豪邸にお邪魔します
山垣先輩が女物の雑誌non・nyoを片手に笑顔で、自分の好きな女性の服装を語り出す。
聞いてみると以外にもゆるふわ系の服が好きとのことで、服は何故か所持していると言う山垣先輩の家に向かう事になった。
容姿からすれば案外いいとこの長身爽やか坊ちゃん系の感じなのだが、それは着くまでの楽しみにしておこう。
「って言うかそれより・・・」
「ん?」
「ん?じゃねぇよ!何で俺の女装姿を拝見しに来てんだよ!恥ずかしいから来るなよ!」
え・・・なんで?みたいな顔するなよ!親友に見られるのが、家族の次に嫌なのに。ただでさえ容姿と声が女っぽいって言うのに。女装して褒められると多分、ドップリハマりそうで怖いんだよな。そこだけは己を持ってさえすればカバーできるだろうけど。
閑静な住宅街に入り、明らかに高級な物件ばかりが連なる中でも、一際目立つ大きな家。その家の表札に目をやると、そこには「山垣」の文字が彫られていた。やはり金持ちのボンボンなのか。
「さぁ、入ってくれ。あらかじめメイドに行って門は開けてある」
やはり金持ち名物メイドがいるのか。メイドと言えばあの服装だよな・・・・もしかして用意されてる服ってメイド服とかなのかな?いや、違う事を祈ろう。
「嫌なら正直に言えよ。それで何か言われても、俺が守ってやるから」
高舘はそっと俺の手を握り始める。
「なぁ、高舘・・・どうしたの?」
「俺が、守るから」
次第に握る力が強くなる。
「い、痛いよ!」
「すまん・・・・」
本当にどうしてしまったんだろう。自分より先に先輩が守ったから嫉妬しているんだろうか?
そんな訳無いと思いつつも、どこか期待している自分がいる。守られているだけじゃ駄目だけど、今は高舘に身を預けたいと思う。しかも、先輩までいるんだ。
守られ続けるのも悪くないかも。
「じゃあドアを開けてもらうから、後ろに下がってて」
言われた通りに後ろに下がると、大きな扉が自動ドアの様に開く。高さは約3メートルはあるだろう。
恐る恐る中に入れば、アニメやドラマでしか見たことの無い光景が目に飛び込む。
メイドさんが一、二、三、四・・・・・一体何人いるんだ!?ざっと10人は越えているだろう。しかも全員可愛いふりふりのメイド服だ。これは、完全に先輩はメイドさんに御奉仕されている事だろう。羨やまけしからん!
「俺の部屋は廊下をひたすら真っ直ぐ行って、向日葵の絵画がある曲がり角を右に曲がった先の2つ目の場所だ。俺は着て欲しい服を選びに行くから、先に行って待ってて欲しい。退屈なら本棚にある本を勝手に読んでくれて構わない。じゃあ、早速選びに行ってくるよーーーー!!」
先輩は俺達に有無を言わせる前に、俊足で走り去った。余程早く着て欲しいのだろう。
てかメイドさんに連れて行ってもらった方がいいんじゃないか?まぁ、初めて来たのに烏滸がましいかな。
「じゃあ琴岸行くぞ。心配なら俺の手を握ってもらっても構わない」
「高舘・・・・・・・・・・男同士だから無理に決まってるじゃん。ホラ、行こっ」
ピシッと言う音が聞こえたが、多分メイドさんがお皿でも落としたのだろう。