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真人間の降伏

 人間による真人間への抵抗が激化の一途を辿り、人間に拘束されていた魔族達は次々解放されていく。


 白の魔王とポチョムキン率いる魔族は、街や村を通る度にその数を増やしていき、黒の女王の居城の側に着く頃には、当初の十倍近くまで膨れ上がっていた。

だが、喜んでばかりもいられない。

増えた魔族達は、今まで酷い扱いされてきたせいで、痩せ細り武器を持つ手も震える様な状態であった。


「魔王様、正直あの者たちは置いていくべきだったのでは?」

「いや。痩せ細り力無い者達ではあるが、士気は高く、何より染み付いた奴隷根性を拭わねばならない。解放してもらうのではなく、自らの手で掴みとる必要があるのだ」

「そうねぇ。あのままだと、再び捕まったら同じ境遇を辿りそうだものねぇ」


 ポチョムキンも、解放された魔族達の目の奥に潜む怯えを見逃さなかった。


「タローみたいにアタシの愛の奴隷になら本望でしょうけど、ちょっとあの子達は……ねぇ」


 白の魔王と側近は、魔族達とポチョムキンとの間に立ち塞がり止めてくれと首を横に振るのであった。



◇◇◇



 現在は、夜営をしながら最後の決戦に臨む所まで来ており、闇夜のせいで、黒の女王の居城である真っ黒な城の姿を確認出来ない。


 白の魔王も、もうすぐ終わりだと思う高揚感と、ここで負けたら水の泡になる緊張感で眠ることが出来ずにいた。

仮設のテントを出て黒の女王の居城の方を振り向くと、自分のテントの近くにポチョムキンの背中が見えて、一瞬身震いをする。


 しかし、こちらを見ることはなく、腕組みしながら仁王立ちでじっと黒の女王の居城の方向を見ているようであった。


「ポチョムキン殿も眠れないのですね」


 白の魔王は、ここまで連れてきてくれたポチョムキンに感謝の意を伝えようと、ポチョムキンの横に並び顔を見上げる。


「ぐー…………」


 立って眠っていた。目を見開き驚く白の魔王であったが、すぐに元の顔へと戻る。

ポチョムキン相手に常識など無用だと悟り……。


 朝靄がかかり、まだ日は昇り出す直前で一部の空が薄い白のヴェールで覆われつつある頃、白の魔王の前に隊列を組んで並ぶ魔族達。


「時は来た‼️ 今こそ、我々魔族が、この狂った世界に終止符を打つ‼️」


 白の魔王の口上で、魔族達の士気は跳ね上がる。

白の魔王を称える声、やる気を出して人一倍大きな声で自らを奮い立たす者、白の魔王とポチョムキンを称える声、そしてポチョムキンを様付けで呼び「愛してます」と叫ぶ一部の声。

どうやら魔族の中にも、多少ポチョムキンのお目にかかった者がいたようであった。


 白の魔王に白い目でみられながらも、ポチョムキンは先頭に立ち走り出す。

ポチョムキンのあとを追う魔族達。


 一方、真人間達は待ち構えているかと思えば城下町を囲む外壁の中へと立て籠もる。

力自慢の真人間が十人がかりで開閉する巨大な鉄扉を閉めて街の中へ入れないように。

それだけではなく、ポチョムキンの話を聞き念には念を入れて多くの真人間が鉄扉を開かれないように押さえつけていた。


 一旦、門の少し手前で行軍を止めると、ポチョムキンが一人鉄扉へと近づいていく。

外壁の上部から見張っていた真人間から警報の銅鑼が鳴らされると、特に力自慢の真人間が中心となり、扉を押さえつける。


 一度だけ轟音がすると、扉の振動が真人間達に伝わってくる。


「踏ん張れぇえええ‼️」


 耐える真人間達。しかし、急に振動が止まったかと気を緩めた瞬間、突然扉を押さえていた真人間達が、()()()()()()()()()()倒れてしまう。

暗い外壁の内部にいたはずなのに、日の光が眼に射し込んでくる。


 真人間達は、鉄扉が開けられたのだと察した。


 倒れて地面へ這いつくばった真人間達の視界に、地面へと根を深く降ろした様な大木にも似た二本の足が飛び込んでくる。

徐々に見上げると、そこには本来内開きの筈の巨大な鉄扉を三本の指で捩じ込み持ち上げているポチョムキンがいた。


 扉を押さえていた力が自慢の真人間たちには、ポチョムキンが規格外の生命体であると強く感じて目が死んだ魚のようになっていく。

とうとう、その場に座り込み動けなくなっていた。


 他にも真人間達はいたが扉が開かれると共に街の中へと隠れると、代わりに大手を振って出てきたのは、人間と解放された魔族達。

城下町とあってか、多くの魔族は女王の命令により殺し晒されていたが、一部、人間によって匿われたりしていた。


 黒の女王の住む真っ黒に染められた城に向かって、街の大通りが伸びている。

まるでパレードのように、白の魔王と配下の魔族とポチョムキンは大通りの中心を、遮られることなく突き進んだ。


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