20 再び米田さん
ゴーレムの力により、私たちは、彼らから逃れることができた。
あのまま戦闘を続けていれば、おそらく誰かが死んでいたかもしれない。
みかん姉さんが持つ薬はありがたいものばかりだ。
それと異世界から戻るヒントがあるという情報が正しくないこともわかった。
米田さんには、その辺をより詳しく訊く必要があるだろう。
そんなこんなで、米田さんのボロ小屋に着いた。
少し前にみかん姉さんの強烈な蹴りで、小屋の扉はなく、米田さんが中で何かの作業をする姿が見えた。
「米田さん、帰ってきたよ」
みかん姉さんの快活な声が小屋内に響く。
「わぁ、たくさん本がある」
柚季は壁側に積み上げられた本を見て驚きの声をあげた。
米田さんは、四人をそれぞれ見ると、ため息をついた。
「ちょっと米田さん、全然ヒントなかったよ」
「そうですよ。私たち期待して行ったのに」
みかん姉さんと柚季が文句を言う。
それを私とりんごが眺めるという状況がしばらく続いた。
散々文句を言われ、憔悴しきった米田さんは、本棚の前にある椅子に座ると、一人呟いた。
「いや、最初にほんまかわからん言うたやん」
「その噂は、どのような人から伝わってきましたか?」
私は米田さんに聞いた。
「どのような人だったか?」
米田さんはひとり語り始めた。
「……あれは何年前だったかなぁ。若い男がこの前の道を通っていくときに……ようやく帰れるとかぶつぶつ呟いて、涙を流しているのがおったんや。そんで、涙流しているやつを見逃すのは嫌やったから、どうしたんやと聞いてん」
「そうしたら、僕は別世界から来たんです。あの塔に行けば、帰れることがわかったとか言うててな」
「まあ、あまり本当かわからんかったから、お前たちにはヒントがあると答えたというわけだ