完全に一目惚れ
果たして、俺はこのまま帰ってしまって良いのだろうか?念のために離れない方が良いのだろうか?
うーん。まいったな。こんな可愛い寝顔の男は初めて見た。パッと見女じゃないかと見間違えたくらいだからな。
助けを呼ぶ声が偶々聞こえたから良かったものの・・・・はぁ。我が校にもとうとう犯罪者が出てしまうとはな。これも俺の力不足だな。
しかし、助かってよかった。合気道とボクシングを習ってて良かったよ。
「う・・・・・・うぅん・・・・・・・・・ハッ!」
ベットから起き上がった彼は俺の顔を見て状況を把握したのか、大きなため息をついた。
「助けてくれたんですか?もしかして、俺もう襲われちゃったんですか!?その後に連れてきてくれたんですか?」
「大丈夫。ちゃんと君のけつの穴は守ったから。安心して?」
「よ・・・・良かったぁ。助けてくれてありがとうございます!俺、何でもします!この恩は返しきれない程ですが、頑張って返しますので!あの・・・・あの・・・」
あああああああ可愛いな~。俺は自称完璧モテ男で、女には不自由しなかったんだが・・・・・この俺がまさか、まさか男に惚れる訳・・・・ないよな?ないよね?
でも、でもでもでも!こんな可愛い顔されて惚れない男なんて・・・・・・・しかも、
「声までも女だもんな~!!」
「え?」
やべぇ、心の声が漏れだしてしまった。どうしよう、相手に俺の今の心境と気持ちばれてないかな?
動揺するな俺。完璧の俺がこんな男に惚れるなど言語道断!それより、何でもするって言ったしなぁ。何をしてもらおう。
「明日空いてるか?」
「は・・・・はい空いてます!何をすればいいでしょうか!?」
「じゃ、じゃあ。で・・・・・でで、デー・・・・」
バンッ
「琴岸ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいい!!!!!!!」
誰だこの男?
「おい、誰だこの男。まさかまだ不良が残っていたとわな!生徒会長の名に懸けて、この山垣咲夜!お前を生かして返すわけにはいかぬ!!!!」
「んだよ。やんのかてめぇ!!!」
どうしよう。この状況は俺にはキャパオーバーだよ。今日の出来事が濃厚すぎて、頭が痛くなってきた。
両者睨み合い牽制しあっている間が止めるチャンス。今このチャンスを逃す訳にはいかないな。
「止めて!二人とも!」
「「はいっ!」」
おぉう、忠実~。
「山垣先輩。この人は俺の・・・・・・・親友の高舘です。さっきの犯罪者集団の仲間じゃありません」
「琴岸・・・・・許してくれるのか?」
泣きそうな顔で俺を見るなよ。超照れくさいじゃないか。
きっと高舘は俺を探してくれてたんだな・・・・いつものように颯爽と現れては助けてくれるんだ。許さない訳ないじゃないか!
俺が女なら惚れてたよ。うん。
「なるほどなるほど。俺の早とちりだったわけか。これはお恥ずかしい所を見せてしまったようだな」
「いえ、山垣先輩は俺の命の恩人です。本当に何でもしますんで、何なりとお申し付けください!」
頭をつむじの向こうが見えるくらいまで下げ、誠意を見せる。
「まぁまぁ頭を上げなさいや。ん~何でもって言ったら難しいな。」
真剣に悩む山垣先輩はとうとう椅子に座ってまで悩みだした。俺はてっきり、生徒会の仕事を手伝うとかそう言うのを言うのかと思ったら、案外無茶な事を言っちゃったりするのかな?助けられた上に何でもするって言ったんだ。後からあーだこーだ言えない。
冷汗が額に伝う。関係ないのに高舘も震えだしている。
「じゃあ。明日・・・・・」
心臓がドキドキと音を立てる。相手に聞こえているだろうか?
「明日・・・・・・一緒に買い物をしよう。欲しいものがあるんだ」
「へぇ?」
思わず間抜けな声が漏れる。関係ないのに高舘も間抜けな声をだす。
「え?それだけでいいんですか!?何でもって言ったから、もっと無茶な事を言うのかと」
「おいおい。最後まで聞いてくれよ。服装は女物でよろしくね」
俺の思考が一時停止した。