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薔薇の四天王 その一

 大きく手を挙げて行軍を止めた白の魔王は、そびえ立つ真っ黒に染まったお城の最上部を見上げる。


「あそこに黒の女王が……」


 白の魔王は、長く虐げられてきた魔族を想い、やっと終わりを迎えると感慨深いものを感じながらも、黒い城の最上部から放たれるプレッシャーみたいなものを感じていた。


「ここからはアタシ一人で行くわ」

「いえ! 我々も行きます!」


 一人で乗り込む構えのポチョムキンに白の魔王は、すかさず反論する。

しかし、それでも首を縦に振らないポチョムキンに、白の魔王はせめて自分だけでもと妥協案を提示した。


 その熱意に負けたのか、白の魔王と二人きりだからなのかは、わからないがポチョムキンは白の魔王のみの同行を許した。


 ポチョムキンと白の魔王は、これまた黒塗りの堅く閉ざされた城門の前に立つ。

緊張から暑くはないにも関わらず、汗が冷たく感じる。


「怖いのかしら? アタシにくっついていてもいいのよ?」

「ハハハ……ご冗談を。これは、武者震いというやつです」

「あら、そう。まぁ、アタシは冗談って言わないけどね」


 白の魔王は、ここまでポチョムキンと同行してきた時の事を思い出す。

ウィンクされたり、夜這いかけられそうになったりと、あれらが全て冗談であってほしいと願う白の魔王の身体は、背筋が冷えて全身が震えた。



◇◇◇



「ここまで来たか……」


 居城の最上部の部屋に鎮座する漆黒の金銀が施されて、きらびやかな椅子に座る黒の女王は、それでも余裕の笑みを見せていた。


「くくく……果たして我の親衛隊“薔薇の四天王”に勝てるかな」


 女王の前に(ひざまず)く四人の男。容姿は今一つ黒の女王の好みではないが、その実力を買われて側にいることが許された四人である。


「さぁ、行け! “薔薇の四天王”よ! 奴らを各階で迎え撃て!」

「はっ!」


 男どもは、あっという間にいなくなる。


「くくく……奴らに勝ってここまで上がってこれるかな? 白の魔王よ!」


 一人残った黒の女王の高笑いが部屋に木霊した。



◇◇◇



「いいかしら? 敵の城に乗り込むのにも礼儀というものがあるのよ」

「はぁ……?」


 黒の女王の居城を目の前にして、ポチョムキンによる敵城に乗り込む為の作法を説かれる白の魔王。

ポチョムキンが動かないと話にならないので、仕方なく大人しく聞くことに。


「大事なのは二つ。必要以上に暴れない。それと呼び鈴を鳴らす」

「はっ? 呼び鈴?」


 改めて漆黒の城門を見るが、そんなものは付いているはずもなく、白の魔王は困惑する。


「まぁ、見てなさい」


 城門の前に立ち大きく息を吸い込むと、城門に向けて人差し指を一本軽く当てる。


「黒の女王さん……あっそぉびましょおおおおうぅぅ‼️」


 城門がポチョムキンの人差し指によりねじ曲がっていき、金具が壊れて門扉が飛んで行く。

そして、城の入口にぶつかると、門扉の金属がぶつかり、耳をつんざく金属音が響く。


「これが、呼び鈴よ」


 最早慣れっこな白の魔王は、ハイハイソウデスカと冷たい対応であったが、ポチョムキンを良く知らない見学に来ていた城下町の人間や魔族は、唖然としていた。


「さぁ、アタシの後ろについてきて。離れたらダメよ」


 ポチョムキンを先頭に、壊れた城門の門扉を踏みつけながら壊れた城の入口から中へと入っていく。

ポチョムキンも白の魔王も知らなかった──この先に薔薇の四天王と呼ばれる男達が待ち構えていることに。


 そして、いわゆる“四天王の中でもアイツは最弱”のアイツは、既に倒れて三人になっていることに。

なにより今、門扉と共に踏みつけたことに。



◇◇◇



 城に入ったポチョムキンは、真正面にある二階へと続く階段には向かわず、一階を散策していた。

部屋に入る度に、ドアを壊し時には壁や柱を壊す。

後ろからついてきていた白の魔王は、さっき話をしていた敵城に乗り込む作法は何処にいったのだろうと首を傾げていた。


 一階をあらかた壊し終えたポチョムキンは「次は二階ね」と、やっと二階に進むのかと白の魔王は安堵する。

しかし、急にポチョムキンにより脇に抱えられて身の危険を感じる白の魔王。


「頭は手で守りなさい」


 そう言うとポチョムキンは、階段を使わずに廊下の天井、つまりは二階廊下の床に頭突きで穴を開けて二階へとジャンプした。

そして、白の魔王を降ろすと再び各部屋を散策し始める。


 三階へと上がる階段の前に立ち塞がる男と廊下を進むポチョムキンの目が合う。

男はトツゼン現れた巨大な体格のビキニにブーメランパンツと奇っ怪な姿に驚くが、ポチョムキンに会釈され思わず会釈で返すと、ポチョムキンはそのまま二階の別の部屋へと廊下を通りすぎて行った。


「まだ、あんなに頼りになりそうな男がいたのか」


 おかしな解釈で納得したこの男こそ、薔薇の四天王の二番手であった。

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