5ページ目 〜下準備〜
あの時の俺はまさか、学校が魔具の力の影響を受けているとは思ってもなかった。そして、俺の初めての仕事が学校で行われるということも。
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「で、一体どうすればいいんだ? 俺は魔具の力を未だに知らないんだが……。」
「あぁ、その点なら僕も調べてみたんだ。けれども、力については一切の情報が無くてね。もし、発見したとしても君は決して触らずに僕に教える様にする、いいね?」
「そうだな、下手に触って力を発動させてしまう訳にもいかないからな」
「とは言え、まずは学校の調査からだね。今から君の学校に行って本当に魔具があるかどうかを調べてみよう」
それにしても、未だに実感がわかない。一体どうして俺の学校に魔具があるかもしれないんだ?
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「へぇ、ここがお化けが出るって噂の学校か」
別にお化けが出るとは限らないからな? もしかしたら、違うかもしれない。……とはいえ、俺もきっぱりと違うと言い切れないんだが。
「ところで、どうやって魔具を探すつもりなんだ? 何か良い方法でもあるのか?」
「いや、魔具を探す時に特に有効な方法なんて無いよ。あるとすれば、魔具が起こした現象から遡って地道に調べていくことが一番良い方法だね」
俺は魔具自体は案外あっさり見つけるものだと思っていて、その力を調べることが重要だと思っていたが、どうやら違かったらしい。
「なら、その魔具の起こした現象を調べてみる事が最初にやるべきことなんだな」
「うん、君の友達が言っていた噂話がもしも本当ならば魔具の起こした現象の可能性は高いからね」
そうして俺と彼女は学校の中でお化けが出るかどうかを確かめる為に張り込む事にした。
「でも、どこに張り込むんだ? 魔法使いである君の姿を誰かに見られる訳にもいかないだろ」
「屋上はどうだろう? 見られる可能性も低いはずだ」
「どうだろうな。一応鍵とかはかかってないとは言え、屋外だと校内に現れたお化けの姿は確認出来ないと思うぞ」
「そう言われてみれば、そうだね。……仕方ない、これを使うか」
彼女は空間魔法を使って目の前にトランクケースを出して、蓋をあける。
「なぁ、何を探しているんだ?」
「魔方陣の書いてある用紙だよ。この用紙は2つの種類があって、簡単に言うと一つは魔力に反応する監視カメラで、もう一つはその監視カメラを総括するモニターだね。
今日、君と待ち合わせした時にも使った物と性能はほとんど同じだね。」
「なるほど、それなら屋上にいても学校中を監視できるな。それで、どこに貼るんだ?」
「とりあえず、廊下の角とか、階段のある場所がいいかな。」
確かに、見通しの良い場所の方がいいな。しかし、そんなに簡単にお化けは出て来てくれるのだろうか? だが、考えていてもしょうがない。まずはその魔方陣に反応してくれる事を祈るばかりだ。
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「よし、貼り終わったぞ。」
俺は校内の至る所に魔方陣を貼り、再び屋上に戻ってきた。魔方陣といっても定期券サイズの物であったが、一応人目に着かない様にしておいた。
「ん、お疲れ様。君が貼ってる最中には反応してなかったから、今はお化けが出る時間帯では無さそうだね。でも、これからが本番だ。そろそろ日が沈むはずだ」
ーーこの夜が初めての仕事を行った夜であったと俺は絶対に忘れないだろう。そして、あの魔具の力とこの学校にまつわる噂話も。