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鳥籠の姫と暁の天使  作者: 架聖
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±1話:とある教会で…

一章


初冬。


この間までハロウィンだ!お家騒動だ!!なんだと騒いでいたのが嘘のよう。

外の木々は、すっかり葉を散らし丸裸。

冷たい風が中と外の温度差で真っ白に曇った窓をガタガタと言わせている。

こんな寒い日は外に出ずに温かい室内にいるのが幸せだと天使でも感じる。


(しかしまー…いつまでも此処にいるのが幸せとは言えないがなー)


少しの埃臭さがある教会。

中々長くある事もあり、街の者からもよく知られ慕われている教会。


まぁ…オレから言わしたら人間が作ったにしては、まぁまぁな方かもなー…と思うのが正直な所。


立派なもの綺麗なものを見せられても、より立派で綺麗で更に言えば自分好みな場所を知っていると思ってしまう。



(つーて…こんな所でもないよりマシだしなー)



目の前の祭壇にある十字架やら聖体ランプを眺め、そのまま視線でなぞりながら静かな教会の天井を仰ぎ見る。


「……………アキ、諦めろ。解け。」


その声にストンと視線を落とし、縛られた状態で隣に座る明らかに不機嫌全開の顔を見る。


「んあ?うるせーよ。」

「クソが…大体、こんな事した所で俺の気持ちは変わらない。」

「あのなぁ…?今の自分の状況分かってんのか???オレが解くまで動けねぇし。つか、なんなら今ここで殺してもやってもいいんだぜ?なぁ?地獄の頭…雷夢ライム様よぉ???」


言われて先程よりも機嫌…いやもう深い紫色の瞳は殆ど殺気を纏った状態でこちらを睨んでいた。


───────────────気に入らない。


「…お前」

「はいはいっ!!ストーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーップ!!」


声と共に無理矢理間に割って入り、オレ達二人の身体を引き離しながらミナトはオレ達の顔を交互に見合わせる。


「あのねぇ!前に言ってた『平和』とは!?って感じさせられるだけどっ!?!?君達もう少し仲良くしてよっ。あと、暁!いい加減この人の拘束解いてあげて!!」


言われて「ふんっ」と、湊の腕を半ば乱暴に振りほどく。


「たくもぉー…雷夢…さん?は、ともかくさ。暁は、もう少し身の振り方を弁えたら…?仮にも天…」

「うっせ!本物に仮とか言うな!!オレはオレだ!!余計な世話だっつーの!!」

「…だったら、こちらにも口出しをするな」


ふいに投げ込まれた雷夢の言葉に思わず熱が上がる。

物理的に。そう物理的に。


「ちょ…っ!?暁!待って待って待って!!落ち着いて!燃えちゃうっ!!教会燃えちゃう!!やめてーーーーっ!!」


湊の叫び声にハッと我に返る。と、同時に手にしていた炎の塊も姿を消した。


「…あ」


やってしまった。

全身にひんやりと汗が出た。恐る恐る湊を見る。


「よ、良かった…死ぬかと思ったよ。天使に教会燃やされるとか本気で笑えないよ…」


なんだ………良かった。


(くそ…オーバーだな…はぁ…………)


大体…男の癖にすぐに涙を浮かべてこの世の終わりみたいに叫ぶなよ。縁起悪いし格好悪い。これだから人間は弱過ぎる。面倒臭い。

けれど、そう思いながらもやはり零した。


「……………悪かったな。」


人間だけど湊は他のとは少し違う。

こんな事で失いたくはない。

それに、誰かが恐怖で泣き叫ぶ様は見ていて心地が良いものではない。


「あ、暁?僕は大丈夫だよ?そんなに気を落とさないで。ね?僕もちょっと大袈裟過ぎたかも?」


普段と違った様子に戸惑いながら、優しく手を差し伸べる湊。

ついさっき焼き払われそうになったにも関わらず、こいつは本当に変わっている。


(ああ…格好悪…)


顔を横に乱暴に振り、軽く息を吐くと視線を雷夢に移す。

雷夢はこちらを見ずに…けれど、変わらず不機嫌全開である。


「…オレは諦めないからな。」

「…」

「お前だって、平和を望むなら、このままで良いなんて思ってねーだろ?」


雷夢は視線だけ、こちらに向けてきた。


「…知っている。」

「だったら…っ!!」

「…けれど、大人しく従った所で果たして本当に上手くいくと貴様は思うのか?」


深い紫色の瞳は強い意志を持ち、見ているだけで雷夢の覚悟が伝わってくる気がする。


「平和平和と、そればかりを気にして得た平和は本当に幸せだと俺は思わない。」


言い放たれた言葉に思わず拳を強く握る。


「ふ、二人共落ち着いて!ね?」


ただならぬ空気に湊がワタワタとオレ達を交互に見る。


「…暁。何かを犠牲にした幸せに真価などない。いつかきっと綻びが生じ、呆気なく崩れ去ってしまう。」

「…」

「貴様は、それを身を以て知っていると思ったんだがな…?」


途端にバッと大きな翼を広げる。


「暁っ!?」


突然の事に驚く湊に構わず、広げた翼を羽ばたかせ教会の二階窓に手をかける。


「…待ってろ。オレが必ず奇跡を見つけてやるからな」


そう言って思い切り窓を開け制止する湊の声を振り切りオレは白い翼を灰色に淀む空に羽ばたかせた。

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