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第十話.魔王職

「もうやめてぇえええええええええええええええええっ!」


「イグニス、きちゃだめ!」


 セレスの言葉で振り返る。


 教会の奥の扉。赤髪の獣人がそこにはいた。


「みんなに、オルテくんに手を出さないで」


 そう言ってイグニスはゆっくりとクリュプタに近づいていく。


「おやおや。これは殊勝な子供だ。もともとの目的は君だけだからな」

 そう言ってクリュプタは手を伸ばす。


「まずいっ!」


 本気を出すか? 魔王職……その神髄を。


「クフフフ。アハハハハハッ。これで私も、『深淵の獅子団』の一員だ」


 クリュプタは向かってきたイグニスに手を伸ばす。


「ながっ」

 が、その腕がイグニスに届く瞬間、腕がはじけ飛んだのである。


「なんだとっ!」


 オルテである。彼が剣をクリュプタに振り下ろしていたのだ。


「く。う。て、めえ、何やってる。おれは主人だぞっ!」

 そういう、が、しかりゆっくりとオルテは顔を上げる。


「すっきり……してる。頭」

 その瞳には、しかし光が宿っていた。


「くそガキ。おまえ……」


「イグニスに手を出すな」

 静かにそう告げる。


「これがおまえのカリスマか!」

 いや、瞳だけではない。体中から光があふれだしたのである。


「くそ。全員、こいつにかかれ!」

 クリュプタの言葉で6人の屍たちがオルテに向かうが、全員がオルテの半径1メートル以内に入ると、崩れ落ちる。


「おれはもう誰も傷つけさせない!」


「効果範囲内の能力を解除する能力があるのか? しかも……」

 傷だらけだったオルテの体が修復していく。


「俺の死霊の能力の、メリットだけを享受しているというのか? 体の傷を治し、レベルアップの効果だけを自身に!」


 天性の才能!


「うぉおおおおおおおおおおおおっ!」

 オルテは怒涛の叫び声をあげながらクリュプタにとびかかる。


「だが、ならばおれの能力を解除するだけ」


 クリュプタは自身の能力を解く。そうすればレベルアップ効果もなくなり、オルテのカリスマも解かれる。


「さらにレベル50程度の攻撃なら。簡単に撃墜できる」


 そう言ってクリュプタはオルテに向かって殴りかかる。が、その腕をジェードは掴んでいた。


「もういいや。見たいものは見れたし。終わらせる」


「貴様……」


「魔王スキル」

 そう言って、ジェードは右腕を頭上に掲げる。


「出でよ、バハムート」

 空間に暗黒の球体が浮かび上がる。


「時空の扉は開かれた」

 魔王は自由に魔物を呼び出すことができるのである!


「固有スキルを使うまでもない」


 そこから現れる。鋼の肉体とすべてを切り裂く爪を揺らし、黄金の翼をはためかせる存在。


「ちょ、しゃちょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ! わたし仕事中だったんだけど」

 四大魔帝の一人、バハムートのさつきさんである。


 大地を切り裂き、天空をもやし、世界を破壊する、最強の魔物の一人。



「ごめん。終わったら休暇出すからさ」


「約束だよ」

 と、そう言いながら、さつきはクリュプタの頭を握りしめていた。


「ぐ。あ、ああ、あああああっ」

 そのままさつきはクリュプタの体を持ち上げる。


「で、お前はどう責任取るつもりだ」

 ゴキゴキと骨がきしむ音が聞こえる。


「くぁあああああああああああ。死霊!!」

 その瞬間、またクリュプタは能力を発動する。


 また6人の男たちが起き上がる。


 その全員がさつきに向かう。が、男たちの剣がさつきの体の前で止まっていた。

 

「おまえら、なまくらで私の体を切り裂けると思っているのか?」


 その瞬間、天井が崩れ落ち、さつきの頭上に雷撃が落ちる。


「……ふん。熱いな」


 別の能力者か。たしかにさらにほかに二人、まだ能力が未確定な能力者がいる。彼らの能力が明らかにならない限り戦況はまだどちらに転ぶかわからないか。いや、問題ないだろう。なぜなら屍たちにはオルテに感じたような胸の高まりがない。大したカリスマは持っていない。


「くぅおおおおおおお、なら術者をねらえ!」


 屍の一体がその言葉で瞬時に矛先をジェードに変える。


「な!?」

 油断した。


 屍の持つ剣がジェードに向かって振り下ろされる。


 が、ガンッと言う金属音が響き、剣先が空中を舞う。


「いてて」

 右腕だった。ジェードは顔の前にそれを掲げる。その腕に当たり、剣は当然のように折れたのだ。


「あのさあ。なまくらで私の体は切り裂けねえって言ったろ? 社長は私の主人だ。私より弱いとでも思ったか?」


「な、ば……バカな」


「まあいいや。死ね」

 と、次の瞬間、ぐちゃりと、音を立てて、クリュプタの頭がはじける。


 終わりだった。クリュプタの死体がどさりと地面に降る。


「ありがとうさつき。やっぱりレベル100超えになると普通の魔物じゃ厳しいのか」


「そりゃ、社長がもっとレベル上げてくれればわたしらは相対的に強くなるけど。カリスマ使いはうちらじゃないと厳しいんじゃない? 先代の時もそうだったしさ。ってか社長自分でやりゃーいいじゃん」

 そうつまらなそうに言う。


「でさ、もう帰っていい? 現場そのままだしさー。まだ建設中なんだよ」


 そう言ってさつきは黄金の翼をはためかせる。


「ああ、ありがとう」


「社長さあ。好きな場所に魔物送る能力も早く発現させてよ。お母さんはできてたよ」

 面目ない限りだ。


 ジェードは自由に魔物を呼び出す力があるが、任意の場所に魔物を移動させることはできないのだ。


 というわけで、さつきは飛び立っていく。

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