7 青い光
私は過去の祭りでのことを思い出し、そっと目を開けた。相変わらず、森の中だ。景色が変わっていたらという期待も少しはあった。まぁ、それは私が失った記憶を取り戻さないといけないと言われたから、ないと思っていたけど。
そして、柚季はまだ抱きしめてくれている。彼女の柔らかい髪からは、柑橘系の匂いがする。柚季という名前だからこの匂いのものを使っているのかな。
疑問に思ったけど、それより、早く抱きしめるのやめて欲しいなあ。
「柚季。もう大丈夫。離していいよ」
「本当に大丈夫。いつでも抱きしめてあげるから、その時は言って」
「ありがとう」
改めて森を見る。特に何も変わっていないだろうと思っていたら、少し先に青色に光輝いている円が浮かんでいるのが見えた。
「柚季、あれ見て」
「んっ、何、どうしたの?」
柚季は私が見ている方向に顔を向ける。
「何か光っているね。行ってみよう」
私は頷き、二人で青い光に歩いていく。近づくとその円は思っていたよりも大きく、人の背丈ほどはある。
よく見ると円の中心に文字が記されていた。
「この先、光の街です」
私は記された文字を口にだして読む。どうやらこの先に街があるようだ。街があるということは、人も少なからずいるだろう。この世界についての情報が知りたい。
そう思ったとき、足下が揺れはじめ、地中から生き物が私たちに襲いかかってきた。
いや生き物というより、モンスターと表現した方がいいだろう。そんな事を考えている間に、私の左腕からは血がポタポタと流れはじめていた。
モンスターは、赤い液体がついた爪を眺めていた。