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第九章.世界最高能力者

「いや……違うな」


 違う。商人スキルがそれを告げる。たしかに実力は相当のものだが、オプスキュリテの構成員ならそれを示す圧倒的圧力があるはず。


「ご名答だ。たしかに、今は違う。深淵の獅子団は、ならず者にとっては憧れだ。深淵の獅子団に入れば一生安泰ですからね。僕はレベル108。カリスマ使いでもある。そんな僕に、彼らはある任務をくれた」


「それが……」

 ウヴァーリ族を誘拐する理由か!


「そう。この孤児院は獣人のガキを匿っている。素直に渡せば、殺しあうことなんてなかったのだがね」


『深淵の獅子団』っ! 名前を騙っているだけかと思ったが、かかわってきたか。


 たしかにイグニスがずっと地下に匿われていたのなら彼女がここにいることを悟ることは不可能だ。とはいえ『深淵の獅子団』ならそれも可能だろう。盗賊職の最上位級スキルがあれば隠された金目の物の存在を認識することなど簡単にできる。


 やるしかないか……。


「三人とも下がって。おれが行く」


「でも、お兄ちゃん……」

 三人とも単純なステータスならレベル100の敵に負けるゆえんはない。


 ただしカリスマ使い(カリスマティカ)なら話が別だ。


「一人で戦うつもりか?」

 そう言ってクリュプタが両手を広げる。すると六人の男たちは彼を守るように陣形を作る。


「まあ、こちとら大魔王やってるんで」

 そう言ってジェードは剣を抜く。


「久しぶりにやらせてもらう」

 ジェードはそう言ってクリュプタに向かって走る。


「ぼくを守れ」


「遅い」

 瞬間、男たちの体が吹き飛ぶ。全員四肢が切断され地面に降る。


「……胸糞悪い感触だが、お前は死者を操る能力があるんだろ? だったら命を奪うよりは体を破壊して戦闘不能に陥らせるしかない」


「甘いな」

 そう言ってクリュプタは腕を振るう。その瞬間、四肢のちぎれた死体が組み合わさり、元に戻る。


 そしてそのままジェードに剣を振り下ろす。


「ちっ!」

 ギリギリのところでそれをよける。


 ジェードはまた後方へと下がる。


「くそ……」


 死者を自由に操る能力。体を回復させることもできるのか。それに、明らかに最初に闘ったときよりも力が上がっている。操る死者のレベルを上げることができるのか?


「俺はね。意識のない人間の体を操ることができる。それは死んでいようが生きていようが関係ない。さらに操っている人間のレベルを倍に引き上げることができるんだ。意味が分かるか?」


「……まさか」

 その瞬間である。男の一人の体がゴキゴキと音を立てて変化していく。


「こいつらのレベルは全員50を超えていた。わかるか?」


「うそだろ」

 ひとりの男の体が獣に変わっていたのである。


 死者たちでありながらカリスマにたどり着けたということか?


「セイラッ! 子供たちを奥に隠せ。レイ、くう構えろ」

 だが次の瞬間、獣に変わった男が、ジェードの隣を通過する。


「はやっ……」

「くっ」


 セイラがそれを抑えようとするが、吹き飛び壁に激突する。


「やばい、子供たちが」


「うぉあああああああああああああああああっ!」


 いつの間にだろう。オルテはセイラが持っていた剣を握りしめ、獣に化した男にとび向かっていたのである。


「うぁああああああああああああああああああ」

 が、オルテは一瞬で獣に攻撃されはじけ飛ぶ。


「ぎゃう」


 壁にぶつかったオルテは血を流して崩れ落ちる。


 まずいな……。このメンバーじゃ勝てないか?


「ぐ、ぐぐ……」

 しかしオルテは起き上がっていた。


「おお」


 思わずジェードは微笑む。やっぱりすごい才能だ。


 とは言え早過ぎる。今のままでは勝てない。いずれ、こいつらにも勝てるようになるだろうが。


「く、くそ。おれが守るんだっ! 俺がみんなを守るんだぁあああああああああああ!」


 そう言って震える拳で剣を握りしめて獣へと向かう。


 が、その目の前に別の男が現れていた。


「早い……」

 瞬間移動か?


 その男が、オルテのみぞおちにけりを放っていた。


「ぎゃぁあっ」


 そのまま体が跳ねたオルテは何度も地面を転がりながら壁に激突する。だが、立ち上がる。


「ふうん。獣人以外にも、欲しい人材がいるね」

 パンパンと楽しそうにクリュプタは手を叩く。


「お兄ちゃん、こいつら、強いよ」


 くうちゃんは必死に棍棒を振るっているが、敵の能力者の一体、鋼のように体が硬くなった男には一切聞いていないようだ。


 獣になる能力者、瞬間移動能力者、体を鋼のように変える能力者か。


 彼らは大した能力者じゃない。一体一体は。しかし……クリュプタ。死者を操る能力。相当強い……。


 カリスマティカが都合7人。厳しいか?


 冷や汗がぽたりと垂れる。


「フフ。カリスマティカが7人、と思っているのでしょうが、違います」


 と次の瞬間である。瞬間移動能力者が、オルテの体を羽交い絞めにしてクリュプタの元へと連れてきたのである。


「うぐ、あ。はな、せ」


「子供たちに手を出さないで!!!」


 悲痛の叫びをセレスを上げる。


 だが。


「関係ないね!」


「ぐぎゃ」

 クリュプタはオルテの首元に手刀を叩きつける。


 そのままオルテは地面に崩れ落ちる。



「さて」


 が、そのままオルテは何事もなかったように立ち上がる。いや、違う。オルテの目はうつろに輝く。操られている!


 しかも……。

 オルテはジェードに襲い掛かる。


「くっ!」


 ジェードはすんでのところでオルテの攻撃を剣で防ぐが、速い!

 しかも、重いっ!


「やばい。油断した……」


 気絶させられたものは全員敵に回る、ということだ。しかも死者は体をバラバラにしようが相手の指揮下の中では復活する。


世界最高能力者(デストリュクシオン)』クラスだ。こんなのが誰にも知られずひっそり活動していたなんて。

 

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