裏
*
君に殺された夢を見た。
私の貧相な胸に向かって、何度も包丁が振り下ろされた。
返り血が君の眼に飛んでいって、私の一部が混じったのを感じた。
それがたまらなく嬉しくて、痛みも快感に変わっていった。
君は私に包まれた。
*
君に殺された夢を見た。
私の青白い首筋に、ロープを思いきり巻きつけられた。
君の温かさを感じたくて、密着し身体を全て預けた。
抱擁の力が強くなって、緊張で鼓動が速くなった。
消えない痕を刻んでもらえた。
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君に殺された夢を見た。
目の前で毒を入れられて、せっかくなので飲み干した。
やっぱり君の珈琲は美味しい、それに愛も込めてくれた。
二杯目はより多くの愛をくれたが、残念ながら飲み切れなかった。
君がプレゼントしてくれた、兎の装飾のグラスが割れた。
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君に殺された夢を見た。
君でいっぱいの頭に向かって、重い金槌を叩きつけられた。
そのままうつ伏せに倒れたので、残念だが君に振り向けなかった。
それがどうにも寂しくて、今まで初めて辛かった。
心が砕ける音がした。
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君に殺された夢を見た。
出会い頭にガソリンをかけられ、火炎瓶を投げられた。
服が燃えるのが気恥ずかしくて、君に見ないでと言ってしまった。
返事は火炎瓶で返された。
少し顔を合わせるのが恥ずかしくなった。
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君に殺された夢を見た。
星を見ようと呼び出され、崖の上から突き落とされた。
君に死に様を見てもらえない。
私を見て。
*
現実で君と会ったとき。
君は少し気まずそうだった。
それがどうにも可愛らしくて、そんな君も好きだった。
次はどうやって愛してくれる?