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二.無人のエレベーター
A病院がまだ廃業になる前、こんな事が頻繁に起こっていた。
廊下の突き当たりにエレベーターがあり、大人が十名くらいなら入れる広さであった。主に一般用で誰でも使用でき、定期的に点検も行っているので壊れているはずがない。しかし防犯用のカメラで確認すると、どうもエレベーターは不可思議な動きをしているという。
上は十階、下は一階までのエレベーターである。
一階から上へ動き出したエレベーターは、八階へ行くはずが、途中に四階で停まり開く。しかし誰もその階には居なかった、無人である。
扉が閉じて今度こそ八階に行くはずが、何故か十階ボタンが押されていて、八階に着き、扉が開く。そして静かに扉は閉じて、上へ――。
エレベーターには最初から、人は乗っていない。
故障でもない。
あったのは、床に落ちている、袋に入った棒のお菓子である。
終。