。お酒を飲んでフラフラのキッコリさんを殴るなんて最低です。」
んー、ここまで来ると逆にすげーわ、怒りを通り越して呆れてきた。
「それでは第3に何故緊急依頼を出したのですか?」
「だから言ってるじゃないですか!!マスターはバカなんですか!?優秀なキッコリさんが殺されそうになってるんですよ??止める為に冒険者に依頼するのは当たり前じゃないですか!?」
「まず第1の件は職務放棄ですね、減給処分です、第2にこちらのアラシさんは上級冒険者ですよ?冒険者のランクで態度を変えるのはどうかと思いますが、あなたの考え方で言えばアラシさんの方が大切なのでは?まぁ、あなたに見る目があるとは思えないので、しょうがありませんが。あと第3に緊急依頼はギルドマスター又はそれに準ずる者の承認が必要です、当然マスターである私がいたのです。私は何も聞いていません。これは立派な犯罪行為となります。ギルドでもこの事は最重要で伝えてあるはずなんですがね。」
それを聞いた女性は唇を噛んで悔しそうにマスターを睨んでいた。
「それではあなたへの処分を言い渡します。まずアラシさんに慰謝料として、10万ダリーを支払ってください。と言ってもそんなお金は無いと思いますので、ギルドが立て替えて上げましょう。退職金は貰えないと思ってくださいね。他の冒険者にも迷惑をかけたようですので、そちらは今日の飲食代を全てあなたの負担で。あと緊急依頼の件は本来犯罪なのですが、アラシさんの慰謝料があるので、このまま働いて返してください。」
受付の女性はそれを聞いて、慰謝料の所で驚愕し、退職金の所で落ち込み、飲み代の所で苛立ちら犯罪の所で少し安堵していた。
「なので、あなたは明日より上級ダンジョンのある孤島にギルド職員として向かってもらいます。」
その瞬間、受付の女性は青ざめ
「あ、あそこは上級冒険者でも命を落としかねない場所じゃないですか!!そんな所に行ったら直ぐに死んでしまいます!」
「頑張ってください、それに必要であれば冒険者を雇えば良いじゃないですか?冒険者を見る目があるようですし。ちなみにもし逃げたら犯罪者として、指名手配しますので。」
その瞬間、女性は崩れ落ちた。
マスターは他の職員を呼んで女性を連れていかせた。
「お見苦しい所を見せて申し訳ありません。これで今回の件はお許しください。」
マスターは部下に声をかけ、袋を受け取った。
袋から取り出したのは金貨だった。
「こちらは慰謝料の10万ダリーです。」
そう言って金貨を渡してきた。
それを俺は受け取り
『キッコリの件だが、今更俺が言うのも変だが、許してやってくれないか?もともと少ししつけしてやろうと思っただけなんだがな。あんな大事になるとは思っていなかった。その点に関しては俺も悪かった。申し訳ない。』
ギルドマスターはニッコリと笑い
「分かりました、やはりあなたは私の見込んだ通りの方でしたね。それではキッコリには慰謝料として、3万ダリーを払わせましょう。他の冒険者が同じ過ちをしないように、しっかりと払わせますよ。こちらもギルドが立て替えておきます。」
そう言ってマスターは先程と同じ様に職員に指示を出しお金を俺に渡した。
俺はそれを受け取って
『なぁ、マスター。見込んだ通りってどういう事なんだ?』
俺は不思議に思った事を口にした
「ええ、理由は2つあります。
1つはファーストンのギルドから素晴らしい冒険者がこちらに来るのでよろしく頼むと連絡があったんですよ。サブマスターのダニーとニキータからですね。」
おおう、そうだったのか、ってダニーさんはサブマスターだったのか!試験の時も試合の時も、いつもギルドにいるなーって思っていたがそうだったのか。
「2つ目にキッコリを本当に殺そうとしていたら最初の一撃で殺せたでしょ?私ならそうします」
確かにそうなんだが・・・
やっぱりマスターも上級冒険者なんだな。不安を残さない、殺れる時に殺るのが、上級冒険者だ。
「3つ目ですが・・・」
『2つじゃないのかよ!?』
「ふふっ、まぁ、良いじゃないですか。
3つ目はあなた達の目です。素晴らしく澄んだ目をしています。冒険者にはそうそう居ませんよ。」
『あ、ああ。ありがとう』
「話は変わりますが、あの受付の職員は実は前から悪い噂がありまして、その証拠が集まって、明日尋問する予定だったんですが、まさか今日こんな事が起こるとは・・・まぁ、都合が良かったので利用させて貰いましたが・・・」
またしてもマスターはニヤリと笑った。ハッキリいって、嫌味もなく清々しい笑顔だ。この人には敵わないな。俺はそう感じた。
「それではせっかくですので、下で食事をしながらお酒でも飲みましょう。タダ程美味い酒はないですから」
そう言ってマスターは立ち上がり下へと向かう。
俺達もマスターに続く
マスターは下のホールに着くと大声で
「皆さん、聞いてください!!
今回の件ですが、こちらのBランク上級冒険者のアラシさんは、最初の一撃でキッコリさんを殺せていたでしょう。本来先には手を出したのはキッコリさんです。殺されても文句を言えません。
ギルドとしても犯罪奴隷に落とすしかないと結論しました。
しかしアラシさんはキッコリさんを許してやって欲しいと、大切な冒険者仲間をこんな所で失いたくないと。
なので今回は罰金処分のみとしました。
皆さんも今後気をつけてください。
それと緊急依頼で皆さんに迷惑をお掛けしました。申し訳ありませんでした。
アラシさんからギルドから今日の飲み代を出してはどうかと提案がありました。ギルドとしてこの提案を採用しました。ですので皆さん!!今日はどんちゃん騒ぎをしましょう!!」
うおおおぉぉぉーーー!!!!
全員が大声を出し喜んだ。その瞬間ギルドが揺れた。
「アラシー!!ありがとうー」
「上級冒険者、バンザーーイ!!」
「今日は飲むぞーー!!」
「キッコリ、良かったなー!!」
冒険者達は俺に感謝しているみたいだ
マスターは俺の方を向いてまたまたニッコリと笑った。
やっぱりこの人には敵いそうもない。
マスターと俺達は冒険者達の輪に呑み込まれた。




