「もういいや」
外も薄暗くなってきた頃、校舎裏で俺はまだ一人で泣き崩れていた。
唯一の親友に裏切られ、周囲に失態と羞恥を晒してしまった。
「初日から何してんだろ・・・」
また前のころに戻ってしまうのだろうか。
そんな事を考えていると枯れ始めていた涙がこみ上がって来る。
こんな人生ならいっそ・・・
「あれ?泣いてんの?」
誰だ!?
「あ!噂になってる可愛い男じゃん!間近で見るとマジ普通の女の子じゃん!」
集団の不良が周りを囲む。
「校舎裏で泣いてないでさ、俺らと遊ぼうぜ!」
「おい、お前そっちの気があんのかよ」
「いいじゃねぇかよ。こいつ女にしか見えねぇしさ。お前らも可愛い可愛い言ってたじゃねぇかよ」
「・・・へへっ。そうだな!やっちまうか!」
強引に手を握られ引っ張られる。嫌なのに。抵抗して逃げ出さなきゃダメなのに。なのに。
「もういいや」
何故俺はこの女と二人きりなんだ?
何故俺はこの女と学校を歩いているんだ?
まぁ、琴岸に怒られて一人でめそめそしている時に話しかけられた訳だが。この女、一体何がしたいんだ?
「ねぇ、高舘ってさ~琴岸の事好きでしょ?」
「ばっ・・・・・か言うなよ。俺があいつの事好きなわけぇ・・・・」
しかし笑顔で10年ぶりの再会を喜んでいる時の顔が魅力的だったのは事実。それに反応していたのも事実。
でも、俺は10年も待っていてくれた琴岸を裏切ってしまった。その時の琴岸の悲しそうな顔が頭に焼き付いて離れない。実際の所こんな女と一緒に歩いている場合では無い。今すぐにでもあいつを見つけ出して謝らないといけない。どんな暴言を吐かれようが謝り続ける覚悟はできている。
「すまん。お前と喋ってる暇はねぇんだ。今すぐにでも探し出さないと・・・」
「まだ・・・・・・まぁいいわ。じゃあ私も一緒に探してあげる」
何故一瞬躊躇したのかは分からないが、一緒に探してる方が効率はいいだろう。上から目線は気に入らないが。
まず、どこから探せばいいのだろう。学校初日の為、全然場所を把握していない。多分あいつも場所を把握しないまま走り出したに違いない。
まずは定番の校舎裏から行くか。
「ちょっと待って!」
走り出そうとした瞬間に腕を引っ張られる。
「なんだよ!!」
「あれを見て」
篠山が指を指す方に目を向ける。
「・・・・・・マジかよ」
考えるより先に俺は走り出していた。