七.中毒
二〇十九年の某日、中国で、腹痛を訴えて病院に飛び込んできた患者がいた。少女で、十四歳である。
何処にでもいそうな可愛らしい女子。だがその幼い顔も苦痛で歪められ、連れ添った母親や症状を訊ねる医者は、難儀な顔をしていた。
原因が話だけでは分からないので、胃や腸などの内容物を確かめてみる事にした。すると食道から肛門まで、百個以上のある食物が発見されたという。タピオカである。
人気は絶大だが、やり過ぎ、食べ過ぎは破身する。何事も程々に、と注意喚起である。
さてA病院では。類似の事件が起こった。
検査で明らかになったのは、タピオカではない。お分かりであろう、長いアレ、である。かみ砕かれてはいたが、完全に消化ができていない。今にも口から出そうなお菓子は、日本中に浸透している。
「もっと欲しい……」
病みつきになる。伸ばす手が止められない、腹が満たされない、どうしよう……。
頭がおかしい、正常ではなくなっている。誰か止めて、食べても食べても……。
やがて少女は回復してはきたが、少女だけの事ではなかった。
A病院の待合室の壁には、「依存に気をつけよう」と書いたポスターが貼ってあった。
以上。