5 怖い
「梨里、どの方向に行けばいいかな?」
どこを見ても同じ景色のこの状況、私は彼女の質問には答えられず、わからないと首を振る。
「そっか~、目印になりそうなものもないもんね」
「何も無ければ、とりあえず適当に進んでみない?」
私の提案に柚季も頷き、そうしようと言った。
それからひたすら北なのか、前に真っ直ぐ30分ほど歩いている。ただ景色は一向に変化はなく、木々が前から後ろにと過ぎ去っていくのを何度も見ている。
「これってどこまで続くのだろう」
柚季はもう疲れたと口には出さないものの、雰囲気はそんな感じだった。私も同じ景色を見すぎて、普段以上に疲れていた。
空からは日光が容赦なく私達を襲い、少しの時間であっても奪われる体力は大きいようだ。
「もう少し歩いてみて、それから何も変わらなければ考えてみようか」
「梨里がそう言うなら」
それから、1時間歩いたものの景色は相変わらず同じ。二人は木にもたれかかり、青々とした空を眺めていた。
「梨里、これずっと続くパターンだよ」
柚季の声が小さく聞いていると悲しくなってくる。そもそも私があの時間帯に電車に乗らなければ異世界に来ることはなかっただろう。それを柚季も一度は思ったかもしれない。
「このまま死んでしまうのかな」
「死ぬの怖い」
「怖い」
「怖い」
「怖い」
「梨里、しっかりして」
彼女は私の身体をぎゅっと抱きしめてきた。