【冬純祭参加作品】「雨の日に」/「現代的黙示録」 (共に一部改稿あり)
うみのまぐろ 様の主催する「冬の純文学祭り」に、過去に投稿済みの二作品を僅かに改稿して参加しました。
「雨の日に」
「時は何よりも尊い」
その言葉を背負い
腐ってしまったとき
僕は 夢なんて見ない。
なにもない日に
なにごとも考えず
無聊を慰めることもなく
ただ 秒針に 身を恃む。
この星の限りから
世界を背負う辛さが
数えきれない 涙が
大地に 反響している。
雨音へ目を瞑る
永遠を夢見ない僕。
夢よりも 瞼に広がる
なお深く 昏い 寛ぎ。
「現代的黙示録」
黄金を取り尽くし、黒ずんだ銀は過ぎ、
幾星霜をめくりめくりて鈍色の時は来り。
摩天楼に弱視の巫女たちは居座り、
おのおのがわめき、艶艶とした髪を振り乱し、
「尊きは個人の命」「いいえ、社会という総体」
時に黒々とした驟雨となり、
理性は薄氷、奔流たる野生。
命の樹形図をくだる淀み、
葉脈の一端にまでも及び、
歴史を刻み、刻まれる嗜虐性。
近親相姦はサバンナで横行し、
循環する種子、欠落を孕み。
有色を嘲笑う純白を傍目に、
いまかいまかと、鉈を研ぎすまし、
貧困窟に潜んでいる神話の悲劇。
濛々と炭を喰らう列車が野獣の幼児を曳き、
天より降りそそぐ岩々を止める術はない。
瓦礫より孫生えのごとく芽吹くは尻軽な神々、
歴史の再生に空気を求めて喘ぐ巫女たちと舞う埃、
銀行員たちが目をぎらつかせて集める紙切れ、紙幣。
森羅万象を支配せんとする数式。
人類は放尿の瞬間に全能感を追憶し、
安息地と未発見を取り持つ両向きの矢印。
神に至らんとタキオンは手淫から研究となり、
それを嗤い、見下し、定速に甘んじ、
すべてを俯瞰してなお、冷徹に無関心な光。
あらゆる悲鳴はその軌跡を捉ええない。
いかなる時間も光の刹那であり、
定員の超過した終電列車は停止間近。
四つん這いの枯木に腰かける何十億の家畜、
蒙昧にも微睡み、神は欠伸を制帽でかくし、
なお鳴りやまない、混色の赤ん坊の夜泣き。