15 壁
りんごの技により、部屋が明るくなった。
壁には何か植物のようなものが、あちこちに描かれている。
それぞれに意味があるのかわからない。
昔の人が描いたのかもしれない。
「さて、こんな感じでいいか」
「ありがとう。りんご」
とみかん姉さん。
「ありがとう。りんご君」
と柚季。
「ありがとうございます。りんご君」
と私。
ひとりひとりお礼を言う。
それを聞いて、照れくさそうに笑みを浮かべる。
僅かな時間りんご君の様子を見てきて思ったことがある。
彼は乱暴なところがあって怖そうな雰囲気があるけど、時々こういう一面も見せるので、可愛らしく感じる。
「ふふふ……」
「あっ!?なに笑っているんだよ!」
「なんでもない、気にしないで」
さて、現在の状況を改めて確認しよう。
「この部屋には何もなさそうだね」
柚季が仰向けになって天井を見ながらしゃべる。
「この壁画は?」
柚季は顔を私の方に向け、笑うと。
「それは関係ないでしょ」
「りんご君、みかん姉さんはどう思います?」
「それはただの絵だ」
「そうね。私の方が上手くかけるよ」
私が気にしすぎているだけかな。
二人の反応を見ると、そう判断するしかない。
「あれ、階段があるよ」
柚季がいる方を向くと、柚季は壁を指差していた。
そこには壁と同化している階段があり、よく確認しないとわからなかった。
「上に何かあるかもしれないし、のぼってみよう」