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第四話.孤児院訪問

 そうしてジェードは三人の魔物娘を連れてヘリオス教会孤児院へ向かう。


 不在の間の世界樹の運営は助手の犬耳メイド、ラピスさんに任せてある。


 ちなみにジェードも現場に行くことが決まった時、ラピスさんにひどく怒られてしまった。

 まったくいっつも彼女には迷惑をかけている。ジェードが初めて魔物召喚に成功したときからずっと右腕としてジェードを支えてくれた。


 四大魔帝の四人はまさにジェードの右腕。その能力も知能も他のモンスターとはかけ離れているのだ。とっさの判断力が必要とされる難しい仕事も任せることができる。とくにラピスは社長なくても世界樹の経営を任せられるほどなのである。


 ちなみに他の四大魔帝、バハムートのさつきさんは100の軍団を引き連れ、コル・レオニス海峡で橋の建設をおこなっている。フェニックスのフェニシアちゃんは12体の部下を引き連れて、南のエルナト大陸にルーンテレビのドラマ撮影の手伝いに行っている。

 メデューサのサナさんは、ダンジョンの奥に引きこもってPCでなんかやってる。


 ま、というのはどうでもいいとして。



「ここが、ヘリオス教会の孤児院です」

 と、案内されジェードが扉を開けた瞬間である。


「やあああああああああああああああああああああああっ!」

 となんか子供の一人が木刀を持ってジェードに向かって飛び込んできたのである。


「っあ。なんだ!?」

 もちろんジェードはそれをかわすが。この子供……。


 おそらく年齢は10歳前後と言うところだろう。だがこの身のこなし……職業スキル持ちか? レベルも相当だ。30か、40……。


「社長!」


「いや、大丈夫」

 かけよってくるレイをそう言って止める。


「な、避けんなっ! くそっ!」

 とか言って懲りない子供はさらに木刀を振りかざしジェードに襲い掛かってくる。


「やんちゃぼうずは、めっですよ!」

 とくうちゃんは男の子の持っていた木刀を握りしめる。


「な。は、離せよ!」


 男の子は必死に木刀を引こうとするが、くうちゃんの握りしめた拳は離れない。


 それも当然だ。単純な筋力で言えば、レベル100の戦士よりも高いのだから。


「だいたいおれは坊主じゃねえ!」

 黒い短髪を揺らしながら子供は言う。


「おれは女だ。ちくしょう」


「ええ?」

 思わずジェードはすっとんきょんな声を上げる。


 まあ言われてみれば女の子らしい面影もあるか? とはいえ年齢とその素行からまるで思えないけれど。まあまだ2次性徴も迎えていない年ごろだろう。性別が分からないのもうなずけるが。


「オルテ、やめなさい! この人たちは今日からここで働いてくれる職員です」


「……職員?」

 と、オルテと呼ばれた女の子は怪訝そうにジェードたちを見る。



「申し訳ございません。彼女はオルテミス。この孤児院では一番長く最年長なので、このように子供たちをまとめてくれているのです。ただそれが行き過ぎることがよくありまして。前に教会を騙そうとした商人を3か月の病院送りにしたことも……」


「そ、そうなんですね」

 というわけらしい。


 彼女を視るとレベルは47。年齢は11歳。この歳でこのレベルは破格だ。


 おそらく……勇者の適合か!!


「だいたい、職員って、まだ子供じゃん」

 と、そんなことを考えていると、オルテはため息をつきながらそう言ったのである。


「む」

 たしかにジェードは魔族とのハーフのため人間より成長が遅くみられる。それでもれっきとした18歳、成人だ。


 ちなみにロタネブ王国含め、国連加盟国の多くが15歳以上を成人として認めている。一部の国では聖人と言う概念がなかったり、別の年齢を指定することもあるが。


 ともかくジェードは立派な大人なのだ。


 くうちゃんやセレナも見た目は子供だが、モンスターだし、能力的にも知能的にも立派な大人だ。


「わーい子供たちがいっぱいだー」

 と、子供たちの輪の中に入っていく。


「わたし、くうちゃんっていうの! よろしくね」

 とか子供たちと楽しそうに話している。まあ彼女は元々子供たちの輪に溶け込みやすいだろうと連れてきたわけだし。


「け。おれは認めねえぞ」


「オルテちゃん……」


 オルテはぽいと木刀を投げて壁に背中を向けて腰かける。


「ここは俺が守るんだ」

 そして確かにそう言った。


「……きみ、それって」


「生意気なくそガキですね」

 と、ジェードを遮ってレイがつぶやく。


「おいおい」


 そんなわけで孤児院での臨時職員の仕事が始まる。


 孤児院でやることは基本的に子供たちの世話と教育だ。


 ちなみにロタネブ王国の識字率は95%を超えるとされている。5歳から10歳の初等教育は国民全員が受けるよう定められているからだ。しかもすべて税金で賄われ実質無償で通うことができる。しかしながらこの孤児院で学校に行っている者は限られている。


 国籍がないからだ。ちなみに識字率95%と言うのも国籍がある存在のみに限った話だ。孤児院に通う子供の多くは国籍がないためそもそもデータからはじかれている。


 そんなわけで孤児院では独自に授業をして最低限の知識を子供たちに与えている。


「じゃあ、授業を始めます」


 くうとセイラは子供たちと一緒に授業を受けさせることにする。初めての授業だが、騒ぐことなく、熱心に受けている。まだ幼いモンスター娘たちは、学校に通わせることも検討したほうがいいかもしれないな。


 いや、学校に通わせるというのは現実的ではないとはいえ、教師を雇って城で授業を行うとか。


 授業は主に読み書き計算だが、歴史や一般教養の授業も行う。今日はセレスさんの頼みもあり、スキルとレベルについて講義を行うこととなった。


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