6ページ目 〜異常事態〜
「さて、そろそろ反応が出そうな時刻になってきたね」
俺は、退屈そうに座り込み、空を見上げている。
そして、先程から彼女は俺の横で何一つ見逃さないと言わんばかりに魔方陣をじっと見つめている。
「なぁ、さっきからずっとそれを見ているけど魔方陣が反応してから確認するのはダメなのか?」
「ダメでは無いさ。でも、僕は魔具探しは慎重ぐらいで良いと思っているのさ」
いやいや、流石にそれは慎重過ぎるだろうよ。いくら魔具とは言えメトロノームだ、反応すればそこにある事は間違いない。
「おっ、魔力の反応が出た様だよ。」
おぉ、ついに魔具のお出ましか。この調子ならばすぐに仕事が終わるはずだ。
「……ちょっと待って⁉︎ どうやら様子がおかしい!」
「様子がおかしい? 何が起きたんだ?」
「校内の至るところで反応が出たんだよ!」
前言撤回、どうやら面倒な事が起きた様だ。しかし、所詮はメトロノーム。いくつもある可能性だってーー
「なぁ、その魔具が複数個存在する可能性は?」
「いや、そんなはずはないよ。魔具の複製は量産型じゃない限りは非常に手間と時間がかかる。この魔具を複製し、学校に設置して僕らを撹乱する意味が無い。
……とりあえず、しらみつぶしに調べるしか無さそうだね。」
たった一つしか魔具は無いのか。彼女が言う様にしらみつぶしに探すしかなさそうだ。
それにしても、どうして至るところの魔方陣が反応したんだ?
「この様子だと、ほとんどの魔方陣に反応しているな」
先程、魔方陣を貼った位置なら大体覚えているはずだ。俺は、その場から立ち上がり屋内に戻ろうとした直後の事だった。
「待って! 君に渡す物があるんだ」
彼女は先程、魔方陣を取り出したトランクケースを開け、両手で持てるぐらいの大きさのカラフルな箱を取り出す。
「何だ、それは?」
「……最初は、この仕事が終わったら君に渡すつもりだったんだよ。ただ、この様な事態が起きているから今の内に渡そうと思ってね」
俺はその箱を彼女から受け取り、早速蓋を開けた。
「これは……靴か?」
中には、赤と青、そして白を基調としたスポーティな雰囲気のスニーカーが布に包まれていた。
「それは【蹴足\収束 靴】スナイプシューズ。 その靴を履くと蹴る時の力が何倍にもなるんだ。もちろん、何か物を蹴る以外にも地面や壁も蹴る事で速く走ったり、壁を蹴破る事も出来るよ」
「わかった、とりあえず履いてみるよ」
俺は革靴を脱ぎ、カラフルなスニーカーに履き替える。
この時にまず第一に感じた事は軽い。よく広告とかで足にフィットする感覚と言うが、まさにその感覚だった。一瞬、履いていないと思ってしまうぐらいの軽さだ。
「君に渡す魔具をどれにしようか悩んでいたんだけど、今の君が使えそうなのはそれしか持ってなくてね。とはいえ、素手……いや、素足で魔具に立ち向かうには心許なく感じてね」
「いや、これで満足さ。ありがとな」
「……ただ、いくらその靴があるとはいえ君は魔法が使える人間でも無いし、他の武器や防具も無い。だから、自分の身を第一に考えてくれ」
「あぁ、わかっているさ」
俺はそう告げると、先程魔方陣を貼ったの場所に向かって駆け出した。一刻も早くこの反応の原因を調べ、魔具を見つけるために。
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「全く……真実は全然信じてくれないし、学校に忘れ物をするし、今日はついてない日ね」
この時、彼女ーー沢海 翔子は友人への愚痴をこぼしながら彼女は廊下を歩いて、自分の教室へ忘れ物を取るために戻って行く。その教室のすぐ近くに魔方陣を貼ってある事も気付く訳も無くーー。
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「さて、まずは一つ目発見ってところかな。
見たところ、変なところは見当たら無いね」
周りに人気がいないのを確認して、フェイは階段に貼ってある魔方陣に触れようと手を掛けた。
「っ⁉︎」
しかし、その時、壁に貼ってあった全てのポスターがいきなりビリビリと音を立てて破れ去った。
「今のは魔具の力か? でも、どうして僕が魔方陣に手を掛けた瞬間に……。
とはいえ、まずは魔方陣の様子を調べてみるか」
次に、魔方陣に触れた時には周りの物は音を上げる事も無く、何も起きなかった。
「2回目に触れても、周りの物に何の影響は無い。ポスターが無くなったから? それとも、何か別の理由?
……今の現象だけからは何も言えないな。判断するにはもっとサンプルが必要そうだ」
彼女はそう呟くと、次の魔方陣に向かって歩き始めた。