料金は規格内のようです。
「……料金表ですか?一体何の…」
村長がイブに尋ねる。
「おおっ!ソル、村長がイブにいぶかしげに尋ねたよ」
「イブうるさい」
「ごめんなさい」
「何のって、勿論助けてあげる料金だよ。聖女的にはこの『おすすめコース』がいいと思うの」
「……えっ」
「あ、安心するといいよ。初回割引で半額にしておくから」
村長達村人は困惑の表情を浮かべている。
イブはそれに気付いた上で話を進める。
「………代金があるのですか?」
「勿論。あなた達が思っている『無償で助けてくれる聖女様』はただの幻想だよ。聖女だって霞を食べれば生きていけるわけじゃないもの。お金は必要」
「急に現実的な話になったな」
それにしても料金表を持ち歩く聖女というのもあまり聞かない話だろう。
「スクープ!『料金表を持ち歩く聖女』」
「世知辛い事実だねぇ」
「無償で何かをしてもらえると思い込む方もどうかと思うぞ?ちなみに俺は霞を食べれば生きていける」
「先輩すごいッスね。じゃあもうソルの分の食事はいらない?」
「霞以外も食べたいです。俺仙人じゃないんで」
村長達はまだ困惑から抜け出せないようだ。
「お金を取るって言っても流石に大金請求する程私達鬼じゃないよ?暫くの間の食事代くらいだよ?」
「イブ、こいつらは『仮にも聖女って肩書きを持ってんなら可哀想な自分達から金をせしめるのは間違ってる』って思ってんだよ。料金の問題じゃない」
「ああ、なるほど。そゆこと」
「ああ、人間とは勝手な期待を抱く生き物だからな」
「ねぇ村長、本当に救われたいと思うなら他人を頼るだけじゃだめだよ。自分で考えて行動しなきゃいけない。今回は私達が行動するからその労働に対して対価を払う。そのことにそんなに抵抗があるかな?」
「……なんかめっちゃ金欲しい奴みたいだな」
「珍しく真面目に話したのに……」
「ごめんごめん」
イブがむくれるとソルが優しく頭を撫で頬をつついてくる。
「さすが相棒。よく撫で方を心得てる」
「知ってる」
そして二人で村長を見据える。
「村長、返事は?」
「………払います」
「よろしい」
「料金は『おすすめコース』でいいかな?」
「……はい」
「よしっ。じゃあソル、行くよ」
「おう」
そう言うと二人は立ち上がった。
辺りは暗くなって冷えてきたため、ソルはイブにしっかりと外套を羽織らせる。
「どっ、どこに行かれるんですかお二人とも!!」
村長は驚いたらしく大きな声を出した。
「?どこって勿論。ねぇ」
イブはきょとんとした顔を見せるとソル顔を見合わせた。
そして再び村長の方へ向き直る。
「勘違い野郎共を成敗しに」