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そのよんっ


 僕の告白から数カ月の時が流れた。

 あれからドエスに目覚め……てはないかもしれないけど、杏里は頑張ってくれていた。


 初々しさが消え始め、丁寧ながらもいじめるというなかなかにプロな技をしてくれる。

 気持ちいい。


 この数カ月、踏むことと罵倒することのみをやってきた。

 そろそろ別のことをしてほしい。

 そう思った僕は、とある品を注文した。

 これで……杏里に……。


 ふへへ。


「ご主人様、ご飯できましたよっ」

「今行くー!」


 これが届くのが楽しみだ。





 なんだかご主人様の機嫌が良さそうだ。

 別に悪い時なんてないのだが、何かを楽しみに待っている。そんな感じがする。


 見ていてこっちまで嬉しくなる、そんな笑顔だ。

 かわいい笑顔。


「ご主人様、何かあったんですか?」

「いや、ちょっとね」


 私の問いかけに、そのことについて思い出したのか、にやにやし始める。

 そんなご主人様を見て、なぜだかもやっとした気持ちになった。

 なんだろう?ご主人様の笑顔を見れて嬉しいはずなのに。


「私、食器片づけてきます」

「うん。いつもありがとうね」

「いえいえ」


 ララさんにもお願いしますと言われたので、私は食器を持って洗う準備をする。

 ちらっとご主人様の方を見たら、ララさんに何か耳打ちをしていた。

 それを見て私は、さらに心がもやっとするのを感じた。





 杏里が食器を片づけに行った。

 もう杏里も立派に家事をこなせるようになった。

 ララさんが二人いる感じだ。

 あ、そうだ。


「ララさん。ちょっとちょっと」

「どうされましたか?」

「明日くらいに荷物届くかもだから、そしたらよろしくね」

「かしこまりました」


 そういえば、杏里に聞かれたあの日。

 僕がララさんをララさんと呼ぼうとすると、どうしてララさんが怒るのかということについて聞かれたあの日。

 僕は、本人に直接謝れと言われたので、謝りに行ったのだ。


 そうして長い説教のすえ、ララさんと呼ぶことを許可された。

 もう二度と呼ばせてもらえないと思っていたから杏里には感謝だ。


 杏里へのプレゼントも考えておこう。

 これからまた、忙しくなりそうだ。





 食器を洗い終え、その他掃除などの家事をこなしていたら、ご主人様に呼ばれた。

 またいつものやつだ。

 何を隠しているのか、聞きだしてやる。


「てい」

「あふぅん……。今日はいきなりだね……」

「何を隠しているんですかっ」

「え?何も――」


 げしっ。


「あっはぁん……」

「隠しても無駄ですっ。さっきララさんとこっそり話してるの見てましたからっ」

「ご、ごめんなひゃい……」

「ほら、早く言いなさいっ!」

「あふっ……。杏里も立派になったねって話してました……!」

「そ、そうなんですか……」


 これは申し訳ないことをしてしまった。

 もやっとした心のままにご主人様にいつもより攻撃的になってしまっていた。


「あ、あの……ごめんなさいご主人様!その、いつもよりひどくて……」

「全然大丈夫だよ!もっとやって!」

「それはそれで問題な気がしないでもないですが……。わかりましたっ。頑張りますっ」


 ご主人様の嬉しそうな顔を見つつ、今日も私はご主人様を踏みつける。

 心のもやもやは、まだ晴れていなかった。





 今日は荷物が届く日!

 楽しみで仕方がない。


 こんこん。


 そんなことを考えていると、部屋の扉がノックされた。


「どうぞー」

「失礼しますっ」


 杏里だった。


「さ、さぁいきますよ……」

「は、はひぃ……!」


 今日も杏里はやる気満々のよう。

 なんか昨日から、ちょっと力が強い気がする。

 でもこれもまた……!


「私ですねっ。気づいちゃいました」

「な、何が……?」

「内緒ですっ!」

「あふぅん……」


 何だろう?気になってドエムどころじゃない。

 もやもやする……。


 こんこん。


 その時、またノックの音がした。


「杏里、ちょっとタイム……」

「は、はいっ!ごめんなさい!」

「謝らなくてもいいよ。どうぞー!」


 扉に呼びかける。


「失礼します。、お荷物が届きました」

「ララさんありがと~」


 やっと僕当ての荷物が届いたみたいだ。


「これ以上はお邪魔かと思いますので、失礼します」

「うん。ありがとね~」


 ララさんはにこっと笑い、綺麗な礼をして部屋を出て行った。


「何を買ったんですか?」

「ふふん。これ!」


 箱を開けると、望んだ通りの品が入っていた。


「鞭……?」

「そう!これでSMエスエムプレイよ!」

「おぉ……」


 これを楽しみに待っていたの……!

 これでようやく踏む以外のレパートリーが……!


「これで叩いて」

「で、でもこれ、危ないんじゃ……」

「杏里なら大丈夫でしょ」

「っ……。任せてください!」


 小さい胸を張って答えた杏里は、まず鞭を慎重に見始めた。





「い、いきます……」

「どうぞ!」


 ぺしっ。


「あはぁん……。なかなか……!」


 ぺしぺしぺしん!

 ぺしっぺしぺし!


「あふっ。あはっ……んっ」


 隠し事ってこのことだったのかぁ……。

 楽しみにしてるから言いたくなかったのか。


 でも、そんなことでも言ってくれなかったのがなんかもやもやする……!


 ぺしっ!!


「いたっ」

「あっ。ご、ごめんなさい!!」


 考え事をしていたから、ついつい力が入ってしまった。


「はわっ……。血が……。本当にごめんなさい!」

「これくらいならすぐに治るし大丈夫だよ~」

「で、でもケガをさせちゃいました……」


 ご主人様の綺麗な肌に傷をつけてしまった。

 女の子なんだから大事にしないといけない体なのに……!


「大丈夫だって。気にしないで~」

「気にします!」


 そう言いながらご主人様にぐっと顔を近づける。

 ご主人様の顔が目の前にくる。

 吐息がお互いの顔にかかってしまう距離だ。


「大好きな人に傷をつけてしまったのですよ!?気にします!」

「だ、大好きって……」

「さっき言ってた私の気づいたことですっ!私はご主人様が好きです!そのっ……いろいろな意味で!」

「いろいろな意味で!?」


 そう、私はご主人様のことが好きだ。性的な意味で。

 同性だなんて関係ない!愛があればそんな壁は乗り越えられる!


 今までのもやっとした気持ちは、好きな人に隠し事をされて嫌になってしまったのだろう。

 ご主人様のちょっとした隠し事がわかった今、私の隠し事もばらす時!


「改めて言います」


 そう言って私は、一旦ご主人様から離れる。

 そして、姿勢を正して改めて言った。


「私はご主人様が好きです!これからも一緒にいてください!」

「……も、もちろん。喜んで!」


 そうして二人で笑い合う。


「では、さらに改めて」


 ぺしっ。


「あふぅん……。気持ちいいよ~杏里!」

「このダメ主人!まだまだいくから、覚悟しなさい!」


 そう、これは――


 ()の少女と()な主人の物語。

これで完結になります。

読んでくださり、ありがとうございました!


ほかの作品も、よろしければ見て行ってください。

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