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そのさんっ


「僕のことを――」


 勇気を出すんだ僕……。

 大丈夫、杏里ならきっと……!


「なんですか?」

「僕のことを踏んでください!」

「……え?」





 突然の告白に私はただただ困惑するばかり。


 目の前で、私に対して土下座をするご主人様に、ただただ呆然とするだけだった。


「お願いします!!」

「いやいや、ちょっと待ってくださいご主人様!?何を言っているんですか!?」


 あまりにも驚いて言葉が出なかったけど、やっと思ったことを口にできた。

 それに対してご主人様は、いやぁと言うと、


「僕かわいい女の子にいじめて欲しかったっていうか……その……僕、実はドエムだから……」

「えぇ……」


 衝撃の事実すぎて言葉を失う私。

 このご主人様は本当に何を言っているんだろうか。


「はいこれヒール。履いて」

「あ、はい」


 差し出されたヒールを反射的に履いてしまう。


「踏んで」

「はい。って!できるわけないじゃないですか!」

「そこをなんとか!」

「なりません!」


 もともとは奴隷として買われた私だ。

 そんなことできるはずもない。


「じゃあ命令って言ったら……?」

「っ」


 すごく悲しそうな顔で聞かれる。

 初めての命令なんじゃない?と思いつつも命令という言葉にドキッとする。

 私が奴隷の時、一番恐れていた言葉。抗うことのできない、絶対の言葉。


「わ、わかりました……」

「ありがとう!」


 ご主人様がにぱっと笑う。その笑顔にもドキッとさせられる。

 ご主人様ってこんな風に笑うんだ……。


「こ、こうですか……?」

「違う!もっと強く!」

「ひぇ~……」


 どんな家事よりも難しそうだった。





 どうやら杏里は嫌いにはならないでいてくれたらしい。

 あれからしばらく時間が経ったが、一生懸命頑張ってくれている。


「そこに罵倒も入れてみよう」

「ば、罵倒……ですか?」

「うん」


 やっぱり踏まれながら罵倒されるのが一番だと僕は思う。

 しかもこんなかわいい子に……!


「このダメ主人が!とか」

「そんなの言えませんよ!」

「…………」

「わ、わかりました!」


 悲しんだ目を向けたら了承してくれた。

 意外とちょろい子?


「こ、この……ダメ主人がっ」

「ご、ごめんなさいぃ!」

「あ、ご、ごめんなさい……」

「杏里が謝ってどうするのさ」

「だ、だってぇ……」


 杏里が涙目になってしまっている。

 いきなりハードだったかなぁ。


 で、でもこれはこれで初々しくていいかも……。


「やっぱりそのまま続けてみて」

「は、ひゃい……」


 恐る恐るといった感じに足を上げてまた僕を踏んでくれる杏里。


「こ、このダメ主人……!」

「あはぁん」


 あぁ……違う方向に目覚めそう……。





 なんか変な気持ちになってきた。

 別に、えっとなんだっけ……。


 ドエムの反対のやつに目覚めたってわけじゃない。……と、思う。


 ただ、ご主人様の悲しんでる顔を見たくないとか、笑顔を見たいとか、そんな気持ち。

 この気持ちはなんだろう?


 ララさんがなんでドエムについて話してたのかようやく理解ができたのはいいんだけど……。

 そういえばもう一つ気になっていたことがあった。


「なんで、ララさんって呼ぶと怒られるの……っ!教えなさい!」

「ひゃい!昔、ララちゃんって呼んでからかいながら歩いてたら怒られるようになりました!ごめんなさい!」

「その謝罪はララさんに直接言いなさい!」

「あふぅん……。ご、ごめんなさぁい……」


 もしかしたら、私は目覚めてしまっているのだろうか。

 でも、ご主人様の嬉しそうな表情が見られるから、いいか。

次回の更新は、5月31日の21時~22時の間です。

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