19 三つの薬
「ゴーレム……」
俺の前を巨体が動く。逃げた奴らを追うためには、まずはこいつを倒さないといけない。
「さくっと終わらせますか」
「そう。ゴーレム」
彼女は二人の子に説明する。
「私がりんごに渡した薬は三つある」
「一つ目はりんごが受けた毒を消すもの。でも、完全に毒を消せるほどのものではない」
「二つ目は傷をなくすもの。これは梨里ちゃんにも使ったものだから、どんな感じかわかると思う」
「そして三つ目がゴーレムの生成。土がある場所に、これを垂らすとゴーレムが出現する。でも問題点があって、土の環境によって、強さが変わってしまうの」
みかん姉さんが一通り話終えると、柚季がぽつりと言った。
「じゃあ、あのゴーレムは?」
「たぶん環境が悪いから……」
「でも時間稼ぎにはなったでしょ」
みかん姉さんに治してもらった脇腹をさすりながら言う。
「そうね。私もそう思ってりんごに渡したんだけど、当たってた?」
私たちから少し距離を置いて、歩いているりんごに話しかける。
「さすが、俺の考えていることを読み取ったな」
「長い間一緒にいるからね」
軽く片目を閉じてにっこりと笑顔を見せた。
「あのぉ、これからどうします?異世界から戻るヒントが全く得られなかったんですが……」
柚季が不安そうな顔をして、二人に訊く。
「とりあえず、米田さんの小屋に戻るか」
りんごの発言に異論を唱える者はいなかった。