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ツチノコ探し キマイラ舞

 大分投稿スペースを遅らせて申し訳ございませんでした。


 

 ①ツチノコ探し

 

 ゼクスローゼという男を筆頭に、冒険者複数人がツチノコという伝説上の生き物を捕獲する依頼クエストを冒険者ギルドで受けていた。

 ツチノコの特徴はというと、胴は太っており、全長が短い蛇型の生き物。

 エルフや狩人が、林道または獣道でそのような生き物を見かけたという目撃情報が、各方面から出てきている。

 しかしツチノコという生き物は素早く移動し、高く跳躍できるせいなのか、今まで誰一人として捕まえきれてない。


 「しっかし、本当にそんなヘンテコな生き物が存在するんだろうかね・・・・・・デマなんじゃないのか?」

 落ちている枝や葉を踏みしめながら彼は呟く。

 愚痴っていた。

 今、彼は街から少し離れた森の中を歩いている。

 ツチノコの目撃例が多発している場所なのだ。


 「それにしても依頼主も依頼主だ・・・・・・どこのもの好きの資産家か蛇愛好家かは知らんが、太った蛇飼って何の得になるってんだ・・・・・・報酬が悪かったらこんなスリルもない依頼クエスト丸無視するところだぞ・・・・・・」


 ゼクスローゼが忌々しそうに長々とこぼす愚痴に、彼と同じ冒険者の一人が癇に障り声を荒げた。

 

 「もうさっきからうるさいのよ。黙って探索もできないのかしら!?

 第一貴方茂みの中や奥、岩の陰まで隈なく探しているの? ぶらぶら歩いているだけじゃ、さぼってるようにしか見えないのよこっちは!」


 「うるせぇのはどっちだよ。茂みや穴倉に頭を突っこむなんて霊長類人間様のやることじゃあない・・・・・・ああ済まない、下半身が蛇畜生で出来ているテッサリアさんには、理解しづらい感性の話をしてしまったね」


 「・・・・・・蛇体で締め付けられるのとコブラツイストで極められるの、あんたはどっちがお好みかしら?」


 ゼクスローゼと毛皮製のビキニアーマーを着用しているテッサリアはまさに一触即発の状態でそれぞれ呻きながら睨み合っている。

 そこに、


 「はいはい喧嘩するのはやめにしましょうよ。ここ最近この森地帯に、頻繁に軽めの地響きが起きているの。危険なんですよ。

 うだうだ下らないことで争ってこの場に留まれば、地震で倒れた木の幹に押しつぶされるか、土砂崩れに巻き込まれるかもしれないわよ・・・・・・」

 数回拍手しながら仲裁する仮面を被った冒険者が、二人の元に歩み寄る。


 「は~い、わかったわよ」

 髪の毛を掻きむしりながら仲裁した仲間に答えるテッサリア。


 「へいへい。ところであんたの方は、何か手掛かりとか掴めたのか?

 地面に太った蛇らしきものが這いずったあととか」


 「残念ながら何も・・・・・・」


 ゼクスローゼは、肩をすくめて挑発するように言葉を吐き出す。

 「おいおい困ったもんだぜクリュサエルさんよ。君のその頭から生やしてある無数の蠢く蛇の目やピット器官は飾りか? 使つっかえねぇな~」


 「・・・・・・貴方はご存じかもしれませんけど、私の身に着けている仮面は、私の強力な能力を封じるためのものですが、別段外せないわけではないのですよ?

 ためしに今から石像の気分でも味わっては如何か・・・・・・」


 「ちょっとあれ見てあれっ!!」


 自身の仮面に触れているクリュサエルの言葉を遮るように、テッサリアが慌ててまくし立てた。

 彼女は東の方に指している。


 二人も面倒くさそうに彼女の言葉通り指の示す先に視線を向けた。

 

 そこには、


 蛇がいた。

 

 高さがそびえ立つ山脈の頂きよりも数倍くらいもあり、国どころか大陸でさえも全然収まり切れないほどの全長を持ち、ただそこにいるだけで強固な地盤に沈むほどの重さを有する蛇が。


 軽く這いずっただけで地響きと土煙を起こす程の重量を持つ蛇一匹から少しでも遠く離れるため、首元から大量の蛇を生やしている三つ頭の猛犬ケルベロスや、馬の後ろ脚を生やした蛇の怪物や、鳩の翼を背中に生やしているアナコンダ等の大多数のモンスターが慌てるよう逃げ惑っていた。


 「ああヨルムンガンドかよ。

 そういや噂でここら辺に寄っているって話耳にしたことあるぜ」


 「ヨルムンガンド・・・・・・。

 世界そのものをぐるりとその体で巻き付けれる程の長さを持ち、何かの予言で雷神を毒殺するであろうあの化け物!?」

 

 「立ち話している場合?

 こちらもさっさと逃げないと、例の化け物に這い潰されるでしょうね?」


 クリュサエルの言葉を合図に、三人はこの場から急いで離れた。


 「依頼クエストはまた別の機会にしましょう」


 「依頼クエスト・・・・・・ねぇ・・・・・・」

 

 ゼクスローゼは何気なく呟く。

 「ツチノコ・・・・・・そんな伝説上の生き物が本当に存在するのか?」





 ②キマイラ舞


 『キマイラ』というライオンとヤギと蛇を合成した魔獣、それをモチーフにしている布付き被り物をとある二人が身に着け、街の中心にある噴水広場で踊っていた。

 木製のライオンとヤギの頭部にそれぞれ一人ずつ被り、片膝を曲げたり、頭部の口を小刻みに開閉したりしている。


 それを父と子二人が近くで眺めていた。


 腕を組んでいる父が、自分の子どもにキマイラ舞について説明する。

 「坊や、あれはキマイラ舞というものだよ」


 「へ~あれがキマイラ舞かぁ。ボク初めて見るな~」


 もちろん親子の会話は今現在踊っているキマイラ役の二人の耳にも届いていた。


 「坊や、キマイラというのはこの国に住む私たちにとって神聖な動物なんだよ?

 その動物を真似することによって、この国にある災厄を祓うことができるんだ」


 「それはすごい! ボク憧れちゃうな~」


 子供の驚愕を聞いたライオン役の人は、褒められて喜んだのか見せつけるように激しく踊った。

 ヤギ役の人はいきなり相方が荒ぶることに一旦は驚いたが、何とかついてきている。


 「父さん、キマイラについてもっと教えてよ!」


 「いいだろう坊やよ、キマイラ舞は踊ることによって五穀豊穣祈願・・・・・・つまり野菜や麦がたくさん収穫できるよう神様に祈っているのを表しているのだよ」


 「わぁい、ボクじゃがいも好きだからキマイラもっと好きになったよ」


 「それにね坊や、キマイラ舞を踊る効果はそれだけじゃないよ。

 悪魔祓いの効果も持つんだ」


 親の言葉を合図に、ライオン役の動きが固まるよう止まった。

 ヤギの頭が慌てるよう左右に揺れる。


 子どもが元気よく早口にしゃべる。

 「わぁそれはとっても素敵だな。

 だって畜生や糞餓鬼にもはるかに劣り蛆虫みたい・・・・・・いや比べたら蛆虫さんに失礼か、泥水や下水よりも薄汚く、吐き気を催すような視界の端にも入れたくない屑・カス・下衆を具現化したような生きてる価値がない救いようのないどうしようもない最下層の存在である気色悪い悪魔をキマイラさんは一匹残らず駆除するんだよね?

 かっこいい!!」


 自分の子どもの長々とした侮蔑に、ドン引きするよう親は乾いた笑いを少し出した。


 ちなみに親子の会話を聞いたキマイラ舞側はというと。


 ライオン役の人は荒馬のように常軌を逸するよう暴れ、親子の方に向けて何度も何度も虚空を噛みつくようにライオン顔の口を開閉した。

 ヤギ役はというと、まるで隣の人を羽交い絞めするかのよう奇妙に慌てて動いている。


 「あれ? 父さん、なんかキマイラさん変だよ?」


 「そうだね。きっと何か嫌な事があったんだろうね・・・・・・行こうか、坊やよ」

 

 親子は手をつなぎ、噴水広場から去っていった。



 数分後。


 広場の一つのベンチに二人が座っていた。


 「なあもう泣き止めよ・・・・・・気にすることないよ」

 脇に木製のヤギ頭を抱えた人が、相方の背中をさすってなだめている。


 「だって、だって、あのガキ我のことをあんなボロクソに吐き捨てやがった!

 泣かずにはいられるか!! 一体我が何をしたというのだ!?」

 背中からコウモリの翼を生やしている男が、泣きじゃくっていた。

 彼の膝の上には、木製のライオンの頭部があった。


 

※ちなみに親子が、キマイラ舞のライオン役の人に生えてあったコウモリの翼に気づかなかったのは、お面と縫合されている布が足元以外の体を包んで隠したからです。

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