救出作戦
「御開帳~ひゃはははっ」
履いているズボンを勢いよく脱がされる。無抵抗な俺をいいことに、好き勝手に暴言や卑猥な言葉を吐き続けた。
ズボンを脱がされた姿の俺を写メで撮る奴がいるが、抵抗する気力も残ってはいない。抵抗しようにも相手は数えると6人。逃げれる訳もない。でも、叫べば助けが来るだろう。まぁ、そんな事をすれば何をされるか分かったもんじゃ無い。
「ぅおしっ!次は上だ!その後はパンツだ!」
もう、どうでもいいんだ。どうでも。どうでも・・・・・・・・・
「!?」
駄目だ。どうでもいいって考えるたびに、昔の記憶がまた鮮明に頭に過る。心のどこかでまだ希望を抱いてるのかもしれない。
でも、もう騙されるのは嫌だ。裏切られるたびに泣くのはもう嫌だ。
「助けて・・・・・お母さん・・・・高舘・・・・・・」
消えそうな小さな声で、無意識に呟いている自分に気付き俺は決心した。
家族にはもう迷惑はかけたくない。そして、昔の記憶に鮮明に映る高舘の姿。イジメられてる時、いつも助けてくれたのは高舘だった。
今は誰の力も頼らず、自分自身で解決する番だ。もし逃げれたら高舘に謝ろう。
「おい。抵抗しない様にやれ」
「え・・・・・・?ちょっと!止めて!!」
「うっせぇな!黙ってヤられればいいんだよ!!」
ドスッ
お腹に衝撃が走ったと同時に、俺の視界は闇に呑み込まれていった。
急いで階段を駆け下り、連れ去っていった方面へと足を速める。確か一階の体育倉庫の方面に行ったはずだ。何かされる前に助け出さないと。
昔イジメられて泣いていた琴岸の姿を思い出す。その後、学校に来なくなって閉じこもってしまったあの頃。あいつの悲しい姿はもう見たくない。
「待ってろよ琴岸!今すぐ助け出してやるからな!それで琴岸は俺の事を・・・・・・うぉおおおおおおお!」
体育倉庫のドアに手をかける。俺は不良なんかに怖気る訳ない。もしボコボコに殴られたとしても、琴岸が助かればそれでいい。
決心をさらに固め、ドアを開ける。しかし、目の前に飛び込んできたのは壁にこびり付いた血。あまりにも現実味のない光景に俺は尻もちをつく。
「何だ・・・・これ?そ、それより琴岸。琴岸!?」
奥の方に目を向けると、不良達が血を吹きだしながらもがき苦しんでいる。つまり、先に誰か来て琴岸を助けたのか?
「おいてめぇ。琴岸はどこ行った?」
一人まだ喋れそうな奴を叩き起こし、事情説明をしてもらう事にした。
「琴岸?あぁ・・・・・あの男か・・・・・・あいつは生徒会長・・・・ぐふっ。山垣咲夜が気絶した琴岸を背負って消えたぜ」
山垣?確か今日在校生代表で喋ってたイケメンか。あいつこんなに強かったんだな。ただの、ひょろい見た目だけの奴かと思ってたけど。
「頼む・・・・この事は先生たちに言わないでくれ。俺たちの人生が・・・・・・」
「いや、この事は報告するから。琴岸の人生を壊そうとした奴が何を言ってんだ!!」
拳を不良の顔面に叩き込み、俺は部屋を後にした。