3話 カイ=アルスエル
結構、間が空きました。すみません。これからもこのくらいになると思いますが、よろしくお願いします!
数日後、俺は寝床に座りながら今後のことについて考えていた。だが、ビジョンが1つもたたない。だから、ひとまず脱出のために自分自身のことを知ることにした。しかし、牢屋には鏡のように自分の姿を反射させられるものはなく、自力での視認はできなかった。そこでハクの目を媒介にすることを考えつく。
「ハク。変な相談かもしれないが、俺の容姿を事細かく教えてくれないか? 俺、自分の姿をみたことないんだよ」
「カイは本当におかしなやつだよな。まぁ、そんなところが面白くていいんだけどな」
ハクは俺の姿をじっくりと見回しながら、特徴を捉えながら細かく説明してくれる。
髪の色は暗灰色で、目は黒色で優しい目をしているらしい。顔は童顔で背も165くらいで、この世界の平均身長よりも少し低いらしい。肌の色などは白い方で、王都近辺の中央部の特徴に酷使しているらしい。そして、最後に言われた衝撃的な事実。俺はなんと『イケメン』の部類らしい。
俺はもとの世界の自分とは異なっていることに気づく。それにより、俺のやれることの可能性というものが広がった。これが脱獄の手がかりになるかはわからない。しかし、ないよりかはましだ。
「あのさぁ? カイは自分の武器や魔法とかって知ってるの?」
「知らないけど、この世界は剣と魔法の世界なのか?」
「そうだよ。この世界に生きる人すべて、ユニーク武器を持っているんだ。それは人によって違って、同じ形状や性能の武器がないんだ。そして、杖やロッドなどの武器の人には魔法が使えるようになっている。だが、時たまに例外というものがある。それが魔法職の武器以外での魔法使いだ。この世界ではそれを『ダブルウェポン』と言っている」
なるほど、ありきたりな異世界ファンタジーといったところか。こういうのはよく本で読んだことがある。信じがたいことだが、現に見てしまっているのだから否定する意味がない。
自分だけの武器、ユニーク武器。それが自分に宿っているのか。俺の職業はサムライだ。それは日本史に綴られている侍と同じなら、武器は刀ではないのかと大方予想がつく。切り裂くことに特化した、細長い刀身を持つ日本独自の武器だ。
「ねぇ、カイ。君はどこから来たんだ?」
唐突に発せられた言葉に身震いする。バレた。それが俺の頭を埋め尽くし、爆発する。少し振り返りこれまでの怪しい発言と、「この世界は〜」という失言に後悔した。
俺はためらいながらも親切に接してくれたハクに真実を語る。
「流石にバレるよな。そう、俺は異世界人だ。そしてわけもわからず捉えられてる囚人でもあるってわけだ」
「異世界人か……初めて見たよ。本で書いてあるのを読んだことはあったけど」
本に書いてある、ということは俺以外の異世界人がこの世界には存在していたのか。いや、まだどこかにいるのかもしれない。このことから、俺は特殊ではあるが、別に異例の事態と言うわけではないことがわかった。なら、別にそこまで隠す必要はないな。
「たしか、文献によると異世界人は、例外なく強大な存在らしい。カイの名前と同じ、王族アルスエルの正体は異世界人と、その子孫という説があるんだ。だから、カイも非凡な能力を持っていると思うよ」
「嘘だろ? 俺が凄い人間だと……」
俺は、自分の両手を見つめ自分の強大な力に唖然とする。いや、興奮しているといった方が良いのかもしれない。これまでの人生で初めて『ワクワク』という感情が俺の体を満たした。心臓の鼓動がうるさすぎて、周りの音が何も聞こえなくなるほどだった。
「──ィ、ヵイ、カイ!! ねぇ?俺の話し聞いてる!?」
「あっ、すまん。聞いてなかった。もう一度頼む」
「しょうがないなー。えっとね、そろそろここから出ようと思う」
「ん?ここってどこ?」
唐突に言われて頭がハクの言っていることに追いつかない。いや、多分意味はわかっているのだが、漠然としすぎて中身が伝わっていないのだ。
「ここはここだよ。この牢屋。いやまて、このエルフ領って言うべきかな?」
「いや待て、ちょっと何言ってるか意味わかんないんだが??」
「だーかーらー、この牢屋から脱獄しますって事」
ハクって阿呆なのか? そう考えてしまうほど、その発想が意味不明だった。確かに俺もこの檻の外に出たいとは思っていたが、流石に急すぎる。それに加え、俺達にはここから脱出する動力を持っていない。だから自力では無理だ。自力では──
「……まさか、お前にはここから脱出させられる仲間がいるのか?」
そう自力ではなく他力なら、ここからの脱出は可能である。俺ではできなかった方法だ。
俺の問に、微笑みという返事がかえってくる。
「さすがだね。よくこの少ない情報から答えを出せたよね。ひとまず、おめでとうといっておこうか」
「いや、褒められたもんじゃないよ。流石にこの状況ならそれが正攻法だからな。しかし、その脱出手段があるんだったらもっと早くに逃げることができたんじゃないのか?」
「それは後で話すよ。ひとまず、それまでの下準備が先だよ。ひとまずねそこから離れないと悲惨なことになるから寝床から離れようか」
俺はその言葉に従いハクのいるほうによる。そこで初めて気づいた。ハクの長い金髪の下にある、整った顔に。
その瞬間だった。俺がいた寝床にこの世の物とは思えない空間が広がる。いろんな色がドロドロと混ざりあい、異質というものがよく似合う。その空間から脚が生えてきた。そして徐々に現れてきたのは、銀髪の黒のタキシードを着た西洋顔の青年だった。目元の優しさがとても印象的だった。
「お待たせしました王子。さぁ、国に帰りましょう」
「大丈夫だよエルレール。俺はこうして生きてるんだから」
ちょっと待て状況が掴めない。これが魔法?? 王子?? だれか俺に説明してくれる、ナビゲータをつけてくれよ!! それか取説をっ!!