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蛹~サナギ~

この作品は「Crime&Penalty」(現在、執筆中)に登場する双子の姉妹「揚羽蝶」をメインキャラとしたサブストーリーです。


かなりダークな設定ですが、本編はここまでするつもりはありません。(というより、この2人が特殊なので・・・)

揚羽蝶となる双子姉妹の年齢は12歳程度です。

暴力描写等ありますがお暇な時に読んでいただけましたら幸いです。


なお、本編の投稿日は現在未定。

こちらのサブストーリーは少しずつ更新予定です。


わたしには、おとうさんとおかあさん、そして…おねえちゃんがいます。


おとうさんはカッコ良くていつもわたしたちをささえてくれます。

おかあさんはすごくやさしくて、そばにいるだけで

すごくあたたかいきもちになります。

おねえちゃんはからだがよわいわたしをいつもたすけてくれて、いつだってわたしをえがおにしてくれます。


みんながいつもえがおのかぞくです。

そして…そして…、


「それから?」

後ろから声をかけられる

重くて鈍い…その声はわたしの背中から胸へ突き刺すかのように放たれる

わたしは静かに振り返る、声の主は分かっている

それは、わたしのだいすきな…だいすきな…、

「おとうさん…」

そこには静かにわたしを見つめるおとうさんが立っていた。

だけど、その眼には優しさなど微塵もない。

だって、おとうさんにとってわたしは娘なんかじゃない。

ただの欲望の捌け(はけぐち)でしかないからだ。

「駄目だろ、先生に見せるものなんだから良い事を書かないと。」

「……はい」

わたしは先生に提出する作文の続きを書き始める。


そして、わたしのだいすきなかぞくです。


作文名「わたしのかぞく」



物心ついた時には父の素行の悪さは目に余るほどだった。

仕事はギャンブル、負け癖がついてるほど運がない。事あるごとに負けては腹いせに酒を買う。

酒のつまみに母を殴る。週に5回ぐらい、下手をすれば毎日になることもあった。

母は殴られても蹴られても、私達に笑顔を絶やさなかった。そんな母を見るたびに、自分が何もしてあげられない怒りと、何故いつもヘラヘラ笑っているのかという情けなさの両極端の感情が芽生えてくる。


「あんなやつ、死んじゃえばいいのに…」

父が留守なのをいいことに私は散々と愚痴をこぼす。それを私の姉である「揚羽 白」(あげは ましろ)はうんうんと頷きながら聞いてくれる。

もっとも、大半の話は白の頭の中には残ってないだろう。

彼女は話を聞きながらどこで拾ってきたのかシャボン玉を作り出す容器を手に、遊んでいる。

ぷかぷか浮かぶシャボン玉を見ていると、キレイと思う反面、自分には一生縁のない生き方のような気がしてならない。

彼らのように、自由にはなれない…。


「はぁ…」

思わずため息をこぼす。それを見た白はシャボン玉を作る手を止め、こちらに近付いてくる。

「おとーさんもきっと、苦しんでるんだよ。」

一瞬、「はぁ?」と言いそうになりバカなの?と

いう考えを必死に押しころす。

どこをどう見たらそんな考えになるのか…思ってた以上の天然発言に呆れる気力すら無くす。

「なんでそう思うの?」

白にそう聞き返す。白は左手の人差し指を顎に置き、うーん…と考える。

「仕事がうまくいってないから?」

聞いた私が間違いだった。そもそも、白にマトモな答えが返ってくることはないと分かっていたはずなのに…。


「はぁ…」

本日、2度目のため息

「大丈夫。」

白はそう言うと、再びシャボン玉を作り始める。

「おかあさんが言ってた。1番不幸な人が最後に1番幸せになるんだよ。」って。

所詮は母と白の夢物語だ。だけど、いつかその夢を現実にしたい…そう願う心が微かにまだ残っていた。


「頑張ろうね、(まくろ)。」

白はそう言うと、私に笑いかけた。

この笑顔にどれだけ救われただろう…地獄でしかないこの世界でこの娘はなぜ、ここまで笑えるのだろう…。私はそう思いつつも、白に笑い返す。

いつかこの地獄から抜け出せるその日を願って…。


数日後、母はまた父に殴られた。殴られた所は酷く腫れ、美しかったあの顔の面影は存在しない。

父の代わりに働いていた仕事も、あの顔ではもう出来ないだろう。

「チッ、使えねぇ女だな。」

父はそう言うと、ビールを飲み干したコップを母の顔面にブチ当てた。母の顔から血が垂れ落ちる。

「金ってのはな、こう稼ぐんだよ。」

そう言うと、廊下から覗き見していた私と白を無理矢理部屋に連れ込む。

「発育良く育ってくれたから少しは金になるだろ。」

母は父の言葉の意味をすぐに理解し父を止めようとする。しかし、父の前には為す術なく壁の方に突き飛ばされる。

「ほら、行くぞ。」

乱暴に腕を掴まれ、私と白は父の軽トラに詰め込まれる。

(待って!どこへ行くの!)

白の顔を見ると、いつも笑っている白の顔にも恐怖が滲んでいる。

「ダチから聞いたんだよ。何でも金で買い取ってくれる奴がこの近くのクラブにいるんだと。」

クラブ?意味が分からなかった。抵抗しようと試みるも、父に何をされるのか分からない恐怖がそれすら奪っていく。

涙で前が見えない…。助けも呼べない。

頭の中は絶望で満たされていた。


軽トラを走らせてどれくらい経っただろう。

それすら忘れるほどの恐怖が身体を蝕んでいた。

「着いたぞ。」

父に軽トラから引きずり降ろされ、目の前の派手な装飾の店が目に入る。

(LOST EDEN…?)

煌びやかな光でそう書いてある。父はそんな私達を知る由もなく、ズカズカと店の中に入っていく。

店の中に入った瞬間、今まで感じたことも見たこともない世界が目に飛び込む。

布一枚で作られたドレスを身に纏い、男を誘惑する女達。男は女を品定めするかのように女の全身を視姦し、気に入った女がいれば別の部屋に連れ込む。

隣を見れば、男達数人が女に何かを飲ませていた。

男達の目は常軌を逸していた。無論、女も例外なく。

(何ここ?普通じゃない!!)


私は父から離れようとするが腕が軋み、痛さが増すばかりだ。そして、父は店の最奥の部屋の前にやって来る。部屋の前には屈強な男が2人立っていた。

「許可証は?」

屈強な男の1人が父を静止する。

「そんなもんねぇよ」

「無いならここから先へ通せない」

「堅いこと言うなよ。こっちは上物を持ってきてやったんだから。」

「規則だ。」

2人がやり取りを続けていると…、

「いいじゃねぇか。中入れてやれよ。」

扉の奥から男性の声がする。

その言葉を聞くと、屈強な男達は父から下がり扉を開く。父はズケズケと部屋の中に入る。

部屋の中は煌びやかではあるが、品を感じさせ

セレブという言葉を知っていても意味まではよく分からない私ですらもこの部屋の豪華さに目を奪われそうになる。そして、部屋の奥にはグラスを手に持ち両手にはドレス姿の美しい女性が赤いソファーに腰掛けていた。

「あんたがゲームメーカーか?」

父はそう話を切り出す。ゲームメーカーと呼ばれる男はグラス越しに父を見つめる。

「いかにも。俺がゲームメーカー。まぁ、人によったら「戦争屋」なんて呼ばれてるけどな。」

(この男…)

只者じゃない。私の直感が何かを感じ取る。

「んで、俺に何の用?せっかくハイになろうとしたのを邪魔したんだ。それ相応の話があるんだろう?」

「売りたいモノがあるんだ。この…ガキ2人を。」

父はそう言うと、私と白を男の近くまで放り投げる。

ゲームメーカーは静かに私達を見たあと口に笑みを浮かべながら…、

「いいぜ、じゃあTrade Time(トレードタイム)といこうか?」


私達に拒否権なんてものは存在しなかった…




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