4 小柄な女の子
ピィピィピィ~ピィピィピ~
鳥のさえずりが聞こえる。
不思議な感覚がして、私はむくりと上半身を起こした。先程まで電車の床だった場所は、緑豊かな草原となっていたからだ。近くには、電車の乗客が倒れている。見たところ怪我をしている人はいないようだ。
しばらくすると、それぞれが目を開き、辺りの雰囲気に驚いている。
柚季もその一人で草を何度も触って、「なにこれ、めっちゃ柔らかい」と目を輝かせて私に向かって語りかけてきた。
「そうだね」と言いつつ他のことを考える。
それにしても、ここはどこだろう?少し前のことをひとつひとつ思い返すことにする。
確か電車に乗って、港町に向かっていた。
あれ?何で港町に行こうと思ったのだろう。
あれこれと考えてみたものの結局わからなかった。
「こんにちは、異世界にようこそ」
可愛らしい声が私の後方から聞こえてきた。振り返ると、ピースサインを何度も、私たちに向かって送ってくる小柄な女の子だった。
「あなたたちは一部記憶を失っている状態。この世界で記憶を持つモノがいるから、探してね」
「じゃあ、そういうことなので」
「おい、もっと説明しろ」
おじさんが必死に叫ぶが、彼女は右目をパチリと音をたてて閉じると、姿を消した。直後私の視界が狭まり真っ暗になった。
「梨里、起きて」
柚季の声で再び目を開くと、今度は森の中にいた。周りの状況を確認したところ、電車の乗客はいなくなっており、私と柚季しかいなかった。