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僕とピアノと日記と彼女  作者: 明日野 日向
1/1

僕とピアノと日記と彼女          

言葉足らずな点は許して頂けると光栄です。

コメント頂けると尚、光栄です。


「始めるよ」

いつからか習慣となった合図と共に

ぼくは鍵盤を落としていく。

もう何度弾いたかも分からない程

僕は1人で毎日毎日

ピアノに向かい

ピアノだけのこの部屋に。

僕は曲を響かせた。

何日も、何ヶ月も、何年までも―――――


時々思う事がある

僕は何故弾き続けているのだろう、と

しかしその時々が何度来ようと、

僕がその記憶を思い出す事はなかった。

しかし思い出す事がないとしても

僕は夜11時には、

ピアノの前へと向かっていた。


とある日の夜

大量に出来た本の塔を整理していた僕の背中に

バランスを失った本の塔が一本の棒の様に倒れてきた。

痛む背中を押さえながら塔から山へとなった本の下から出ると山の上に見慣れない

太く古い日記を見つけた。

すっ、と表紙をめくった。

《一日目》左上の角にインクで書かれたページの文章に視線を落とす。

《彼といると楽しい。》

細く綺麗な字で書かれた、ただただ一言の1ページ目。

その日記は僕のものではなかった。

だがそのただただ一言に僕は違和感を感じた。

元々、誰の物で何故ここにあるのだろう。と言う違和感はあった。

だが、その違和感ではない。

何か僕の頭の中をぐるぐると回る様な不思議な感覚が

僕を襲っていた。

僕は次へとページをめくった。

しかし次のページも、いや、更に次その次も

《~日目》以外の文章は、ただただ

《彼といると楽しい。》

だった。

新たな疑問を抱きながらも僕はページをめくり続けた。

そして数十ページほどめくった時

《今日は彼のコンサートがあった。見に行けなくて悲しい。》

という文が現れた。

何故見に行く事が出来なかったのだろう。

疑問が深まる。

次のページの文章はまた元の

《彼といると楽しい》

に戻っていた。

さらにページをめくる。

しかし、やはり次のページも今までと同じ―――

《彼といると楽――――》

―――いや、違う。

楽という文字の最後の払いの部分が伸ばされ続け、ページの角まで伸びていた。

そしてその右下の角には、赤く乾いた染みがあった。

この染みはまさか―――――

そう思いながら再度次のページへ手をいれる

赤い染みは次のページにも滲み、染めていた。

しかしそんな物よりもっと目を惹く物があった。

それは文章だった。

《今日彼が散歩へ連れて行ってくれる。》

何故か未来形で書かれた文章。

さらに染みが少し薄くなった次のページの文章は、

《今日は彼が海を見に連れて行ってくれる。》

だった。

楽しそうな情景が書かれた文章は

めくる事に赤の染みをこの日記のページの様に

薄れさせてくれる様な幸せに満ち溢れていた。

しかし、あの何か僕の頭の中をぐるぐると回る様な不思議な感覚が僕を襲い続け、

僕はどこか穏やかになる事が出来なかった。

さらに先のページの文章は

《今日は~~に》や《彼が私を~~》

と幸せの文章が続いていた。

そして30ページ程進んだ、とあるページに

《今日は○○○○の家へと行く》

とおそらく「彼」の名前であると思われる文が含まれた文章が現れた。

その名前に僕は戦慄した。

その名前の主は

僕だったのだから。

その文章を見た瞬間、何かが頭の中で弾けた。

僕は膝からがくんと崩れ落ちた僕は顔に涙を流しながら、

「なんで・・・・こんな事・・・・忘れっ・・・・っ!」

と、誰にも聞こえない声で小さく叫んだ。

そうだ。どうして忘れていたのだろう。

優しくて、笑顔がとても綺麗で、とてもとても大好きだった。そして

治らない。とてもとても重い病気だった、彼女を。

何度にも及ぶ手術の最中で僕のピアノのコンクールに来ることが出来なかった

彼女の悲しげな顔を。

突然吐血し余命1ヶ月と彼女に下された時の絶望を。

夜11時、看護師さん達の徘徊が終わった頃、毎日病院に行き彼女を連れ出し、

沢山の所へと行った1ヶ月の思い出を。

最後のあの日、

かつてのコンサートのかわりにと、

彼女を僕の家へと招き入れ、

ピアノを弾いてあげていた時の彼女の綺麗な笑顔を。

毎日聞きたいと言う彼女に肯定した僕に向けられた小指を。

指を切った瞬間吐かれた彼女の血に濡れた小指と

力無く地面に崩れ落ちる彼女を。

彼女の死という悲しい現実から、辛さから、目を背け、忘れ、逃げていた。

嗚呼。そうだ。僕は彼女のために毎日毎日、ピアノに向かって―――――。

長い時間がたった。

日記のページはここで途切れていた。

涙を枯らした僕は静かに日記を閉じた。

不意に時計を見た。

時計は11時少し前を指していた。

ピアノを弾こう。

そう立ち上がった僕の鼻に何か焦げたような匂いが漂ってきた。

何かと思い自室のドアを開くと自室の横のリビングがキッチンを中心に火の海と化していた。

急に肌が物凄い熱さを感じる。

しかし家を出る分にはまだ間に合う。

僕は玄関へと走り玄関の戸のドアノブに手を掛けた。

とその瞬間

ボーン・・・ボーン・・・

とまだ焼けていなかった置き時計がなった。

11時になった。

ドアを開いていた僕は足を止め、

ピアノのある部屋を目に止めた。

僕はドアを閉めた。

ピアノのある部屋の中で――――――


「始めるよ」

習慣となった合図と共に

ぼくは鍵盤を落としていく。

ドアの向こうで何か大きな物が落ちるおとがした。

だがそんな物には構わない。

僕は引き続けた。

壁が燃え、息をするのが困難になる。

しかし僕は引き続けた。

最後の音符を響かせる。

その瞬間息をする事が完全に出来なくなった。

諦めに僕はまだ燃えていないピアノの下の床へ寝そべった。

意識が薄れていく。

しかし最後の最後。

横を向いて寝そべっていた僕の視線の先に足が見えた。

家の客人用スリッパを履いた細いあし。

あれは・・・。

と。僕の意識は途絶えた。


目を開く。見えたのは白い天井。

口には管付きのマスク。

あぁ、ここは。

「気がつきましたか。ここは病院です。聞こえますか?」

隣に居た看護服の女性が問う。

僕は首を前に動かし肯定を示した。

生きていたんだ、僕は。

そう感じた。


時は経ち、僕は退院し新たな家で新たなピアノを弾いていた。

そんなある日。

消防隊の人が来て僕に一つの疑問をなげかけてきた。

貴方は1人暮らしですか?と

僕は肯定を示し、そんな事を聞く理由を問いた。

すると消防隊の人は、

女の人の声が貴方が居た部屋へと導いてくれた。

と答えてくれた。

消防隊の人が帰った後。

僕は燃えなかった物の中から、

何故か燃えていなかった一冊の日記を取り出し、

ありがとう。

と日記を抱きしめ、呟いた。

読んで頂き光栄の極みです。

初投稿の作品です。

今回小説を書く大変さをしりました。


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